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一矢を報いるのは
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東南アジア海外進出プロジェクトという、セミナーのような立食会のようなものに、兄ではなく私が行くことになりました。兄は一週間だけ海外出張。
会場に着くと男性率の高いこと....。これまで自分の店ばかりでこんな社会に出てこなかった私は緊張します。
兄は既に知識どころか実践中の海外進出。きっと私に勉強しろとの意味を込めたのかしら。
セミナーが終わり、席を立ち少しはいつもと違う空間に息抜きができた気がしたわなんて思いながら立食と言っても誰も知り合いもなし。帰ろうかとしていると
「綾さん?綾さん!」
私に近付いて来た美しい人、コツコツとヒールを鳴らし得意げに歩くさまはいつかの私のよう、いえ同じくらいの年齢ね。このレディは、ああっカオリさん?
お店のお客様、ジュリーを気に入ってそうな方よ。
「あれ?お兄さんは?」
あ、ジュリーでは無く兄をお気に入りでしたか?
「兄は今出張中なので、私が代わりに。カオリさんですよね?」
「あら、よく覚えてるのね。今日はさお客様の同行なの」
こんな場所まで同行する夜の蝶だとしたら、クラブのママか、または誰かの愛人でしょうね。
「いやいや、ありがとうございます。七条さんの妹さんですよね?お綺麗な方だと予想はしていましたが、全くの予想以上です。カオリ、綾さんを知ってたのか?」
と、先程この会の主催者だと挨拶をされていた男性でした。
「そんなとんでも御座いません。」
「綾さんとは一度だけお会いしたことがあるの。ね、綾さん」
「はい。カオリさんはお綺麗ですから、一度お会いすれば忘れませんわ。今日もすぐ分かりました。」
「まっ綾さんもお上手ね」
わざとらしい女の会話。
女同士というものは、数秒あればお互いの事情を汲むもの。それ故の助け合いなのです。
決して余計な事は口にすべきではございません。
ごめんなさいね。今日ここに居たのが兄じゃなくて。
「ほら、島田さん、綾さんにご紹介を」
カオリさんの計らいで次から次へ、様々な方と挨拶を交わします。
急遽兄が用意した名刺には 七条 綾の名前が。
数名と島田さん、カオリさん、私で話をしていると
「綾、来てたのか」
私は振り向けません。カオリさんは背後を見てから私に視線を移し。ただならぬ雰囲気に彼女まで表情が凍ります。
無反応の私とその向かい側で固まったカオリさんにお構いなしに私の肩に手を回したのは般若です。
「いや、まさか妻も来ていたとは。会社は違いますので。あ 申し遅れました。綾の夫 高野です。」
みなさん紳士らしく紹介をしている中で、般若は私に耳打ちしました。
「今騒ぐとおかしな人になるぞ。分かってるな」
強盗に刃物でも突きつけられた気分。
夫とばったり会ったのに顔を見ずに不自然な笑みを少しばかり見せる私は、既におかしな人なはずです。
「それにしても、お若い奥様で羨ましい限りですね。」
般若は昔から私を連れてこういう言葉に酔いしれるのが好きでした。
私はお若く見られるうちにすぐさまこの怪物般若と離婚するのよ。調停離婚、それでだめなら裁判へ進む予定なのにこの人邪魔してるんですのよ!!
と、今にも口から飛び出しそうです。
しかし、私も大人です。ここは、ひとまず時が立つのを待つしかない。カオリさんと飲み物でも取りに行こうかしら。
般若は肩の手を腰におろし、まだ私に触れたまま。腰に手を回し、仲睦まじい夫婦のふりでしょうか。私はもうあなたのお飾りではないのよ。
「綾さん 探しましたよ。あ、失礼。本日はお招きいただきありがとうございます。島田さん。」
軽快に歩み寄ってきて穏やかな笑顔を振りまくのは悟さんです。なぜ?島田さんと知り合い?
ぴしっとスーツまで着て、いつも以上に洗練されています。
「ああ!ほら皆さん、建築家の安藤さんだ。一度七条さんから紹介頂いて。私の方が気に入ってね。どうだい?最近は忙しいんだとか」
「商業関連のオファーが増えましたね。綾さんのおかげでなんです。」
しばらく、談笑が続きカオリさんも入り、人当たりの良さは般若の数倍は上の悟さんがみんなの話題の中心に。ばつが悪そうに般若は飲み物を取りに行きます。
「綾さん、ちょっとよろしい?すいません。綾さんとは古い仲でして少しお話が」「あぁ構わないよ。今日はありがとう。」
悟さんはそう言い私の背中に手を添えて歩きます。
思わぬ救世主に驚き安心したのはつかの間。
会場のビルエントランスで追いかけてきた般若が私達の背中にぴしゃりと声をかけました。
「こんなとこまで良く来るな」
「ん?陽介こそ今日は招待で来たのかな?それとも、綾に会うために潜り込んだ?」
「なんだよ、おまえ。おまえこそ白々しいやり方しやがって。」
「あれ、意外に元気そうだね」
「おまえな。綾に何吹き込んでる。おまえがしゃしゃり出てきてからだろ。離婚だ何だ騒ぎ出して」
「そうかな、俺は何もしてないよ。俺は十年近い友人だから。ずっと何かして来たのは陽介だろ?別れたいという妻を強姦みたいに襲おうとしたり、付け回したり、さっきのも脅しかな?」
「おまえにはやっぱり一回死んでもらう。俺は綾とは別れない。別れない為ならなんだってする。カイの父親は俺しかいないからな。」
「なんだってする?診断書で調停延期とかも?さっきあんなにしっかり営業トークしてたのにな」
「うるせっお前には関係ない」
悟さんは、男版の私でしょうか。さっきよりも私は固まったようです。
会場に着くと男性率の高いこと....。これまで自分の店ばかりでこんな社会に出てこなかった私は緊張します。
兄は既に知識どころか実践中の海外進出。きっと私に勉強しろとの意味を込めたのかしら。
セミナーが終わり、席を立ち少しはいつもと違う空間に息抜きができた気がしたわなんて思いながら立食と言っても誰も知り合いもなし。帰ろうかとしていると
「綾さん?綾さん!」
私に近付いて来た美しい人、コツコツとヒールを鳴らし得意げに歩くさまはいつかの私のよう、いえ同じくらいの年齢ね。このレディは、ああっカオリさん?
お店のお客様、ジュリーを気に入ってそうな方よ。
「あれ?お兄さんは?」
あ、ジュリーでは無く兄をお気に入りでしたか?
「兄は今出張中なので、私が代わりに。カオリさんですよね?」
「あら、よく覚えてるのね。今日はさお客様の同行なの」
こんな場所まで同行する夜の蝶だとしたら、クラブのママか、または誰かの愛人でしょうね。
「いやいや、ありがとうございます。七条さんの妹さんですよね?お綺麗な方だと予想はしていましたが、全くの予想以上です。カオリ、綾さんを知ってたのか?」
と、先程この会の主催者だと挨拶をされていた男性でした。
「そんなとんでも御座いません。」
「綾さんとは一度だけお会いしたことがあるの。ね、綾さん」
「はい。カオリさんはお綺麗ですから、一度お会いすれば忘れませんわ。今日もすぐ分かりました。」
「まっ綾さんもお上手ね」
わざとらしい女の会話。
女同士というものは、数秒あればお互いの事情を汲むもの。それ故の助け合いなのです。
決して余計な事は口にすべきではございません。
ごめんなさいね。今日ここに居たのが兄じゃなくて。
「ほら、島田さん、綾さんにご紹介を」
カオリさんの計らいで次から次へ、様々な方と挨拶を交わします。
急遽兄が用意した名刺には 七条 綾の名前が。
数名と島田さん、カオリさん、私で話をしていると
「綾、来てたのか」
私は振り向けません。カオリさんは背後を見てから私に視線を移し。ただならぬ雰囲気に彼女まで表情が凍ります。
無反応の私とその向かい側で固まったカオリさんにお構いなしに私の肩に手を回したのは般若です。
「いや、まさか妻も来ていたとは。会社は違いますので。あ 申し遅れました。綾の夫 高野です。」
みなさん紳士らしく紹介をしている中で、般若は私に耳打ちしました。
「今騒ぐとおかしな人になるぞ。分かってるな」
強盗に刃物でも突きつけられた気分。
夫とばったり会ったのに顔を見ずに不自然な笑みを少しばかり見せる私は、既におかしな人なはずです。
「それにしても、お若い奥様で羨ましい限りですね。」
般若は昔から私を連れてこういう言葉に酔いしれるのが好きでした。
私はお若く見られるうちにすぐさまこの怪物般若と離婚するのよ。調停離婚、それでだめなら裁判へ進む予定なのにこの人邪魔してるんですのよ!!
と、今にも口から飛び出しそうです。
しかし、私も大人です。ここは、ひとまず時が立つのを待つしかない。カオリさんと飲み物でも取りに行こうかしら。
般若は肩の手を腰におろし、まだ私に触れたまま。腰に手を回し、仲睦まじい夫婦のふりでしょうか。私はもうあなたのお飾りではないのよ。
「綾さん 探しましたよ。あ、失礼。本日はお招きいただきありがとうございます。島田さん。」
軽快に歩み寄ってきて穏やかな笑顔を振りまくのは悟さんです。なぜ?島田さんと知り合い?
ぴしっとスーツまで着て、いつも以上に洗練されています。
「ああ!ほら皆さん、建築家の安藤さんだ。一度七条さんから紹介頂いて。私の方が気に入ってね。どうだい?最近は忙しいんだとか」
「商業関連のオファーが増えましたね。綾さんのおかげでなんです。」
しばらく、談笑が続きカオリさんも入り、人当たりの良さは般若の数倍は上の悟さんがみんなの話題の中心に。ばつが悪そうに般若は飲み物を取りに行きます。
「綾さん、ちょっとよろしい?すいません。綾さんとは古い仲でして少しお話が」「あぁ構わないよ。今日はありがとう。」
悟さんはそう言い私の背中に手を添えて歩きます。
思わぬ救世主に驚き安心したのはつかの間。
会場のビルエントランスで追いかけてきた般若が私達の背中にぴしゃりと声をかけました。
「こんなとこまで良く来るな」
「ん?陽介こそ今日は招待で来たのかな?それとも、綾に会うために潜り込んだ?」
「なんだよ、おまえ。おまえこそ白々しいやり方しやがって。」
「あれ、意外に元気そうだね」
「おまえな。綾に何吹き込んでる。おまえがしゃしゃり出てきてからだろ。離婚だ何だ騒ぎ出して」
「そうかな、俺は何もしてないよ。俺は十年近い友人だから。ずっと何かして来たのは陽介だろ?別れたいという妻を強姦みたいに襲おうとしたり、付け回したり、さっきのも脅しかな?」
「おまえにはやっぱり一回死んでもらう。俺は綾とは別れない。別れない為ならなんだってする。カイの父親は俺しかいないからな。」
「なんだってする?診断書で調停延期とかも?さっきあんなにしっかり営業トークしてたのにな」
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悟さんは、男版の私でしょうか。さっきよりも私は固まったようです。
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