上 下
25 / 40

般若の首を取ったよう?

しおりを挟む
 般若が出ていって1週間以上経ったけれど何の音沙汰もなし。嵐の前の....ね。
私はジュリーに甘えっぱなしも悪いので母にカイを預けてバーに出た。母は般若は?って不思議そうにしたから兄は珍しく言ってないのでしょう。

「綾さん!」
「ごめんね。任せっきりで」
「大丈夫ですか?もービックリしましたよ。」
「色々あってね。しばらくは迷惑かけるかも」
「俺は綾さんの迷惑なら買ってでも受けますよっ」
「また~ありがとう」
「たっくんもごめんね。」
「いえ」

「綾さん、あのとき結局あの彼んちいったんですか?ほら建築の悟さん?安藤さん」
「ああ。行く当てなかったしね。別に何もないよ」
「いや、あるでしょ。どーみても」
「もう!仕事しましょ」
「はあい」


+++

翌日 兄がやって来た。急ぎだからと3階には行かずうちのリビングで。
「綾、たっくんて呼んでるバイト、あいつ仲間《なかま》 武久《たけひさ》だな?」
「うん。そうだけど.....」
「調べたら、高野家の従業員だ」
「え.......」
「ずっと綾を監視させられてたんだろ。悟のことはジュリーは?仲間 武久には?漏れてないか?
あー、しまった。俺ジュリーに口止めせずに悟をあん時行かせたから。なんか言ったかなあいつ。」

 なんてこと.....般若がそこまで。こんな騒ぎになる前から。私は昨夜の店でのやり取りが不安になった。
兄にそれを告げると急ぐように去っていったのでした。

 さらにその晩、般若からのメールを見るやいなや、私は悟さんの事務所へ走った。

 事務所には、既に般若がいたわ......。

「お前ら、あの晩一緒にいたのか?」

般若の面がさらに分厚くなったようにみえた。
たっくんの報告は早かった......。

「あぁ」と悟さん。

「スパイ置いてたなんて用意周到ね」

「うるせえ 質問にだけ答えろ。デキてんのか?ヤッたのか?」

「気持ちだけよ、私がね。」

「はっ。気持ちねぇ。悟は昔から好きだろ 綾が。」

「あぁ お前がいつか綾を苦しめるまでは、手出さないって決めてた。陽介、お前は友達だから。何より綾は俺にとって大事だから。苦しめたくない」

「友達?人の嫁に色目使ってか?どーでもいーわ。お前には社会的に死んでもらう」

「悟さんは関係ないでしょ。悟さんに昔からどれだけあなたも助けられたのよ」

「全部、綾が欲しかったからだろ?綾をものにしたいからだろ?」

 はあ やっぱり話がつうじません。
「はあ やはりあなたには話が通じませんね。私は長年耐えてまいりました。もう限界でございます。
ご自分の行いには目を瞑り他者ばかりを攻める。その上にあなたのような人物は成り立つ。そうしなければ自己を肯定できない。歪みきったわね、その頭んなか。もはや人の心持たず。

異論があるようなら出るところへ出て、お話いたしましょう。最近は離婚理由に認められる内容も多様化してますし。
あなたが社会的に殺すと言うならば、こちらもそのように致しましょうね。
今日はお帰りください。目障りですので。」

「......綾?どうした?」と悟さんがきょとんとしています。
あっ心の声がついに出てしまいました?

般若は出ていきました。お帰りになりました。
私が一番異常者ですか?

「あ 私 つい」
「ワハハハッ」
笑い出す悟さん
「陽介もびっくりしてたね。あの雰囲気で淡々と言われたらそりゃ困ったんだろな」
そう。いつもの私が発する単語の何倍もいきなり発射したのでした。

兄も悟さんの事務所にやって来た。
「あれ?」
「綾が撃退したよ」
「え?どうやって?」
兄は長い棒状の機械を出し部屋中動きまわる。
もう私達兄妹は、随分とイカれています。

すると、ウィーンウィーンと音がしました。
「あったぞ。ホコリもこれだけ着いてない。多分さっき付けたんだろ。スパイ置くぐらいだ。何でもしてくるだろう....気をつけろよ。二人とも」
兄は盗聴器を発見した。念の為シェアホームも店もチェックしたがそのひとつだけだった。

私は離婚準備に入るのでした。
母に報告すると「やっとね。やっと決めたのね。なんでも手伝うわ。」と言っていました。誰も止めようとはしません。般若以外は。
しおりを挟む

処理中です...