わたくし般若と離縁するため家を建てます.....これはもしかして純愛か

江戸 清水

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愛想も小想も精根も尽き果てる

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 般若は帰ってこないかもと思ったけど、あんなことがあっても......のこのこと帰ってきた。自分が荒らしたままの部屋を見て少し驚いた様子。

「昨日どこいってた?」
「どこでもいいでしょ」

私はそのまま3階へ向かったのです。みのり夫婦が子供達をみてくれて、あこ、かずぴ、ゆりが居ました。
かずぴが「お腹空いてる人とうぞ」と料理を並べているのに目もくれず、般若は私を問いただす。

「おまえ何なんだよ 人のこと長年ほぼ無視しやがるわ、拒絶だしよ。何が望みだ?」

「今さら何を望む?もうずっと前から私たちは終わってる.......。感謝したことあった?悪いって思ったことある?」

「は?偉そうに。バカみたいにありがとう、こめんねっつったらいいのかよ」

「......ありがとう、ごめんねがあれば救われたかもね。女がやって当たり前、嫁はこれして当たり前。それは愛された人だけが当たり前に出来る事よ。私は経済的にも精神的にも、結婚してから何一つ支えられてない。私が支えたよね?あなたは人に甘えて生きてる。」

「だから今から......」

「もう遅い.....もう無理」

「はあ?母親なのにすぐそうやって逃げんのか」

「逃げてきたのはあなたでしょ。いつも悪いことは人のせい、誰かのせい、イライラしたら他に当たる。自分はいかほどの人間よ?
そんなに素晴らしいなら女一人子供一人くらい幸せにできたでしょうに。」

言い過ぎたのでしょうか。般若が止まりました。

私に近づいてきて般若が

バチンッ

私をぶちました......初めてでした。後ろからいつ来たのか走り寄ってくる悟さんにかまわず、私は涙が溢れてきそうになるのをこらえ、般若を睨みつけました。

「私は.....幸せじゃない。あなたが憎いから。私が選んだとしても、私の人生こんなはずじゃなかった」

ぶってしまった自分と、私の言葉に動揺した般若は何も言いません。

「好きで結婚したのに、悲しい.....」
この言葉を言った途端、私は涙をこらえられなくなりました。




「おいっ陽介!」
悟さんが叫んでいます。何事か.....。

パニック発作です。私は般若のあの病気のトリガーを引いてしまった.....。
みんな水を運び飲ませようとするも冷や汗で震える般若
「息ができない」と。

私は般若に近寄りとっさに背中をさすっていた......。「大丈夫。ゆっくり吸って、吐いて。ほら息できるでしょ。もう一回.....」
発作はおさまった。
あれほど、息ができないと言えば放置してやると思っていたのに......。

みんな言葉を失った.....。
いつの間にか3階にいた、まさしさんが
「一度受診しましょう。以前も?パニック症を?」
「心療内科にすこし。薬無しで大丈夫なほど回復してたんですけどね」
と般若が答えた。

般若は平常心に戻り、部屋に帰った。

私は精根尽きた。

急にまた涙がこみ上げた......。

「私 なんてこと.....私 間違ってた?」
「仕方ない。仕方ないよ。綾、綾のせいじゃない。こうしないと永遠に綾も苦しいよ」
あこの言葉にまた涙が止まらない。

「カイは私達に任せて。」
「ありがとう。みんな.....」

「綾、ほっぺ冷やそうか」
悟さんと私は3階に残って、悟さんが私の頬を冷やしていた。
最近よく泣いてしまうな....なんて考える。もし毎日笑ってカイも笑って会話が弾む家庭ならどんなに幸せか。

「ごめんね 悟さん 酷かったでしょ」
「謝らないで 忘れた?共犯だよ」
あぁ そんな調子に乗ったこと言ってましたね。私。

「こうなったからって、ひるまないで、白雪姫」
悟さん、弱気な私を励まそうと、でも言葉のチョイスが.....

「俺 小人辞めるね。.......隣国の王子になるよ」
私の泣きっ面に、ゆっくり丁寧に壊れそうなものに触れるようにキスをした。長いくちづけを。

「まだ目覚めないかな.....綾」

真顔でそう言って見つめる彼に
私は今日、初めて笑った。初めて口の端っこが上に引っ張られた。
ありがとう 悟さん。
私はあなたが居るから息が出来る。

でもここからが大変な道のりなのね
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