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般若の親は般若

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 朝カイを送ったあと戻るとシェアホームの玄関にたつ義理母....。
私は絶句。結婚当初は良き妻になろうと、自分の親のように接するようにしたの。そうしたらこのお義母様、お義父様も大層調子に乗られたようで、毎週私を呼び、家の手伝いから、義理母が旅行で不在の日の義理父の朝ごはんを作るよう言われ早朝片道1時間以上かけて一人向かったわ。般若はもちろん知らんぷりね。
私はその後会社にまで入れられたの、月5万円のお駄賃で。週5出勤7時間労働....。

私はキレたわ。

 それ以来直接関わらないようにしてきたの。般若が家業辞めた時も。お互い知ってても知らぬふり。
数回カイに会わす為にあった位。カイには腐ってもおばあちゃん。

 それが、今我が物顔でそこにたっていらっしゃるではありませんかっ。何ということでしょう.....。

「お義母さん どうされました?」
「どうされましたじゃないでしょ。うちが出したお金で建てといて招きもしない。」

 あぁぁぁ般若はやっぱり親にお金をごっそり出させたのですね。頭金だけ親にかりてあとはローンで頑張ると聞いておりましたが、そんな訳はございませんでしたね。だって般若ですもの。

「そうでしたか。今回ばかりは本人が頑張ると言っていたのでてっきり。すいません。陽介さんが仕事辞めてから、私一人が生計を立てていましたので家ぐらいは出してもらおうと甘えていました。」

 義理母が固まった。私だって伊達に歳を重ねていない。言いたいことは言わせていただきます。もう昔の小娘ではないのですから。

「そう まぁ夫婦は困った時こそ助け合いよね」
フン!とだけ心で叫びました。助けてもらったことないですけどね。
「とりあえず中見せていただこうかしらぁ」
「どうぞ~」
私は無駄に声を高くしてどうぞを出しました。

 中へ入るなり何かごじゃごじゃとおっしゃっていますが私は右から左です。般若の親は般若、般若の子は般若ですから。

 玄関から誰かが入ってきました。般若です.....。そうですね帰りにマザーオブ般若まで連れてきたのですね。
その後ろにはうちの兄まで立っていました。月曜日の朝から何なのでしょう。

「綾!」
兄だけが元気よく私を呼びます。
「なんでお兄ちゃんまで?」
「そこ通ったら綾が見えたから.....」

「あらお兄さんまでお久しぶりね」
「ご無沙汰しています」
「陽介 あなたお金の話していなかったのね?この家の」
「うるさいな いちいち」
 はあ.....般若は昔からマザーオブ般若への対応が鬼です。
私は学びました。自分の親を大切に出来ない殿方は、いずれ自分の妻に対しても同じようにする.....と。

 さらに兄がお金の話に食いつく.....。
「綾 この家のお金誰もち?」
あぁその直球の疑問形慎んでいただけませんかお兄様。
「陽介さん」
「え!!!え?仕事していなかった陽介君がどうやって。ローンかな?」
わざとらしいリアクションも勘弁です。お兄様。

「いえ。うちが払っていますのよ。ですからこの建物は高野家 本家の所有となりますわね。」

出ました本家本家!本家宗教かなにかかと思うくらいよく耳にした単語です。

「へぇ。じゃぁこれまで綾が費やした労力、金銭も差し引かないと。それからその差額をうちが支払えばこちらは七條家本家の所有物となるわけですね?」
「お兄ちゃん!!!」
いたずらが過ぎる兄でした。

 カイのお迎えも行きたいという義理母。般若と義理母で行くと.....。私はいつもカイは自分か母がみていたのでとても不安になりました。信頼ゼロの証ですね。

 なかなか帰ってこない一行に不安な私は般若にメールをします。
『どっか寄ってるの?』
『おもちゃ屋。飯はいらない』
.......。私は兄と3階のキッチンで料理します。自分たちの晩御飯を。
悟さんがやってきました。

「仲いいですね.....兄妹で料理」
「お 悟もたべようよ!」
「いや 俺は.....」
「遠慮しなくていいって。そのためのシェアホームだろ」
私たちは3人で食卓を囲んだ。

「あ~ぁ あんな愛想ない男とあんなくそババぁに綾はもったいないわ」
「ちょっとお兄ちゃん。言葉が汚いです」
「え 陽介のお母さん来てるの?」
悟さんもくそババぁを受け入れましたね。

「そう。いきなり来て、今はカイを連れて晩御飯」
「へぇ」
「え もしかしてあのババぁここに泊まる気?」
「え」
それは困りますね。でも高野家のものと言ってましたしあり得ます。

「よしうちに移動するぞ」
「どこ?」
「お兄ちゃんち」
「お兄ちゃん実家でしょ?」
「引っ越したって」
「知らなかった」
「すぐそこだから。陽介君にカイうちに連れてきてもいいよって連絡しときな。綾」
「悟も仕事終わったら来いよ」

 兄は何を企んでいるのやら。
結局カイはシェアホームに戻り、まさかの義理母が私のベッドで眠ると.....。
カイ.....泣いてないかな。心配で私は般若ではなく、まだシェアホームにいる悟さんに聞きます。
『大丈夫だよ。楽しそうにやってるよ。陽介は父親だろ?任せたらたまには』
そうですね。
カイは陽介と眠るでしょうか、まさか義理母と?私は嫉妬にかられる恋人のような気分です。

 行き場を失った私はとりあえず兄の殺風景なマンションにいます。兄はビール片手にご機嫌。この人私と同じであまりアルコールに耐性がございません。

「お兄ちゃん飲みすぎないでよ。私実家行くからね。」
「なんで泊ればいいじゃん。部屋なら2つあるぞ」
チャイムが鳴った。悟さんまでやってきた......。
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