わたくし般若と離縁するため家を建てます.....これはもしかして純愛か

江戸 清水

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有言実行のひと

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 大人になると、理性や常識、世間体とかいう価値があるのか無いのか分からなくなるようなものに囚われ、夢だけ並べて形にしないことが沢山あります。
それでも、形にした人がいました。

 まずは夢の家を本当に建てた私。そして、その夢の頂上にアトリエを作った悟さん。

「皆さん完成おめでとうございます。今回担当させて頂いて嬉しかったです。私のアトリエを最上階におかせていただくお礼にベースとなるある程度のインテリア家具は標準で設置しました。綾のセンスも取り入れて素敵な仕上がりですよ。では中へ。」

「ちょっと、今安藤さん綾って呼んだよね?」
「うん。昔から仲いいから」
「あぁそうか~」

「わーっ。おしゃれ。」
「後は家電とかカーテンとか運んだらもう住めるね」

般若が悟さんを捕まえ
「おまえ、ほんとに作ったんだな。アトリエ。まぁ俺もおまえが居てくれたら助かるよ」
助かる?悟さんは般若を助けに来たのでしょうか。般若の思考回路は分かりません。
悟さんが入り込む夢の家、私にとって吉と出るか凶と出るか。私の裁きの家にならんことを祈ります。

「俺が使わなくても、綾が仕事に使えると思って。ね?使わせていいだろ。」
「ふぅん。そんな個室で仕事したがるんだな。俺は人相手の仕事だから分からんがどーぞー。」
般若の家業は、倉庫業ですの。ネットショップの出荷代行やら食品会社の納品代行や、様々な業種の品物を保管、納品代行。他には地主で土地もちの為、羨ましい不労所得もある義理実家です。
私は大金にはさほど興味ありませんが。金より人です。

 夢の家シェアホーム 私は一足先に悟さんに見せてもらってました。それは昨日の夜のこと。

+++

「夜にごめん。綾には先にみてもらいたくて。デザインもアイデアも綾が考えたから。率直な感想が欲しい。」

「お金出したの今回は陽介だけどね」

 円柱の三階建 外壁は白くあえてペンキの線を残し、打砕いたカラフルなタイルやガラスの破片を所々に埋め込んでいる。
玄関のドアは黒。外観はどこかお店のような雰囲気でおしゃれ。
ドアを開け入ると、玄関はバリアフリーの小さなスロープ式の床。老後も考慮?掃除しやすいようにとのこと。
フローリングはダークな木目が目立つアンティークなアメカジ家具が似合うようなマットな仕上げ。
一階にはトイレ、リビングとキッチン二階はベッドルームとお風呂。うちはベッドルームは2つに分けた。1つが狭くはなるが。

 三階の共有部分には大きな長方形の木の机にベンチ式の椅子。キッチンは本格的なアイランドキッチン。
バーカウンターのようなものも。
一面だけネイビーの壁紙にはディスプレイシェルフがくっついて。収納も埋め込み式で開放的なスペース。床は明るめ木目でカントリー風。

「お気に召されましたか?」
「想像以上に機能的で洗練されてるのに温かみもある。なんだか悟さんみたいな家。素敵」
「俺みたいな家?」
悟さんは優しい顔で笑う。機能的?は少し人に対してはおかしいかしら。ある意味機能的だったりしてなんて、ね。
「じゃ、テラスへ」
バーベキュースペースはレンガで作られ、石のようなコンクリートのテーブル。

 そしてネイビーの四角いコンテナハウスのようなものがアトリエ。中は10畳程のスペースに四角いコの字型の木の机、ソファ、窓もある。

「あ~俺までここに。良いのかな。他の皆も不思議に思うかな。」
「アトリエだもの。大丈夫」

 こうしてシェアホームは無事に完成し、引越しが始まった。
引越し準備を手伝うと言ってくれカナがうちに来た。食器を包むカナが「なにこれっ少な」
一人暮らしかっていう量のキッチン用品。
「だってキレイに盛り付けとかする気しないもん。般若に。」
「ほんとに家庭崩壊済じゃんか。んでその家建てた人、悟さんてさ昔からのあの悟さんでしょ?」
「うん。」
「マジで悟さんがアトリエをそこに?」
「うん。」
「わーっ。絶対なんか起こりそう。面白そう」
「面白そうって....カナは誰かいるの?」
「んー、微妙。なんかさ王様臭がキツイんだよね。年上だし。」
「ねぇ、綾。家庭冷めきってんのに、シェアホームでみんなの前で仮面夫婦するわけ?」
「うーん。般若は絶対上手くいってますアピールするはず。でも私は嫌だな。ありのままでいく。」
「ありのまま?!怖いんですけどっ」

 きっと般若も、私がこれまで通り仮面夫婦だろうが他人の前ではいい妻をやると思い込んでるわ。でも、私はもう合わせない。いい親ではいたいけど、いい妻はもう居ないの。きっと般若はプライドへし折られて怒るでしょうけど。そこからが、始まりね。
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