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平成25年編再び
ばあちゃんの気持ち
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退院後一週間は休業命令で、実家へ帰った。
亮さんから、虎吉さんが転院したときいた。賢人さんは気を遣ってもう、私に関わらない気でいるようだ。
私は時間をもてあまし、またアルバ厶を引っ張り出した。
何度見ても飽きないなぁ。
目をパチリと見開き、口を一文字に結んだ真面目な川端一家の集合写真。ばあちゃんにもう一度会いたいな。
集合写真の裏になにやら盛り上がったような手触りが....
裏から確認するも台紙で見えない。
破れないようにゆっくり、年期のはいったアルバムの台紙をめくる。
写真の下に小さく折りたたまれた紙
御達者で、そればかりお祈りして居ります
再びお顔を見たく
幾度 思い浮かべております
これはばあちゃんの手紙?
消えかかった字、力弱い字
昭和に書かれた手紙
出せなかった手紙
宛先が分からなかった手紙
私の感情はばあちゃんの感情だったのかもしれない。
職場復帰の日
「皆さんお騒がせいたしました。ご心配もおかけしました。今日からまた宜しくおねがいします。」私は深々と頭を下げた。
「あ゛ーよかったッス。無事で。よかったッス。」
田中が泣いている。
「あの時はどうなるかと思ったわよ。浅井くんがいて良かった。でも、面会NGだからってみんなお見舞い行けなかったのよね~」と崎山さん。
ん?面会NG?亮さんは普通に来てくれていたが.....。
しばらくして、遅番であるにも関わらず早めに亮さんが出勤してきた。
「大丈夫か?おまえ。重いものは持つなよ」
あの.....この仕事大抵重いものなんですけど。ほら、ご老人方とか。
とりあえず私は、はいっと返事した。
「今日細谷さんの復帰祝しましょうよ。軽めに」
「復帰初日から?今度にしろ」
亮さんが反対したが、結局みんなで食事へ。
「あの日のことは聞かないからね。PTSDとかなったら困るでしょ。その代わりっちゃあれですけど、お二人の関係は?」
え?崎山さん。あっ!そうだ。私が入院していた方の職員達...毎日のように通う亮さんを見ていたんだ。
風の噂は早かった。隣の建物だし。
「関係って?」
ぶっきらぼうに亮さんが返した。目では何も聞くなと言っているような目。
「毎日来てたって噂ですよ~」
「別に」
「あやしぃ」
「.....俺が第一発見者だったからな」
いやいや、死体じゃないですから....。
帰り道、また亮さんが送ってくれる。病み上がりだからと。
静かな通りを歩く、私達の足音だけが響く道でスマホが鳴った。
.....賢人さんだ。立ち止まるも緊張と不安で固まる私に
「出ろ」
「あっもしもし」
亮さんは、電柱を意味なく見に行ったりウロウロ少し私から距離を置く
「もしもし 賢人です。真由さん、本当にごめんなさい。」
「いえ、賢人さんが謝ることでは...」
振り向かなくても亮さんの突き刺すような視線は感じた。背後から。
「一度お会いしてお詫びさせてください。」
「あぁ.....はい。分かりました....」
なんだか、かしこまった賢人さんだった。
元々誠実な人だからきっと、心痛めたに違いない。
「会うのか?」
「あっはい。お詫びしたいと。きっと凄く気にされてると..... だから.....」
「やめとけ」
「え?」
「危ないだろ」
「でも.....」
小さな舌打ちが聞こえた.....こわっ。
「じゃ、俺も行く」
「はい?」
「近くで見とく」
いやいや、それこそ失礼な気が.....。
この人、一度言い出すと絶対に折れません。
私は仕方なく了承することにした。
あの危機を救ってくれた恩人ですから。
亮さんから、虎吉さんが転院したときいた。賢人さんは気を遣ってもう、私に関わらない気でいるようだ。
私は時間をもてあまし、またアルバ厶を引っ張り出した。
何度見ても飽きないなぁ。
目をパチリと見開き、口を一文字に結んだ真面目な川端一家の集合写真。ばあちゃんにもう一度会いたいな。
集合写真の裏になにやら盛り上がったような手触りが....
裏から確認するも台紙で見えない。
破れないようにゆっくり、年期のはいったアルバムの台紙をめくる。
写真の下に小さく折りたたまれた紙
御達者で、そればかりお祈りして居ります
再びお顔を見たく
幾度 思い浮かべております
これはばあちゃんの手紙?
消えかかった字、力弱い字
昭和に書かれた手紙
出せなかった手紙
宛先が分からなかった手紙
私の感情はばあちゃんの感情だったのかもしれない。
職場復帰の日
「皆さんお騒がせいたしました。ご心配もおかけしました。今日からまた宜しくおねがいします。」私は深々と頭を下げた。
「あ゛ーよかったッス。無事で。よかったッス。」
田中が泣いている。
「あの時はどうなるかと思ったわよ。浅井くんがいて良かった。でも、面会NGだからってみんなお見舞い行けなかったのよね~」と崎山さん。
ん?面会NG?亮さんは普通に来てくれていたが.....。
しばらくして、遅番であるにも関わらず早めに亮さんが出勤してきた。
「大丈夫か?おまえ。重いものは持つなよ」
あの.....この仕事大抵重いものなんですけど。ほら、ご老人方とか。
とりあえず私は、はいっと返事した。
「今日細谷さんの復帰祝しましょうよ。軽めに」
「復帰初日から?今度にしろ」
亮さんが反対したが、結局みんなで食事へ。
「あの日のことは聞かないからね。PTSDとかなったら困るでしょ。その代わりっちゃあれですけど、お二人の関係は?」
え?崎山さん。あっ!そうだ。私が入院していた方の職員達...毎日のように通う亮さんを見ていたんだ。
風の噂は早かった。隣の建物だし。
「関係って?」
ぶっきらぼうに亮さんが返した。目では何も聞くなと言っているような目。
「毎日来てたって噂ですよ~」
「別に」
「あやしぃ」
「.....俺が第一発見者だったからな」
いやいや、死体じゃないですから....。
帰り道、また亮さんが送ってくれる。病み上がりだからと。
静かな通りを歩く、私達の足音だけが響く道でスマホが鳴った。
.....賢人さんだ。立ち止まるも緊張と不安で固まる私に
「出ろ」
「あっもしもし」
亮さんは、電柱を意味なく見に行ったりウロウロ少し私から距離を置く
「もしもし 賢人です。真由さん、本当にごめんなさい。」
「いえ、賢人さんが謝ることでは...」
振り向かなくても亮さんの突き刺すような視線は感じた。背後から。
「一度お会いしてお詫びさせてください。」
「あぁ.....はい。分かりました....」
なんだか、かしこまった賢人さんだった。
元々誠実な人だからきっと、心痛めたに違いない。
「会うのか?」
「あっはい。お詫びしたいと。きっと凄く気にされてると..... だから.....」
「やめとけ」
「え?」
「危ないだろ」
「でも.....」
小さな舌打ちが聞こえた.....こわっ。
「じゃ、俺も行く」
「はい?」
「近くで見とく」
いやいや、それこそ失礼な気が.....。
この人、一度言い出すと絶対に折れません。
私は仕方なく了承することにした。
あの危機を救ってくれた恩人ですから。
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