17歳のばあちゃんへ...そして愛しい貴方へ。昭和にタイムスリップした私はばあちゃんになり恋をした

江戸 清水

文字の大きさ
上 下
25 / 44
平成25年編再び

ばあちゃんの気持ち

しおりを挟む
 退院後一週間は休業命令で、実家へ帰った。
亮さんから、虎吉さんが転院したときいた。賢人さんは気を遣ってもう、私に関わらない気でいるようだ。

 私は時間をもてあまし、またアルバ厶を引っ張り出した。
何度見ても飽きないなぁ。
目をパチリと見開き、口を一文字に結んだ真面目な川端一家の集合写真。ばあちゃんにもう一度会いたいな。

 集合写真の裏になにやら盛り上がったような手触りが....
裏から確認するも台紙で見えない。
破れないようにゆっくり、年期のはいったアルバムの台紙をめくる。

写真の下に小さく折りたたまれた紙

御達者で、そればかりお祈りして居ります
再びお顔を見たく
幾度 思い浮かべております

これはばあちゃんの手紙?
消えかかった字、力弱い字
昭和に書かれた手紙
出せなかった手紙
宛先が分からなかった手紙

私の感情はばあちゃんの感情だったのかもしれない。


職場復帰の日
「皆さんお騒がせいたしました。ご心配もおかけしました。今日からまた宜しくおねがいします。」私は深々と頭を下げた。

「あ゛ーよかったッス。無事で。よかったッス。」
田中が泣いている。

「あの時はどうなるかと思ったわよ。浅井くんがいて良かった。でも、面会NGだからってみんなお見舞い行けなかったのよね~」と崎山さん。

ん?面会NG?亮さんは普通に来てくれていたが.....。


 しばらくして、遅番であるにも関わらず早めに亮さんが出勤してきた。
「大丈夫か?おまえ。重いものは持つなよ」
あの.....この仕事大抵重いものなんですけど。ほら、ご老人方とか。
とりあえず私は、はいっと返事した。

「今日細谷さんの復帰祝しましょうよ。軽めに」
「復帰初日から?今度にしろ」
亮さんが反対したが、結局みんなで食事へ。

「あの日のことは聞かないからね。PTSDとかなったら困るでしょ。その代わりっちゃあれですけど、お二人の関係は?」

え?崎山さん。あっ!そうだ。私が入院していた方の職員達...毎日のように通う亮さんを見ていたんだ。
風の噂は早かった。隣の建物だし。

「関係って?」
ぶっきらぼうに亮さんが返した。目では何も聞くなと言っているような目。
「毎日来てたって噂ですよ~」
「別に」
「あやしぃ」
「.....俺が第一発見者だったからな」
いやいや、死体じゃないですから....。

 帰り道、また亮さんが送ってくれる。病み上がりだからと。
静かな通りを歩く、私達の足音だけが響く道でスマホが鳴った。
.....賢人さんだ。立ち止まるも緊張と不安で固まる私に

「出ろ」
「あっもしもし」
亮さんは、電柱を意味なく見に行ったりウロウロ少し私から距離を置く

「もしもし 賢人です。真由さん、本当にごめんなさい。」
「いえ、賢人さんが謝ることでは...」
振り向かなくても亮さんの突き刺すような視線は感じた。背後から。

「一度お会いしてお詫びさせてください。」
「あぁ.....はい。分かりました....」

 なんだか、かしこまった賢人さんだった。
元々誠実な人だからきっと、心痛めたに違いない。

「会うのか?」
「あっはい。お詫びしたいと。きっと凄く気にされてると..... だから.....」
「やめとけ」
「え?」
「危ないだろ」
「でも.....」
小さな舌打ちが聞こえた.....こわっ。
「じゃ、俺も行く」
「はい?」
「近くで見とく」

 いやいや、それこそ失礼な気が.....。
この人、一度言い出すと絶対に折れません。
私は仕方なく了承することにした。
あの危機を救ってくれた恩人ですから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜

長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。 朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。 禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。 ――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。 不思議な言葉を残して立ち去った男。 その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。 ※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

元妻

Rollman
恋愛
元妻との画像が見つかり、そして元妻とまた出会うことに。

処理中です...