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平成25年編再び

とらくんの面会者

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気がつくとベッドにいた。仮眠室のベッド。
点滴?私の腕に刺さった針からチューブがつながっていて、吊り下げられた点滴だ。

私は起き上がり点滴を押しながら詰所へ。
「あのぉ....」
「わっびっくりした。」
ボサボサ頭の田中が言った。あぁごめんよ。きっと急に呼び出されたんだね...

「おまえ 点滴連れてうろつくな」
亮さんは私を確保し再び仮眠室へ。
「寝てろ。一応ドクターにも診てもらったから。疲労貧血ってさ。」
「すいません。ありがとうございます。あっ亮さん仮眠は?」
「いい」
カチっと電気が消されドアも閉められた。
いくらなんでも、勤務中に倒れて仮眠室占領は出来ない.....。
私はちょうど終わった点滴を抜き、また詰所へ。

「また来たんすか?」
眠そうな田中
「田中 ほんとありがとう。そしてごめん。」
「おまえ、また...おいそれ抜くぞ座れ」
亮さんに針を抜いてもらい、テープを貼ってもらう。
「本当にすいません。私今から帰ります。田中に代わってもらって」
「寝てりゃいいのに.....帰れるか?」
「家ついたら連絡してくださいよ。連絡なかったら誰か向かうっすから。」
「はい。分かりました。」

こうして、私は平成復帰初日を失態晒して迎えた。
戦時下ではきっと気を張っていたんだろう。
生ぬるい生き方に慣れた私にはあの生活は厳しかったのだろう。

家に着き、亮さんに
『無事帰りました。今日はご迷惑をおかけしました。』
仮眠中かもと思いつつ送った。

すぐに『了解』だけ返ってきた。

私は亮さんに接するときは緊張する。とっつきにくいというか、だからプライベートで亮さんとのやり取りは今までほとんど無かったはずが、
?上にスクロールしみてみると.....。

『明日飯行くか?』既読
『大丈夫か?』既読
『おい返事しろ』既読
『家ついたか?』既読

何これ、何これ...全て既読スルーの私。このメッセージはこの一ヶ月くらいたまにあったようだ。私が居ない間も私は居た....誰が居たのだろう?
ばあちゃん?!まさかね。

翌日からは、ばあちゃんのお通夜にお葬式の為実家へ。みんながシフトを調整してくれた。ありがとう。

「大丈夫?なんだか疲れてない?」
母にまで心配された。
私はもう一度あの出征の日の写真を見返した。
懐かしい顔たち。でもやっぱり正一さんは違う顔。

夢だった?そんな訳はない。

+++

それから二週間ほどが経ち、ようやく少しはいつもの調子を取り戻した矢先に遅番で出勤の日、施設を出て行った男性を見て私は立ちすくむ......。
正一さん?
どこか雰囲気というか、似ていた。
入所者さんの家族かな?

気のせいかと思いつつも、訪問者リストを入口でチェックした。

『訪問者 松本 賢人 フリガナ マツモト ケント 
 入所者氏名 梅野 虎吉 続柄  住所 連絡先 』

私は飛び出した。さっき出て行った人がまだいるかも.....居なかった。


梅野 虎吉、とらくんだ。同姓同名の確率は極めて低いであろう名前。
連絡先は書かれていない。
こんな偶然って.... けれどさっきの人は?正一さんに似ている親戚、子孫だろうか。
私はとらくんを確認する為急いで、仕事へ入った。

「おはようございます」
「おはよう 今日新入りさんいるわよ。カルテ見てね~」
「はい」ヘルパーさんだが、介護職の長い崎山さん。
部下だけど上司のような方。

カルテには、要介護5 
一番介護が必要なレベル....
気を取り直し、バイタルチェックへ。
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