10 / 15
10(レオン視点)
しおりを挟む
昨日は、エミリア嬢に突然婚約を申し込んでしまったからか、驚かせてしまったのかもしれない。
答えを聞く前に、ワット伯爵に担がれて帰られてしまった。
でも、今日は違う。
お父様が、正式な回答をもらえるよう約束しておいたと教えてくれた。
僕は、喋るのが苦手だ。
話したいことはたくさんあるのに、いざとなると言葉が詰まってしまう。
エミリア嬢に、僕の気持ちをちゃんと伝えられるといいのだけれど。
……ふぅ。
緊張する。
すでにワット伯爵とエミリア嬢は客室で待っているらしい。
「待たせたな」
お父様の後ろについて、中に入る。
さすがエミリア嬢、貴族らしく美しい挨拶だ。
「レオン様にお聞きしたいことがありまして。なぜ、うちのエミリアなのですか?」
ワット伯爵の問いに、僕はムッとする。
なぜかって、そんなの決まってる!
……けど、本人の目の前で言えるようなことじゃない。
僕だって、胸を張って伝えたいよ。でも、ここでは恥ずかしくて無理だ。
「い、言わないとダメ……でしょうか?」
まただ。言葉がつっかえて、上手くでてこない。
こんな情けない僕を見て、エミリア嬢は失望していないだろうか。
気になってチラッとお顔を伺うと、興味津々といった瞳で僕を見つめている。
早く言えと急かされているような気分だ。
その後は、お父様が助け船を出してくれて、なんとか婚約が成立した。
飛び上がって喜びたくなったけど、幼い頃から叩き込まれた貴族としての教育が、僕を押さえ込んでくれた。
エミリア嬢は僕より二つ歳上だから、子供っぽいとか思われたくないからね。
「エ、エミリア嬢……お花は好きですか? あのっ、こ、この花は……えっと、花言葉があって、強さって意味なんですけど」
「なるほど?」
お父様とワット伯爵が気を遣ってくれて、僕とエミリア嬢は、二人で庭を散歩することになった。
けれども、また失敗してしまう。
花言葉は強さ。まるでエミリア嬢のように、周りから何を言われようと、気高く孤高の存在……そんな花の紹介がしたかったのに。
カッコよく喋りたかった。
未来の旦那として、妻を褒める甘い言葉をプレゼントしたかったんだ。
なぜ、大事なときに言葉が詰まってしまうのか。
僕のバカ!
「ど、どうぞ!」
恥ずかしさを隠すために、僕はヴィーヴルの花を摘んで手渡した。この行動を起こした自分を褒めてあげたい。
だって……じっと花を見つめるエミリア嬢が、とても美しかったから。
その視線もバレて、咄嗟に目を逸らしてしまったけれど。
もっと話したい。もっと仲良くなりたい。
でも、どうすればいいだろうか。
……そうだ、僕の宝物を見せよう。
好きなものなら、つっかえずに自信を持って紹介できるはずだ!
「エミリア嬢、次は僕の部屋に……あっ! す、すみません」
僕はなんてことを!
結婚前の女性を部屋に誘うなんて最低じゃないか!
どうしようどうしよう……エミリア嬢に、最低の男だと思われてしまったかもしれない。
「お腹なんて……空いてませんよね?」
何を言い出したんだ僕は!
もう、バカバカバカ!
「ペコペコです!」
……え?
今日一番の花が咲いたような笑顔。
目の前に、天使が現れた。
そこから先のことは、何も覚えていない。
答えを聞く前に、ワット伯爵に担がれて帰られてしまった。
でも、今日は違う。
お父様が、正式な回答をもらえるよう約束しておいたと教えてくれた。
僕は、喋るのが苦手だ。
話したいことはたくさんあるのに、いざとなると言葉が詰まってしまう。
エミリア嬢に、僕の気持ちをちゃんと伝えられるといいのだけれど。
……ふぅ。
緊張する。
すでにワット伯爵とエミリア嬢は客室で待っているらしい。
「待たせたな」
お父様の後ろについて、中に入る。
さすがエミリア嬢、貴族らしく美しい挨拶だ。
「レオン様にお聞きしたいことがありまして。なぜ、うちのエミリアなのですか?」
ワット伯爵の問いに、僕はムッとする。
なぜかって、そんなの決まってる!
……けど、本人の目の前で言えるようなことじゃない。
僕だって、胸を張って伝えたいよ。でも、ここでは恥ずかしくて無理だ。
「い、言わないとダメ……でしょうか?」
まただ。言葉がつっかえて、上手くでてこない。
こんな情けない僕を見て、エミリア嬢は失望していないだろうか。
気になってチラッとお顔を伺うと、興味津々といった瞳で僕を見つめている。
早く言えと急かされているような気分だ。
その後は、お父様が助け船を出してくれて、なんとか婚約が成立した。
飛び上がって喜びたくなったけど、幼い頃から叩き込まれた貴族としての教育が、僕を押さえ込んでくれた。
エミリア嬢は僕より二つ歳上だから、子供っぽいとか思われたくないからね。
「エ、エミリア嬢……お花は好きですか? あのっ、こ、この花は……えっと、花言葉があって、強さって意味なんですけど」
「なるほど?」
お父様とワット伯爵が気を遣ってくれて、僕とエミリア嬢は、二人で庭を散歩することになった。
けれども、また失敗してしまう。
花言葉は強さ。まるでエミリア嬢のように、周りから何を言われようと、気高く孤高の存在……そんな花の紹介がしたかったのに。
カッコよく喋りたかった。
未来の旦那として、妻を褒める甘い言葉をプレゼントしたかったんだ。
なぜ、大事なときに言葉が詰まってしまうのか。
僕のバカ!
「ど、どうぞ!」
恥ずかしさを隠すために、僕はヴィーヴルの花を摘んで手渡した。この行動を起こした自分を褒めてあげたい。
だって……じっと花を見つめるエミリア嬢が、とても美しかったから。
その視線もバレて、咄嗟に目を逸らしてしまったけれど。
もっと話したい。もっと仲良くなりたい。
でも、どうすればいいだろうか。
……そうだ、僕の宝物を見せよう。
好きなものなら、つっかえずに自信を持って紹介できるはずだ!
「エミリア嬢、次は僕の部屋に……あっ! す、すみません」
僕はなんてことを!
結婚前の女性を部屋に誘うなんて最低じゃないか!
どうしようどうしよう……エミリア嬢に、最低の男だと思われてしまったかもしれない。
「お腹なんて……空いてませんよね?」
何を言い出したんだ僕は!
もう、バカバカバカ!
「ペコペコです!」
……え?
今日一番の花が咲いたような笑顔。
目の前に、天使が現れた。
そこから先のことは、何も覚えていない。
82
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

【完結】私を虐げた継母と義妹のために、素敵なドレスにして差し上げました
紫崎 藍華
恋愛
キャロラインは継母のバーバラと義妹のドーラから虐げられ使用人のように働かされていた。
王宮で舞踏会が開催されることになってもキャロラインにはドレスもなく参加できるはずもない。
しかも人手不足から舞踏会ではメイドとして働くことになり、ドーラはそれを嘲笑った。
そして舞踏会は始まった。
キャロラインは仕返しのチャンスを逃さない。

忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。

真実の愛<越えられない壁<金
白雪の雫
恋愛
「ラズベリー嬢よ!お前は私と真実の愛で結ばれているシャイン=マスカット男爵令嬢を暴行した!お前のような嫉妬深い女は王太子妃に相応しくない!故にお前との婚約は破棄!及び国外追放とする!!」
王太子にして婚約者であるチャーリー=チョコミントから大広間で婚約破棄された私ことラズベリー=チーズスフレは呆然となった。
この人・・・チーズスフレ家が、王家が王家としての威厳を保てるように金銭面だけではなく生活面と王宮の警備でも援助していた事を知っているのですかね~?
しかもシャイン=マスカットという令嬢とは初めて顔を合わせたのですけど。
私達の婚約は国王夫妻がチーズスフレ家に土下座をして頼み込んだのに・・・。
我が家にとってチャーリー王太子との結婚は何の旨味もないですから婚約破棄してもいいですよ?
何と言っても無駄な出費がなくなるのですから。
但し・・・貧乏になってもお二人は真実の愛を貫く事が出来るのでしょうか?
私は遠くでお二人の真実の愛を温かい目で見守る事にします。
戦国時代の公家は生活が困窮していたという話を聞いて思い付きました。
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。

お姉様、わたくしの代わりに謝っておいて下さる?と言われました
来住野つかさ
恋愛
「お姉様、悪いのだけど次の夜会でちょっと皆様に謝って下さる?」
突然妹のマリオンがおかしなことを言ってきました。わたくしはマーゴット・アドラム。男爵家の長女です。先日妹がわたくしの婚約者であったチャールズ・
サックウィル子爵令息と恋に落ちたために、婚約者の変更をしたばかり。それで社交界に悪い噂が流れているので代わりに謝ってきて欲しいというのです。意味が分かりませんが、マリオンに押し切られて参加させられた夜会で出会ったジェレミー・オルグレン伯爵令息に、「僕にも謝って欲しい」と言われました。――わたくし、皆様にそんなに悪い事しましたか? 謝るにしても理由を教えて下さいませ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる