愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ

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 客室に通されて、ザーリ様とレオン様の到着を待つ。
 少し緊張しているのは、私からレオン様に婚約を申し込むから……ではなく、なぜレオン様が私を選んだのかが判明するからだ。
 世界最大の謎が解ける瞬間に立ち会えるなんて、幸運以外の何物でもない。……悲しくなるのはなんでだろう。

「待たせたな」

 客室の扉が開き、ザーリ侯爵に続いてレオン様が入ってくる。
 私たちはすぐに立ち上がり、頭を下げながら一言ずつ挨拶を述べる。
 さあ、ここからが本題だ。

「してワットよ、昨日の続きにはなるのだが、エミリア嬢の口から答えを聞かぬことには、こちらも婚約の話を進めるわけにはいかない」
「は、はい! えぇ……その前にですね、レオン様にお聞きしたいことがありまして。なぜ、うちのエミリアなのですか?」

 ……ついにきたわね。
 これは、受け取り方によっては失礼に値する質問だ。
 あの権力に弱いお父様が、無理矢理にでも縁談を進めるのではなく、レオン様に理由を聞くだなんて信じられない。気になって気になって仕方がなかったのだろう。

「えっ? い、言わないとダメ……でしょうか?」

 そうね、言いなさい!
 天が遣わせた才女とも呼ばれるお姉様を差し置いて、私を選んだ理由を!
 二つも年上で、顔なんて自慢できるところが一つもないくらいぼやけてて、頭だってよくない。この体も、殿方からすれば、どこに魅力を感じたらいいのってスタイルだし……。
 私が自分の微妙さを並べ続けて泣きだしてしまう前に早く!
 お願い!

「レオンは口下手なんだ。ワット伯爵、勘弁してやってくれないか。……親バカかと思われるかもしれないが、息子は頭もいいし、見た目も悪くない。それに、我がアグナバル侯爵家は、貴族の中でも力がある。どうだろうかエミリア嬢、息子をもらってやってはくれんか?」

 ……ぐぬぬっ。どうしたものか。どうしても聞いておきたかったのだけれど。
 こうなったら、別の角度から攻めてみましょう。

「ザーリ侯爵、私が世間からどのような評価を受け、何と蔑まれているかご存知でしょうか?」
「あぁ、その話か。君が聞きたいのなら正直に答えるが……貴族の間では、アレとかゴミリアだとか呼ばれているようだな。あとは……姉に全てを持っていかれた無能なんてのも耳にしたことがある」
「はい、その通りでございます。誰も私なんて欲しがりません」

 ザーリ様も人が悪い。
 私の評判を知っているじゃないか。

「……誰も? レオンが君を欲しいと言っている。アグナバル侯爵家も君を娘に迎えようとしているのだ。嫌なら嫌で構わない。はっきり言ってくれたまえ」
「嫌というわけではないのですが……」
「うむ、では決まりだな! がはははは、めでたいめでたい! よかったなレオン!」

 これは、婚約が決まってしまったということかしら?
 ……なんでええええぇ!
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