愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ

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「エミリア、話がある! 今すぐ部屋に来なさい!」
「は、はいっ! すぐ行きます!」

 帰るなり、お父様が怒鳴っている。
 私は残りのパンを口の中に押し込んで、その隙間にスープを流し込む。この姿を見て、どこの誰が伯爵家の令嬢だと思うだろうか。
 立ち上がり、口元を両手で押さえながら必死に咀嚼する。一刻も早く飲み込まなくては。

 ゴックンと喉を鳴らし、慌ただしくお父様が待つ書斎へ向かう。
 もう中に居るのは分かっているが、わざとらしくノックをして返事を待つ。

「さっさと入れ!」

 礼儀を重んじただけなのに、なぜか怒られてしまった。ノックをせずに入ったところで叱られるのだから、何をしようが無駄なのだけれど。

 おそらく、今日の婚約についての話があるのだろう。
 ゆっくりと扉を開けて、部屋に入る。
 お父様とお母様……それに、お姉様までもが待っていた。

「……で?」

 これがお母様の一言目。
 ……で? とは?
 逆にこちらが聞きたい。

「あの、お父様とお母様がなぜ怒っているのかが分からないのですが……」

 私は、姉と比較されて馬鹿だ無能だと評価されている。もしかしたら、こちらの理解力が足りないのかもしれない。
 お姉様ならば、お母様の言葉……で?の意味を汲み取ってあげられるのだろう。
 私には無理なので、素直に丁寧に分かりやすく、自分の気持ちを伝えてあげた。

「はぁ……お前がマリーザと同じくらい優秀であってくれたらと、今日ほど思ったことはない。このバカ娘が! メーティア家に恥をかかせおって! レオン様がお前を欲しいとおっしゃったんだぞ! 素直に『はい』となぜ言えんのだ!」
「……お父様、冷静にお考えください。お姉様ではなく、私が欲しいなどと言う物好きがいるはずがありません。疑って当然ではありませんか?」

 お父様とお母様の顔が、さっき食べたスープのように、湯気が出てもおかしくないくらい真っ赤になっている。
 笑いを堪えられなかったお姉様がクスクスと吹き出す。

 ……やっぱり私、間違ってないよね?
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