白い結婚のはずなのに、なぜ私を殺そうとしたのですか? など、恋愛小説短編集

ミィタソ

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望むなら、戦いましょう

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 競技会の日が近づくにつれ、学園は独特の緊張感と熱気に包まれていた。
 魔法、剣術、体術、学術の各分野で、学生たちがその実力を競い合うこの大会は、学園最大の行事の一つだ。

「平民の私がどこまで通用するか……」

 エルザは競技会のための練習場で一人、木剣を手に黙々と汗を流していた。
 持ち前の根性と粘り強さで少しずつ動きを磨いていく。

 そんな彼女を遠くから眺めている影があった。
 ファイブスターの一人、リカルドだ。彼は特に何をするでもなく、ただ微笑みながらエルザの様子を見守っていた。

「どうするつもりだ、リカルド」

 背後から声をかけたのはアルベルトだった。
 彼の冷たい視線がリカルドに向けられる。

「お前の悪戯で、彼女が傷つくようなことはさせない」

「悪戯なんて人聞きが悪いなあ。俺はただ、彼女がどこまでできるか見てみたいだけさ」

 リカルドは振り返り、肩をすくめた。

「興味本位で関わるな」

 アルベルトは短く言い放つと、その場を去っていった。

「アルベルト……君が言うほど単純な話じゃないんだよ」

 リカルドは軽くため息をつき、もう一度エルザを見つめる。

 ついに競技会の幕が上がった。
 観客席には貴族の家系がずらりと並び、学園の名門子息たちが次々と競技に挑んでいく。
 エルザはその賑わいを感じつつ、緊張で冷たくなった手を握りしめていた。

「次、剣術の予選第一試合!」

 司会の声が響き渡り、エルザは剣を握りしめて立ち上がる。彼女の相手は子爵家の青年アトイックで、既に名のある剣術家だった。

「平民がここまで出てくるなんて、笑わせるなよ!」

 青年は余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、剣を構える。
 その言葉に会場からも嘲笑が漏れる。

 エルザはその声に動じることなく、相手の目をまっすぐに見据えた。

 試合開始の号令と共に、少年が速攻を仕掛ける。
 華麗な動きでエルザを翻弄しようとするが、彼女はその一撃一撃を辛うじてかわしていく。

「ほう、避けるだけは得意みたいだな」

 アトイックが挑発的に言う。しかし、エルザは黙って足元の動きに集中していた。

 次の瞬間、彼女は一瞬の隙を突き、アトイックの防御の甘い部分に木剣を叩き込む。
 観客席がどよめく中、少年は床に膝をついた。

「試合終了! 勝者、エルザ・バートレイ!」

 司会の声が響き渡り、会場が一瞬静まり返った後、大きなどよめきと歓声が湧き起こる。
 観客席でその様子を見ていたリカルドは、目を細めて微笑む。

「やっぱり面白いね、エルザ」

 隣に座るミレイナは呆れたように言う。

「信じられないわ。あの平民の子が勝つなんて」
「本当に信じられないことは、まだこれから起こるさ」

 リカルドは楽しそうに答えた。

「……悪くない動きだ」

 一方で、アルベルトは冷静に試合を見つめていたが、その目には微かな驚きが宿っていた。

 試合が終わり、一人になったエルザは控室で深い息をつく。
 勝利の喜びよりも、次の戦いへの不安が心を覆っている。

「これでいいのよね……?」

 自分自身に問いかけるエルザ。その問いに答える者はいない。
 ここで、控室の扉がノックされる音が響いた。

「入っていいか?」

 低く響く声はアルベルトのものだった。

「何の用?」

 エルザは少し警戒しながら答える。

アルベルトは部屋に入り、彼女の前に立つ。

「一つだけ言っておく。この学園で目立ちすぎるのは危険だ。だが、お前はその危険を承知でここまで来たんだろう?」

 エルザはその言葉に一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。

「……そうよ」
「ならば、貫け!」

 アルベルトは短くそれだけを言い、控室を後にした。
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