捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ

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 また別の日、ディーン様と共にマッカラン公爵家の書庫に向かった。
 広い書棚に整然と並ぶ本の数々は、帝国の歴史や法、さらには政治についての貴重な知識が詰まっている。
 これは言うべきかどうか悩んだのだが、自分という人間を知ってもらうためにも、我を通してみることにした。
 一冊の本を手に取り、その内容に目を通しながら、恐る恐る口を開く。

「ディーン様、帝国内の法制度について以前から気になっていたのですが、国政に関わる決定事項の一部が、地方領主にも委ねられていると聞きました」

 ディーン様は静かにうなずき、私に説明を促す。

「その通りです、エルザ様。帝国では、各地の領主がある程度の自治権を持っていますね。私の家もその例外ではなく、治安維持や税収の一部に関しては我々に判断が委ねられています。しかし、これには難しさも伴う……帝国の方針と、領地の事情が必ずしも一致するわけではないですからね」

 思っていた通りだ。自分が今まで勉強してきた知識が少しずつ役立っていると感じる。
 他国の貴族が自国の法に口を出しているのだ。反応を伺いつつではあったが、そのまま続けてみる。
 ザルカンド王国からの目線、アースランド帝国の目線、異なる二つが合わさることで、問題の解決も早く、良いものが生まれていく。

 私たちの間には、いつしか静かな信頼が生まれ始めていた。
 補佐をしながら、ディーン様の人となりを理解するたびに、自分の中に新たな目標が芽生えていくのを感じていく。
 自分が仕えるべきは、あの冷酷な王子ではなく、真摯に領地を守ろうとするこの公爵なのではないかと。

 私は、ザルカンド王国から逃れてきたわけではない。
 ここで自分の役割を見つけ、ディーン様とともに新しい道を切り開いていく——その決意が、心の奥底で少しずつ形になっていくのを感じたのだった。
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