捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ

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 これだけの貴族が集まる場で宣言してしまった以上、誰が何と言おうが、何をしようが、私と王子の婚約破棄が覆ることはないだろう。
 でも、黙って帰るなんて私にはできない。
 王子のために生きてきた時間分の気持ちをぶつけてやるんだ。

 両手の拳を決意とともに強く握りしめたあと、心を落ち着かせてフワッと力を抜く。
 私になんて一度も向けたことのない優しい笑みで……何年も前から婚約していたかのような態度でアイリスと話す王子を見据え、貴族らしい優雅な足取りで歩きだす。

「いつ婚約を発表してくださるのか、待ち遠しくてしかたありませんでしたわ」
「アイリス、君と一緒になれて嬉しいよ」
「わたくしもですわマクーン王子」

 近づくにつれて、二人の会話が聞こえてくる。
 こんなクズな男に振り回されて生きてきたのか。

 拳を振り上げて大声で怒鳴りつけてやりたい。
 泣きたいくらい悔しい。
 でも、王妃となるために必死で身に着けた微笑みを浮かべて押し殺す。

「王子、少しよろしいですか?」
「……ん? あぁ、まだいたのか。お前のおかげで、アイリスとの婚約発表が盛り上がったよ。最後に役に立ってくれてありがとうなエルザ。もう帰っていいぞ?」
「もう私と話す気もないと……。分かりました、アイリスとお幸せに。婚約破棄の件、お父様には私から伝えておきますので」

 私をわざわざ壇上近くの階段で待機させた理由……そういうことだったのね。
 話す気も失せてしまった。

 私が婚約破棄を受け入れず、しつこく引き下がるとでも思っていたのか、王子はぽかんと口を開けている。
 舌を出して、こちらを馬鹿にしたように手を振るアイリスには少し腹がたったけれど、それもどうだっていい。

 胸を張り、顎を上げ、堂々と貴族らしい態度で会場を後にした。
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