捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ

文字の大きさ
上 下
1 / 13

1

しおりを挟む
「クスクス、あれで王子と釣り合うと思ってるのが笑えるわよね」
「優秀な公爵家の娘とはいえ、見た目はどうにもならないわね」
「見て見て、王子の横であんなに胸を張って。逆に滑稽に映るって分からないのかしら?」
「妹のアイリス様はあんなにもお美しいのにねぇ。本当に同じ血が流れているのか怪しいわ」

 貴族の女性たちの冷ややかな視線が私を包み込む。
 彼女たちの言葉が耳に入るたび、心の中に暗い影が広がっていく。
 しかし、私は王子の婚約者なのだから、堂々とすべきは当然なのだ。

 ここは王宮の豪華なホール。
 今夜は、私の婚約者――マクーン王子の誕生日を祝う華やかなパーティーが開かれている。
 そんなめでたい席なのだから、蔑まれるよな言葉を浴びせられようとも、幼少期から教育されてきた微笑みを崩すわけにはいかない。

「おいノロマ……俺が動いたら後ろをついてこいと言っただろう!」
「はい、すぐに行きます」

 まるで奴隷でも呼ぶような口調。王子の刺すような視線が向けられる。

 私――エルザ・ローグアシュタルは背が低く、生まれつき肉が付きにくい体質のため、線が細い。おまけに顔もぼやけていて、何の特徴もない。まるで、美しい花の横で青々しく茂る雑草のようだ。
 私が美しく成長しなかったせいで、王子は年々私に冷たく当たるようになっていった。
 幼いころ、私を可愛いと褒めてくれた王子も、今は私に失望しているのだろう。
 見た目が気に入らないなら、他の部分で頑張ろうと勉強に力を入れてみたが、無駄に終わった。

 ……白い結婚か。
 愛がなくても、貴族の結婚は成立するものだ。
 親同士が決めた政略結婚だったり、権力を盾に無理矢理……なんて、本人の気持ちなど関係なく夫婦になる形もたくさん存在している。
 私たちも同じ。ただそれだけのこと。

 自分に言い聞かせながら、壇上に向かって歩き出す王子の後を追う。
 ……そこで、信じられないことが起こった。
 隠れていた私の妹――アイリスがひょっこりと顔を出し、王子の手を握ったのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。 そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

処理中です...