7 / 17
∽Ⅰ∽
初めてのお支度
しおりを挟む
アリアナが正式に王太子の婚約者となって2週間ほど経ったある日、アリアナ付きの侍女が慌ただしく部屋へとやってきた。
「アリアナお嬢様!大変でございます!しょっ、招待状が届いております~!」
普通に考えると貴族の娘なら大体11~13歳頃にデビュタントも済ませており、アリアナも12歳とそこそこ早めにデビュタントを済ませていたためお茶会はもちろん夜会にも何度か参加したこともあるのだからそこまで慌てる出来事ではないはずである。しかし届いた招待状の封筒に押されていた紋が王家のものだった為にアリアナを幼い頃から知っている侍女たちにとっては天変地異の前触れかとも思えるほどの衝撃を受けていたのだ。
「なんか、クリストファー殿下の婚約者として王妃殿下主催のお茶会に出席するように…ですって」
アリアナが内容を伝えるとその場にいた侍女はキャーと歓喜とも悲鳴とも判らないような声を上げ、その声に廊下で掃除をしていたハウスメイドが何事かと近くにいた男性使用人を伴って部屋へと確認に来て、そこから事情を知った二人が屋敷中の使用人達に話を広めるまでに半日とかからなかった。
「なんだかみんな大袈裟じゃない?一応王太子の婚約者になったんだからこれからもこんなことはよくあるでしょう?」
そうアリアナは言うのだが使用人達は一様に「お嬢様が王太子妃となるに相応しい、素晴らしい淑女であることは私達もよ~く解っております。しかし!お嬢様は一度想定外の事が起こったり自分が失敗したと思った瞬間から周りが見えなくなりご自分の中でどんどん最悪な事態を想像して落ち込んで帰って来るではありませんか!」などと言い切る。アリアナ自身はそこまで酷い状態にはなってないと思っているだけに使用人達が心配をしているということには思い至っていなかった。
*-=-*-=-*-=-*-=-*
お茶会の数日前に王太子名義でドレスと宝飾品が届き、それと一緒に数名のメイドが派遣されてきた。彼女たちは王宮で働く針子達なのだそうで、贈られたドレスの微調整と共にアリアナのサイズを測りに来たらしい。それはもう頭の先から足の先まで全ての寸法を事細かく測られた。
「ぇ?頭?なんで……」
「アリアナ様はいずれ王太子妃となられるお方ですので、お帽子以外にも公式の場ではティアラなどを身に着けて頂くこともございます。時にはお迎えする外国の方の装いに合わせて頭に飾りをつける場合もございますので髪を下ろした状態と結い上げた状態での採寸が必要となっております」
「手首?腕輪なら大体のサイズでいいんじゃ……?」
「こちらはドレスや腕輪のみならず手袋や袖口の飾りのボリュームを決めるときにも必要となります。またやはり外国の中には手首にピッチリとした腕輪を着ける国もあり「ぁ、解りました……お願いします」」
「あ!?足首!?!?もしかして足首に飾りをつける国もあるのかしら?」
「仰る通りでございます。これらは同じ南方の国にある小国の文化ですので、少なくともわたくしが王家に仕えるようになってからは使ったことはございません。それでも『もしも』の時に慌てることのないようにしておくことも王族としての、また私達王家に仕える者としての義務だと思っております」
「……そうですね。たしか南方の小国ではあるけれど国同士の繋がりが深く大国に負けないくらいの豊かさを誇っていたと記憶しています。まぁ、私が読んだことのある書物にあったのは貴族の生活やファッションとは関係ないようなものだから装飾品の事までは知らなかったけど……」
アリアナがそう言うとそれまで澄ました顔しか見せていなかった長と思われる女性が少し目を見開き口角を上げた。
「アリアナ様はお噂に違わず本当に博識でいらっしゃるのですね。大抵の貴族の方達…特に政治には関わらないような女性やお子様方は南方にあるのが小国だとは知っていても近隣諸国との結びつきの深さを理解していない方も多く、人によっては小国の文化など蔑ろにしてもいいと思っているような方もいらっしゃいますのに。アリアナ様は正しく諸国を理解されており、またその地の文化にも理解を示そうとなさってくださる……本当にこんなにも素晴らしいご令嬢をお迎えすることになり王家も安泰でございましょう」
褒めすぎだ。アリアナとしてはそう思うものの、折角褒めてくれているのだし、何よりきっとこの女性は針子だけでなく王宮での女性使用人の全てをまとめている立場にあるのだろうと判る気品があるため、謙遜しすぎるのは逆に失礼に当たるだろうと思い曖昧に微笑み礼を返すだけにとどめた。
勿論その場にいたアリアナ付きの侍女達は鼻高々で頷いており、それらを目の端に止めた王宮から派遣された者達はアリアナがいかにに使用人達にも慕われているかを感じ、結果アリアナは王宮内でも更なる評価を得ることになるのだが、当然のことながらアリアナは一切気付くことがないのであった。
「アリアナお嬢様!大変でございます!しょっ、招待状が届いております~!」
普通に考えると貴族の娘なら大体11~13歳頃にデビュタントも済ませており、アリアナも12歳とそこそこ早めにデビュタントを済ませていたためお茶会はもちろん夜会にも何度か参加したこともあるのだからそこまで慌てる出来事ではないはずである。しかし届いた招待状の封筒に押されていた紋が王家のものだった為にアリアナを幼い頃から知っている侍女たちにとっては天変地異の前触れかとも思えるほどの衝撃を受けていたのだ。
「なんか、クリストファー殿下の婚約者として王妃殿下主催のお茶会に出席するように…ですって」
アリアナが内容を伝えるとその場にいた侍女はキャーと歓喜とも悲鳴とも判らないような声を上げ、その声に廊下で掃除をしていたハウスメイドが何事かと近くにいた男性使用人を伴って部屋へと確認に来て、そこから事情を知った二人が屋敷中の使用人達に話を広めるまでに半日とかからなかった。
「なんだかみんな大袈裟じゃない?一応王太子の婚約者になったんだからこれからもこんなことはよくあるでしょう?」
そうアリアナは言うのだが使用人達は一様に「お嬢様が王太子妃となるに相応しい、素晴らしい淑女であることは私達もよ~く解っております。しかし!お嬢様は一度想定外の事が起こったり自分が失敗したと思った瞬間から周りが見えなくなりご自分の中でどんどん最悪な事態を想像して落ち込んで帰って来るではありませんか!」などと言い切る。アリアナ自身はそこまで酷い状態にはなってないと思っているだけに使用人達が心配をしているということには思い至っていなかった。
*-=-*-=-*-=-*-=-*
お茶会の数日前に王太子名義でドレスと宝飾品が届き、それと一緒に数名のメイドが派遣されてきた。彼女たちは王宮で働く針子達なのだそうで、贈られたドレスの微調整と共にアリアナのサイズを測りに来たらしい。それはもう頭の先から足の先まで全ての寸法を事細かく測られた。
「ぇ?頭?なんで……」
「アリアナ様はいずれ王太子妃となられるお方ですので、お帽子以外にも公式の場ではティアラなどを身に着けて頂くこともございます。時にはお迎えする外国の方の装いに合わせて頭に飾りをつける場合もございますので髪を下ろした状態と結い上げた状態での採寸が必要となっております」
「手首?腕輪なら大体のサイズでいいんじゃ……?」
「こちらはドレスや腕輪のみならず手袋や袖口の飾りのボリュームを決めるときにも必要となります。またやはり外国の中には手首にピッチリとした腕輪を着ける国もあり「ぁ、解りました……お願いします」」
「あ!?足首!?!?もしかして足首に飾りをつける国もあるのかしら?」
「仰る通りでございます。これらは同じ南方の国にある小国の文化ですので、少なくともわたくしが王家に仕えるようになってからは使ったことはございません。それでも『もしも』の時に慌てることのないようにしておくことも王族としての、また私達王家に仕える者としての義務だと思っております」
「……そうですね。たしか南方の小国ではあるけれど国同士の繋がりが深く大国に負けないくらいの豊かさを誇っていたと記憶しています。まぁ、私が読んだことのある書物にあったのは貴族の生活やファッションとは関係ないようなものだから装飾品の事までは知らなかったけど……」
アリアナがそう言うとそれまで澄ました顔しか見せていなかった長と思われる女性が少し目を見開き口角を上げた。
「アリアナ様はお噂に違わず本当に博識でいらっしゃるのですね。大抵の貴族の方達…特に政治には関わらないような女性やお子様方は南方にあるのが小国だとは知っていても近隣諸国との結びつきの深さを理解していない方も多く、人によっては小国の文化など蔑ろにしてもいいと思っているような方もいらっしゃいますのに。アリアナ様は正しく諸国を理解されており、またその地の文化にも理解を示そうとなさってくださる……本当にこんなにも素晴らしいご令嬢をお迎えすることになり王家も安泰でございましょう」
褒めすぎだ。アリアナとしてはそう思うものの、折角褒めてくれているのだし、何よりきっとこの女性は針子だけでなく王宮での女性使用人の全てをまとめている立場にあるのだろうと判る気品があるため、謙遜しすぎるのは逆に失礼に当たるだろうと思い曖昧に微笑み礼を返すだけにとどめた。
勿論その場にいたアリアナ付きの侍女達は鼻高々で頷いており、それらを目の端に止めた王宮から派遣された者達はアリアナがいかにに使用人達にも慕われているかを感じ、結果アリアナは王宮内でも更なる評価を得ることになるのだが、当然のことながらアリアナは一切気付くことがないのであった。
4
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生公爵令嬢は2度目の人生を穏やかに送りたい〰️なぜか宿敵王子に溺愛されています〰️
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リリーはクラフト王子殿下が好きだったが
クラフト王子殿下には聖女マリナが寄り添っていた
そして殿下にリリーは殺される?
転生して2度目の人生ではクラフト王子殿下に関わらないようにするが
何故か関わってしまいその上溺愛されてしまう
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる