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∽Ⅰ∽
国王陛下
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「わーっはっはっはっはっはっ!!」
プライドだけの男がどう反応するかを待つ間もなく、シン…とした空間に豪快な笑い声が響き渡る。
いつからいたのか国王陛下が王妃殿下を伴って現れた。
アリアナは勿論、そこに居た令嬢達も深く膝を折り頭を垂れる。
「皆、そう改まらずとも良い。楽にしてくれ」
「折角のお茶も冷めてしまうわ。みんな座ってちょうだい」
両陛下の言葉に全員礼を解き着席した。…と、王太子だけは呆然とした姿そのままで未だ固まっていた。
「クリストファー、何を突っ立っておる?皆がお前の言葉を待っているではないか」
この国での茶会のマナーとしては、本来ならば全員が揃ったところで主催者である王太子が集まってくれた者への感謝と労いの言葉を述べ、会の趣旨を伝え、全員が知っているとはいえ主催者であることを明示するために自己紹介をし、今回のように数人でテーブルを囲むような茶会の場合は招待者達を紹介する、もしくは招待者達に自己紹介を促し、各自が自己紹介をしている間に控えている侍女達がお茶を用意し、全員の自己紹介が終わりお茶が行き渡ると主催者の言葉でお茶会スタートとなる。
が、クリストファーの挨拶が始まる前、一人のご令嬢が遅れているということもあり雑談をしていたところにひとりの侍従がクリストファーの所へ2枚の紙を持って現れ「殿下、誠に申し訳ありませんがこちらの2枚の書類を確認していただきたく…」と始めたことで先程の『化け物呼ばわり』に続く話が聞こえてきたのだ。
それは、急ぎとは言え軍籍に身を置いているわけでもない者に聞かれてもいいのかと思いはしたものの、不穏なその内容にアリアナをはじめとする数人は顔を強張らせていた。そして、そんな張り詰めた空気を感じたひとりのご令嬢が『何が問題なのか』を尋ねたことで先程の『化け物呼ばわり』へ続く話をしてしまったのだ。
まぁ化け物呼ばわりについてはこの際どうでもいい、とアリアナは思ったものの、一体どこから聞かれていたのか微かではあるが不安を覚えた。それはそうだろう、狭量な者なら確実に怒らせているだろう話し方を心掛けつつ王族相手に捲し立てたのだから不敬だとブチ切れられても仕方ない状況で、しかも相手はその狭量そうな王太子。更には狭量か寛容か判断が付きかねるその両親…国王夫妻が聞いていたかもしれないのだ。
「まぁいい、お前がいまいち把握出来ていなかったことをあれだけ確りと把握し、且つ自身の意見を持ち、しかもそれが理にかなっていているばかりで無く打開策としてかなり優秀な意見だったのだからプライドだけは立派なお前にはショックだっただろうな。だからといって年若い、しかもこんなにも可愛らしいお嬢さんに向かって『化け物』とは失礼極まりない。それは自分でも判っているだろうな?」
叱られているのは自分を『化け物呼ばわり』した目の前の青年のはずなのに、アリアナはその『化け物呼ばわり』をされる前から聞かれていたことにこそショックを受け一緒に叱られているような気になってしまっていた。
「あの…王太子殿下?私も少しその…言い過ぎてしまいました事を謝らせていただいてもよろしいでしょうか?」
とにかく不敬罪で厳罰を受けるなんて事が無いように、とにかく、と!に!か!く!謝らなければ!
アリアナは自身が他のご令嬢にしていた話を聞かれていたことで軽くパニックに襲われ、自分だけの罪になるならまだしも、王がもし狭量な方なら私のような小生意気で不敬な娘を産み育てたということで家族まで罰を受けかねないと考えてしまったため後半、自身が褒められていたことなどは耳に入っていなかった。
このことで判るように、アリアナ・プラウドという少女は賢くはあるものの小心者で、ちょっとしたことで良くも悪くも妄想を膨らませすぎるきらいのあるうっかりさんでもあった。
そんなうっかりさんだから国王夫妻がまさかあんな重大な決断を、非公式とは言えこのような大きくもない規模の茶会で決定し発表してしまっていた事に気付いていなかった。
アリアナ・プラウドの憂鬱な日々はこんな風に始まってしまったのだった。
プライドだけの男がどう反応するかを待つ間もなく、シン…とした空間に豪快な笑い声が響き渡る。
いつからいたのか国王陛下が王妃殿下を伴って現れた。
アリアナは勿論、そこに居た令嬢達も深く膝を折り頭を垂れる。
「皆、そう改まらずとも良い。楽にしてくれ」
「折角のお茶も冷めてしまうわ。みんな座ってちょうだい」
両陛下の言葉に全員礼を解き着席した。…と、王太子だけは呆然とした姿そのままで未だ固まっていた。
「クリストファー、何を突っ立っておる?皆がお前の言葉を待っているではないか」
この国での茶会のマナーとしては、本来ならば全員が揃ったところで主催者である王太子が集まってくれた者への感謝と労いの言葉を述べ、会の趣旨を伝え、全員が知っているとはいえ主催者であることを明示するために自己紹介をし、今回のように数人でテーブルを囲むような茶会の場合は招待者達を紹介する、もしくは招待者達に自己紹介を促し、各自が自己紹介をしている間に控えている侍女達がお茶を用意し、全員の自己紹介が終わりお茶が行き渡ると主催者の言葉でお茶会スタートとなる。
が、クリストファーの挨拶が始まる前、一人のご令嬢が遅れているということもあり雑談をしていたところにひとりの侍従がクリストファーの所へ2枚の紙を持って現れ「殿下、誠に申し訳ありませんがこちらの2枚の書類を確認していただきたく…」と始めたことで先程の『化け物呼ばわり』に続く話が聞こえてきたのだ。
それは、急ぎとは言え軍籍に身を置いているわけでもない者に聞かれてもいいのかと思いはしたものの、不穏なその内容にアリアナをはじめとする数人は顔を強張らせていた。そして、そんな張り詰めた空気を感じたひとりのご令嬢が『何が問題なのか』を尋ねたことで先程の『化け物呼ばわり』へ続く話をしてしまったのだ。
まぁ化け物呼ばわりについてはこの際どうでもいい、とアリアナは思ったものの、一体どこから聞かれていたのか微かではあるが不安を覚えた。それはそうだろう、狭量な者なら確実に怒らせているだろう話し方を心掛けつつ王族相手に捲し立てたのだから不敬だとブチ切れられても仕方ない状況で、しかも相手はその狭量そうな王太子。更には狭量か寛容か判断が付きかねるその両親…国王夫妻が聞いていたかもしれないのだ。
「まぁいい、お前がいまいち把握出来ていなかったことをあれだけ確りと把握し、且つ自身の意見を持ち、しかもそれが理にかなっていているばかりで無く打開策としてかなり優秀な意見だったのだからプライドだけは立派なお前にはショックだっただろうな。だからといって年若い、しかもこんなにも可愛らしいお嬢さんに向かって『化け物』とは失礼極まりない。それは自分でも判っているだろうな?」
叱られているのは自分を『化け物呼ばわり』した目の前の青年のはずなのに、アリアナはその『化け物呼ばわり』をされる前から聞かれていたことにこそショックを受け一緒に叱られているような気になってしまっていた。
「あの…王太子殿下?私も少しその…言い過ぎてしまいました事を謝らせていただいてもよろしいでしょうか?」
とにかく不敬罪で厳罰を受けるなんて事が無いように、とにかく、と!に!か!く!謝らなければ!
アリアナは自身が他のご令嬢にしていた話を聞かれていたことで軽くパニックに襲われ、自分だけの罪になるならまだしも、王がもし狭量な方なら私のような小生意気で不敬な娘を産み育てたということで家族まで罰を受けかねないと考えてしまったため後半、自身が褒められていたことなどは耳に入っていなかった。
このことで判るように、アリアナ・プラウドという少女は賢くはあるものの小心者で、ちょっとしたことで良くも悪くも妄想を膨らませすぎるきらいのあるうっかりさんでもあった。
そんなうっかりさんだから国王夫妻がまさかあんな重大な決断を、非公式とは言えこのような大きくもない規模の茶会で決定し発表してしまっていた事に気付いていなかった。
アリアナ・プラウドの憂鬱な日々はこんな風に始まってしまったのだった。
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