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― 参 ― ふたりのこども
おおばぁちゃんのアンナ
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テーブルがセットされていく間、アルはずっとお父様に「おじぃちゃまは『アカンタレ小僧』なの?」と問い質しています。コンラード先生はまだ答えを言う気配がありません。まぁ大人はもちろん確信を得ましたけれど、答えを出し渋る理由は何かあるんでしょうか?
アルの声を聞きながらテーブルをセットしている光景を見ていると幼かったころの事を思い出しました。
*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*-=-*
子供部屋に置かれている小さいテーブルと椅子。持ち込まれる大きなサイズのテーブルと椅子。
そう言えば私にも覚えがありますわ…。お父様の妹のアデル叔母様が来られる日はいつも楽しみで、お部屋にある子供用の小さなテーブルにお茶の用意を頼むのですが、私のテーブルは二人掛けなのに何時もお父様と従兄のセインがくっついてくるものだから大人のテーブルと椅子を用意してもらって、そのうち叔母様には子供の椅子は窮屈だと気付くようになって…。まぁ当時の私は自分で気付いたのではなく私達姉妹の家庭教師をしてくださっていたミズ•カミーユから
「大人の、しかもドレスを着ている女性がこのような小さな椅子に座るのは苦行でしかありません。コルセットで身体を締め付けているのにしゃがみ込む様な姿勢になるなんて…。それにこれは子供用ですから大人が座ると直ぐに壊れてしまいますよ」
そう言われて、翌日から部屋に置いてあるテーブルと椅子は妹達とお茶を飲む時だけに使い、叔母様をご招待する時やメイドにお茶会ごっこの相手をしてもらう時には大人用のテーブルと椅子を用意してもらうようになったのです。
ぇ?あぁ、まぁ丁度その頃には『お茶会』がしたくてしたくてたまりませんでしたの。勿論未だお茶会を主催できるような歳でもありませんでしたし出席したことも殆どありませんでしたから、おやつの時間を『お茶会』と称して、後は私達の世話をしてくれていたメイドにお客様役をやってもらって遊んでおりましたの。ちょっとお恥ずかしいですわね。
今日の『初めに先生を子供用の椅子に窮屈そうに座って貰う』というのはアンナの案かしら?
懐かしさを感じている間に『大人用のテーブルと椅子』の準備も終わり、アルが私をエスコートしに近付いてきました。
「かぁさま、こちらにどーぞ」
いつ見ても可愛いわ。喜んで手を取ろうとした時、デュークが声を掛けます。
「今日はコンラード先生が一番のお客様なんだから、先に先生をご案内しなさい。母様は父様がエスコートするからね」
「そっか!先生ごめんなさい。こちらにどーぞ」
時々この様に息子に嫉妬しちゃううちの主人って素敵で可愛いと思いませんこと?ふふっ、でも私の旦那様ですのよ。誰にも差し上げられませんし貸してもあげませんわ。
「おや、ありがとうございます」
「ん~…あ!そ~だ!アンナもここにすわってよ」
「アルフレッド坊っちゃま、今日はお遊びではなく『本物のお客様』をご招待しているのですから、使用人の私を座らせてはいけませんでしょう」
「え~、でもぼくおじいちゃんとおなじぐらいおおばぁちゃんのおはなしききたいんだもん」
ちょっと口を尖らせるアルも可愛いのですが、アンナの言う通りです。
コンラード先生は気になさらないかもしれませんが『マナー』として覚えて実践する必要がありますし、恐らく今は勉強を始める前の『テスト』なのではないかしらと思うのです。
「アル坊っちゃま、今アンナさんの事をオオバアチャンと言いましたがどうしてなのか教えて頂けますか?」
「ん~っと、アンナはね、ぼくのうばでおばあちゃんがわりなんだけどね、かぁさまやねぇねたちもアンナがうばで、おじぃさまもアンナがうばだったから、アンナはみんなのうばだったからおおばぁちゃんなの」
まぁお父様の乳母ではなく専属の侍女だったのですがそこはわかっているかもしれませんわね。
「なるほど、確かにアンナさんはカイン坊っちゃまのお世話をなさっておいででしたなぁ。ところで『ねぇね達』と言うのはお母様の妹さん達ですかな?」
「うん!ロレインおばさんとリリィおばさんだよ!ぼくがちっちゃいときはロレインねぇね、リリィねぇねってよんでたんだけどけっこんしたからね、ぼくももうすぐおにぃちゃんになるからねぇねたちはおばさんってよぶことにしたの」
二人とも独身の時はいくら叔母甥の関係とは言え『おばさん』とl呼ばれることに抵抗があったようです。
それでもお互い伴侶を得て、そのお相手がアルに『アランおじさん』『ハルおじさん』と自分を紹介したものだからリリィは特に抵抗も無く、ロレインは渋々、自分達を『おばさん』と呼ぶ事を了承したんでしたわねぇ。
「ではアンナさん、申し訳ありませんが今からアル坊っちゃまの今後のお勉強についてのお話をしたいと思いますので、乳母として、今までアル坊っちゃまをお世話されている者として、いくつかご意見などもお聞きしたいので、同席願ってもよろしいですかな?」
こうしてアンナも交えて、今後のアルの生活を組んでいく事になりました。
「ねぇアンナ~、アカンタレコゾーのおはなしして~」
あらお父様逃げられませんわね。
アルの声を聞きながらテーブルをセットしている光景を見ていると幼かったころの事を思い出しました。
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子供部屋に置かれている小さいテーブルと椅子。持ち込まれる大きなサイズのテーブルと椅子。
そう言えば私にも覚えがありますわ…。お父様の妹のアデル叔母様が来られる日はいつも楽しみで、お部屋にある子供用の小さなテーブルにお茶の用意を頼むのですが、私のテーブルは二人掛けなのに何時もお父様と従兄のセインがくっついてくるものだから大人のテーブルと椅子を用意してもらって、そのうち叔母様には子供の椅子は窮屈だと気付くようになって…。まぁ当時の私は自分で気付いたのではなく私達姉妹の家庭教師をしてくださっていたミズ•カミーユから
「大人の、しかもドレスを着ている女性がこのような小さな椅子に座るのは苦行でしかありません。コルセットで身体を締め付けているのにしゃがみ込む様な姿勢になるなんて…。それにこれは子供用ですから大人が座ると直ぐに壊れてしまいますよ」
そう言われて、翌日から部屋に置いてあるテーブルと椅子は妹達とお茶を飲む時だけに使い、叔母様をご招待する時やメイドにお茶会ごっこの相手をしてもらう時には大人用のテーブルと椅子を用意してもらうようになったのです。
ぇ?あぁ、まぁ丁度その頃には『お茶会』がしたくてしたくてたまりませんでしたの。勿論未だお茶会を主催できるような歳でもありませんでしたし出席したことも殆どありませんでしたから、おやつの時間を『お茶会』と称して、後は私達の世話をしてくれていたメイドにお客様役をやってもらって遊んでおりましたの。ちょっとお恥ずかしいですわね。
今日の『初めに先生を子供用の椅子に窮屈そうに座って貰う』というのはアンナの案かしら?
懐かしさを感じている間に『大人用のテーブルと椅子』の準備も終わり、アルが私をエスコートしに近付いてきました。
「かぁさま、こちらにどーぞ」
いつ見ても可愛いわ。喜んで手を取ろうとした時、デュークが声を掛けます。
「今日はコンラード先生が一番のお客様なんだから、先に先生をご案内しなさい。母様は父様がエスコートするからね」
「そっか!先生ごめんなさい。こちらにどーぞ」
時々この様に息子に嫉妬しちゃううちの主人って素敵で可愛いと思いませんこと?ふふっ、でも私の旦那様ですのよ。誰にも差し上げられませんし貸してもあげませんわ。
「おや、ありがとうございます」
「ん~…あ!そ~だ!アンナもここにすわってよ」
「アルフレッド坊っちゃま、今日はお遊びではなく『本物のお客様』をご招待しているのですから、使用人の私を座らせてはいけませんでしょう」
「え~、でもぼくおじいちゃんとおなじぐらいおおばぁちゃんのおはなしききたいんだもん」
ちょっと口を尖らせるアルも可愛いのですが、アンナの言う通りです。
コンラード先生は気になさらないかもしれませんが『マナー』として覚えて実践する必要がありますし、恐らく今は勉強を始める前の『テスト』なのではないかしらと思うのです。
「アル坊っちゃま、今アンナさんの事をオオバアチャンと言いましたがどうしてなのか教えて頂けますか?」
「ん~っと、アンナはね、ぼくのうばでおばあちゃんがわりなんだけどね、かぁさまやねぇねたちもアンナがうばで、おじぃさまもアンナがうばだったから、アンナはみんなのうばだったからおおばぁちゃんなの」
まぁお父様の乳母ではなく専属の侍女だったのですがそこはわかっているかもしれませんわね。
「なるほど、確かにアンナさんはカイン坊っちゃまのお世話をなさっておいででしたなぁ。ところで『ねぇね達』と言うのはお母様の妹さん達ですかな?」
「うん!ロレインおばさんとリリィおばさんだよ!ぼくがちっちゃいときはロレインねぇね、リリィねぇねってよんでたんだけどけっこんしたからね、ぼくももうすぐおにぃちゃんになるからねぇねたちはおばさんってよぶことにしたの」
二人とも独身の時はいくら叔母甥の関係とは言え『おばさん』とl呼ばれることに抵抗があったようです。
それでもお互い伴侶を得て、そのお相手がアルに『アランおじさん』『ハルおじさん』と自分を紹介したものだからリリィは特に抵抗も無く、ロレインは渋々、自分達を『おばさん』と呼ぶ事を了承したんでしたわねぇ。
「ではアンナさん、申し訳ありませんが今からアル坊っちゃまの今後のお勉強についてのお話をしたいと思いますので、乳母として、今までアル坊っちゃまをお世話されている者として、いくつかご意見などもお聞きしたいので、同席願ってもよろしいですかな?」
こうしてアンナも交えて、今後のアルの生活を組んでいく事になりました。
「ねぇアンナ~、アカンタレコゾーのおはなしして~」
あらお父様逃げられませんわね。
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