君しか要らない

すずまる

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思いつきのオマケ

ステラ様って……

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 みんながプライム家に集まった日の晩餐の後で、男性陣はそのままお仕事の話を、女性陣は赤ちゃん…リチャードくんを囲んでいろんな話をして楽しんでいました。

「そう言えばスザンヌ様はどうしてテリア様を追いかけてたの?」

 他愛のない話の流れで?ステラ様が私に聞いてきた。
 ぇ?それ聞いちゃいます?そりゃ気になりますょね?話を聞くと私のせいで婚約がなくなったはずなのにその原因は他の男を追いかけてたなんて…。

「あ~…それが……」

 私が二人の婚約発表を聞いて自分はもうお兄様のお嫁さんになれないと落ち込んだこと、その現実が辛くて学園に逃げて、そこで偶々テリア様と縁ができたことで一瞬・・自分の運命の相手王子様だと思ったこと、仲良くはなったものの蓋を開けてみると『イルマ大好き』を拗らせかけた残念王子だったこと、イルマさんに突っかかったのは初めて見かけたはずなのに『私、この人のことをこの人の同級生以上に色々知ってるとか気持ち悪い状態じゃない!』と思って他にもイライラが溜まってた事もあって八つ当たりしちゃったことなんかを話すとなぜか皆さんに慈愛の眼差しを向けられてしまいましたわ。

「アイツ…ただのヘタレかと思ってたらバカなヘタレだったのね」

 ステラ様の辛辣な言葉がアミールに向けたものとは思わず私はただただ今の状況に首を傾げてしまっていました。

「あの婚約発表はね、私も知らなかったのよ」

 ステラ様が話し始めた。まぁ政略的な物ならそんなこともあるんだろうとは思うけど…。

「で、あの発表の翌日に婚約者になったはずの男が来て『自分には昔から妻にすると決めてた女性がいるからあなたとの婚約は無かったことにしてほしい』って言ってきたの。私だってオプシーに自分を意識してもらうために頑張ってるトコだったからその提案は喜んで受けたわ。でもイマイチ私を気にかけてくれないオプシーを逃がさないために無理矢理婚約を結ばされたのに私はお飾りにして自分の愛する女性を愛人として迎えると言われたって泣きついたの。後はまぁ思い通りになったわね」

 やっぱりメリッサさんの家系はなんだか凄いのね。

「で、こっちはうまく行ったけどメリッサこの子からあなたが学園の人気者を追いかけてる筆頭だって聞いて、もしかしてあの男、自分だけの一方的な想いであなたを無理矢理手に入れようとしてるのかと思って問い詰めに行ったら告白すらしてない、相手は自分を兄と慕ってるだけだっていうじゃない。だからちょっと発破をかけようと思って学園であなたが他の男性に想いを寄せてるって話をしたのょね~」

 色々頭が追いつかない中で、お兄様が、私がテリア様を追いかけてたことを知ってると言う言葉だけが胸に刺さってしまった。

「そしたら少しは焦るんじゃないかって……あら?スザンヌ様?大丈夫?ご💦ごめんなさい💦不快な思いをさせちゃったわね💦」

 ステラ様が慌ててるけど私にはなぜ慌ててるのかわかってなかった。
 するとさっきまで寝てた赤ちゃんリチャードくんがあぅあぅと私に手を伸ばしてきた。
 私が抱っこすると小さな手を私の顔に当てて「うーあぅーやぁ」と頬を撫でる様な仕草をする。
 その手が濡れるのを見て私は初めて自分が泣いてることに気がついた。

「その、あの男がウジウジしてたから『アンタがモタモタしてるから他の男に取られるのよ』って言いたかっただけで….その……ごめんね💦ホントごめんなさい💦」

 あぁ、ステラ様は私がステラ様の話のせいで泣いたと思って謝ってくれてるんだわ。

「ぁ、いえ、私こそごめんなさい。いきなり泣いちゃうだなんで…。どうも妊娠してから大した事ない事で涙が出ちゃう様になってて……」
「ぁ、あ~わかりますわかります!悲しくも嬉しくもないのに気が付いたら涙が出てたりするんですよね~!私も妊娠中、安定するまでは悪阻かそんな状態かみたいな感じでテリア様がオロオロしてたんですよ!」

 イルマさんがフォローして下さいました。本当に悲しいとか酷いと思ったとかではないんです。だってお兄様から婚約の話を聞いたその日のうちに、私はお兄様のお嫁さんになれないと思って学園に逃げたことやそこでテリア様に縋ろうとしたことなど全部話していますもの。今更そんな話を聞いたところでお互い知ってることだもの。なのに涙が止まりませんの……。
 皆さん…特にステラ様がオロオロとしているところにノックの音が響きました。

「イルマ、リチャードリッチーを連れて行って良いかな?その…女性だけの時間に赤ん坊がいてはなかなか大変だろうし、みんながろくに顔を見せて貰ってないって文句を言っててね……」

 まさかとは思いますが……

「もしかしてアミール主人がリッチーは男の子だからとか言い出したんじゃ……?」

 テリア様が曖昧に苦笑わらったことが何よりの証拠ですわね。

「すっ💦すみません💦 もう!ホント昔っから私の周りに自分以外の男の子が近付くのを嫌がって、私の実の兄さえも牽制しちゃうんです💦 本当にごめんなさい💦」

 テリア様にも他の皆様にも申し訳なくて謝っていると何処からかプッと吹き出したような笑い声と呆れたような声が聞こえてきました。

「謝られてるのか惚気られてるのか判らないわね」

 声の主はステラ様でどうやらそれは私に向けての言葉だったみたいで……?ぇ?のろ…け?

「のろ…け?…ぇ?の……」
「はいは~い!ステラ姉さんはちょっと黙る、スージーは考えるのやめる、OK?」

 メリッサさん天の声が聞こえたので考えることを放棄しました。どうやらステラ様もメリッサさんには逆らえないのか口を押さえて黙りました。

「じゃあリッチーを男性陣にちゃんとお披露目して貰いましょうね」

 イルマさんが明るく言ってリッチーくんをテリア様に預けました。その後は本当に女性だけでまたお話の続きを…。

「そう言えば姉さん、オプシオン様は学園の先輩だったのよね?どうやって知り合ったの?」
「もしかしてステラ様も専門課程に?」

 メリッサさんとイルマさんがステラ様に聞いた言葉を受けて、確かに同じ学園に在籍していても年齢が違えば接点はないに等しく、私やイルマさんのように専門課程へ編入して初めて年の違う人と知り合うようになる程度、知りたいと思ってしまいましたわ。

「……前に何度かメリッサに聞いてたけどホント、貴方ってわかりやすいのね」

 何故かそう言ってステラ様に笑われました。どうしてかしら?

「ね?キラッキラでしょ?」

 メリッサさんがそれに答えます。何がキラッキラなのかしら?

「あ~わかります。スザンヌ様は隠し事が出来ないですよね~」

 イルマさんは二人の話がわかってるみたい。ぇ?私だけ仲間はずれ?

「あ~、違うのよ?スザンヌ様が可愛いって話だから仲間はずれになってるわけじゃないのよ?」
「そうそう、スージースージーうるさいと思ってたけどこりゃスージースージー言っちゃうのもわかるわ~って納得してたの」
「ぇ?そんなに聞かされてたの?あ!もしかしてスージーがテリア君に惚気を聞かされてたのって『因果応報』ってやつじゃない?」
「え?なにそれ!そんな面白いことになってたの!?」

 気が付くと私とイルマさんそっちのけでステラ様とメリッサさんが盛り上がってますね。賑やかなお二人を眺めているとまた眠気が……。

「スザンヌ様、眠くなってきたのでは?お腹の子のためにもお二人は放っておいて私達は休ませて頂きましょう?」

 そう言ってイルマさんは二人に先に寝る事を伝えに行きました。私はそのままゆっくり、ゆっくり、この賑やかで穏やかな空気に包まれながら眠り幸せへと落ち浸っていきます。

 それでは皆様、おやすみなさいませ♡


    ~ Fin ~
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