ヒナタとツクル~大杉の呪い事件簿~

夜光虫

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四日目

大杉神社(集会所4)

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「お見事でしたな。流石は木助さんのお孫さんと言った所ですかな」
「貴方は……」

 発表を終えた月琉と陽向の元に、お巡りさんがやってくる。その表情はとても穏やかだ。

「若い頃の木助さんを見ているかのようでしたよ。あの人も集落で揉め事がある度、面倒も厭わず仲裁に動いてくれました」
「そうだったんですか?」
「ええ、面白きこともなき世を面白く――それが木助さんの口癖でした。あの人は自らが道化になって笑われることも厭わず、集落のために尽くしてくれました。偉大な方でしたよ。そのお孫さんであるアンタたちも立派です」
「いやぁ、そう言われると照れますね」

 お巡りさんはじっちゃと交流があったらしい。二人にじっちゃの昔話を色々としてくれる。

「これでこの集落はまた前を向いて歩いていけそうですな」
「ええそうなって欲しいと思います」
「なりますとも。集落に直接関係ない若いもんがこれだけ頑張ってくれたんですからの」

 陽向と月琉の頑張りを労い、お巡りさんは優しく微笑む。

「よそ者、若者、変わり者。田舎に必要な三要素と言われます。今回のアンタたちの活躍を見て、つくづくそう実感しましたよ」

 お巡りさんの言葉に、陽向はにんまりと笑う。自分の弟は確かに変わりもんだと思う。

「確かに月琉は変わりもんだもんね。超のつくほどの」
「それを言うなら陽向もだろ」
「アタシは普通よ、フ・ツ・ウ!」
「JKになっておねしょする奴は絶対に普通じゃ――ぐふっ」
「黙れコロすぞ」

 余計なことを口走った月琉は、鳩尾に鋭いパンチを食らうことになった。悶絶してそのまま倒れこむ。乙女を怒らせると怖い。

「ほっほっほ。若いもんは元気があっていいですなぁ」

 お巡りさんは愉快そうに笑いながら去っていった。

「何はともあれ、よかったわね月琉」
「ああそうだな」

 集落の皆が憑き物が落ちたかのような表情で帰宅していくのを見て、陽向と月琉は心底嬉しく思うのであった。
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