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四日目

大杉神社(集会所1)

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「俺のタイピングスキルを見せてやるぜ。そりゃ」

 ばっちゃの家に戻った月琉は、一連の怪事件のレポートを急ぎとりまとめる。集落の皆の前で発表するつもりらしい。

「すみません、神前さんのお宅でしょうか? 越村の孫なのですが実は……」

 一方の陽向はというと、ばっちゃの家の電話を使い、関係者と連絡をとり、月琉が発表する場を作らせてもらうべく奔走していた。

 交渉の結果、祭り後の集落会議という形で、夜七時から大杉神社の施設を使わせてもらうことができた。

「月琉、集落の全戸に連絡しといたよ。小さな集落だから連絡するのはわりと楽だったわ。どれだけ人が集まるかはわからないけど、事件に関係してる人は必ず来てくれるって。大じっちゃと大ばっちゃも月琉が何かするなら絶対に来るってさ」
「そうかサンキュ。それじゃ張りきらないとだね」

 陽向の報告に、月琉は高速でタイピングしながら答える。

 本気モードの月琉は頼もしい。眼鏡をくいっと上げる仕草が憎らしい。

 姉でなかったらもしかしたら惚れていたかもしれないと、陽向は素直に思った。奇人めいた行動さえ改めてくれれば本当に自慢の弟なのに、と心底惜しく思う。

「陽向、ちょっと海人君のとこに顔出してくるよ。竹上の倅さんの証言が本当か確かめてくる」
「私も行こっか?」
「いや俺だけで行ってくるよ。その方が話しやすいかもしれないし」
「そうわかったわ」

 レポート作りの途中、月琉は海人の所に顔を出す。ほどなくして帰ってくる。

「月琉、海人君、どうだったの?」
「ああ、竹上の倅さんの証言通りだった。やはり海人君は嘘をついていたよ。そして俺の考えてた通りの理由だった。詳しいことは発表の場でわかるよ」
「そっか。なら安心ね」

 海人の所から戻った月琉は、どこか清々しい顔をしていた。裏取りもできて、全ての謎が解けたらしい。

「さあてラストスパートだ。一気にまとめるぞ」
「頑張ってね」

 夜に向け、再びレポート作りに励む月琉。やることのなくなった陽向は、ばっちゃと語らい、畑のお手伝いをしたりして気楽に過ごす。

「月琉、七時までにはなんとかなりそう?」
「ああ問題ないよ。元々、今までに得た情報とかは毎晩レポートに残してたからね。その文章を流用して書き足せばわりと簡単に済むよ」
「そっか。アンタのいかれた趣味も、たまには役に立ちそうじゃないの」
「いかれた趣味は余計だよ」

 陽向の軽口に、月琉は肩を竦める。

「二人とも、腹が減っちゃ戦はできねぇ。飯さ食えぇ」
「ありがとばっちゃ」
「サンキュばっちゃ。よし、飯にすっか」

 滞在最後の夜ということで、豪華な飯が並ぶ。メインディッシュは厚めのお肉で作ったしょうが焼きである。ばっちゃの作るしょうが焼きは絶品だ。

「「いただきます!」」

 陽向と月琉は、ばっちゃの真心に感謝しながら、美味しく頂いた。

「ごちそうさん!」

 飯を食った後、月琉はレポートの最終仕上げに取りかかり、程なくして終える。

 そして陽向と月琉、ばっちゃも含めた三人は、いち早く大杉神社入りし、発表の準備にとりかかった。月琉は機材の準備等を、陽向は会場にパイプ椅子や机を設置し、ばっちゃは来訪者向けのお茶の用意をする。

 粗方の準備が整う頃になると、続々と人が集まり出してきた。

「幽霊の謎が解けたって本当か?」
「あん子は誰じゃ?」
「木助どんの孫らしいぞ」
「おお、あの大杉集落一の奇人だった木助の孫か! 確かに似ておる!」
「こりゃ楽しみじゃ!」

 月琉が木助の孫だと知れ渡ると、集落の老人たちは、まるで昨日の祭りの続きが始まるかのように盛り上がる。

 死んだじっちゃは集落で人気者だったらしい。その孫の月琉が何かをすると言うので、異様に盛り上がっているようだ。まるで死んだ木助が帰って来て集落のために何かしてくれてるように思っているらしい。

 やがて、大じっちゃ大ばっちゃ、隣家一同、杉葉の両親、竹上親子――さらには昨日の警官までも集まってくる。全ての役者が揃ったところで、発表会は始まる。
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