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三日目
大杉集落公民館2
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「ああ竹上の親爺さん。どうも」
「やあどうも皆さん」
首に手ぬぐいをかけた、小柄な年配の男がやってくる。
公民館にいたお年寄りたちはその男としばし会話をすると、ちょうど良い区切りだとばかりに解散して家に帰っていった。世間話を終えた男は、自分の仕事に戻る。
「ねえ月琉、今……」
「ああ竹上と言ったな」
話を聞くに、たった今しがた公民館にやって来たあの男は、竹上の親爺らしかった。
つまりあの精神的に問題があり、一連の怪事件の裏にいるのではないかとも噂されている竹上の倅――その父親ということになる。
「特に問題ある風には思えないわね」
「まあ問題あるらしいのは息子の方だしな。息子の方も見た目は普通だったろ」
スーパーですれ違った竹上の倅は若かった。息子の年齢から考えれば、竹上の親爺の歳はそんなにいっていないはずであるが、ずいぶん老け込んでいるように思えた。色々と心労でも抱え込んでいるのかもしれない。
「よいしょっ、こらしょ」
竹上の親爺は軽トラの荷台に何かしらの荷物を積み込んでいた。どうやら公民館の倉庫に保管してある祭りで使う道具やらを載せて運んでいるようだった。
「ふぅ、後は運ぶだけだな。その前に一息つこうか」
仕事が一段落すると、竹上の親爺は休憩をとる。ほとんど誰もいなくなった公民館の自販機スペースの前でお茶を購入し、一息つき始めた。
「話を聞くチャンスだ。行ってみよう」
「ちょっと月琉!」
月琉は陽向の返事など聞かずに、迷わず竹上の親爺の所へと向かっていった。陽向は慌ててその後を追っていく。
「こんにちは」
「ん、君たちは?」
「竹上さんですよね? 俺たち、越村の孫です」
「ああ越村さんちのお孫さんかい」
竹上の親爺は見知らぬ若者二人に話しかけられて戸惑っている様子だったが、越村の孫だと知ると、朗らかに笑った。
「昨晩花火やってましたよね?」
「ああ倅が好きでね」
「倅さん、花火、そんなにお好きなんですか?」
「元々は死んだかかあが好きでね。昔、夏にはよく息子と三人でやってたもんさ」
竹上の親爺は、亡き妻と息子の花火に纏わるエピソードを話していく。どこか寂しげであるものの、大事な思い出のようだった。
「倅さん、めちゃくちゃ子ども好きって聞きましたけど本当ですか? すぐちょっかい出しちゃうとか」
「ちょっと月琉!」
ストレートに尋ねる月琉。大いに焦る陽向であったが、当の竹上の親爺は苦笑するのみであった。
「確かにウチの倅は子ども好きだよ。でも変な意味はないと思うよ。過疎地ってこともあって、息子は昔から同年代の子ともあんまり遊べなかったからか、人との距離感があんまり掴めなくてね。仲良くなるには何か物をあげないと、とか思っちゃうんだよ。昔はそれでもよかったのかもしれないけど、今のご時勢、小さい子にそれやっちゃ駄目だよね。それで集落のもんに怒られたりしてるんだ。ただでさえウチの子は問題あると思われてるしね」
竹上の親爺は、息子が小児性愛者ではないと暗に否定する。生い立ちなどの影響で、普通のコミュニケーションがとりづらいだけだと言う。
身内の言葉だから完全に信用はできないものの、竹上の親爺は正直に話していると、二人には思えた。
「倅さんが刃物振り回して小動物殺したらしいって本当ですか? 集落の誰かが言ってましたよ」
「ちょっと月琉!」
月琉はとんでもないことまでストレートに聞き始める。またまた焦る陽向であったが、当の竹上の親爺は困ったように苦笑するだけだった。
月琉は竹上の親爺の性格を見極め、直裁的に聞いても怒らなさそうだと判断して、それでここぞとばかりにどんどん聞いているらしかった。隣家から聞いた情報であることなどは巧妙に隠し、どこかから風の便りで聞いた曖昧な情報だ、などとすっ呆けながら尋ねるのは巧妙である。
自分の興味に一直線。目的のためなら多少強引な手段でも貫き通す。やはりウチの弟はサイコパスの気があるのかもしれないと、陽向は内心で戦いた。
「確かに、ウチの倅、昔は病気のせいで刃物持って暴れたこともあったよ。でも動物を傷つけたりはしなかったよ。脳の病気で幻覚が見えてね。それを追い払うため、刃物を持って暴れたんだ。誤って俺が切られたことはあったよ。これがその時の傷ね」
竹上の親爺は作業着の袖をまくると、腕についた大きな傷跡を見せてくる。
「流石にこのままだと俺が危ないと思ったから警察呼んで、事情話して、精神病院に入る手配とかもしてもらったんだよ。今は新薬のおかげかかなり良くなって、三年前に退院したんだ。そこらへんの事情は越村のおばあちゃんにも説明したよ。忘れてるかもしれないけどね」
竹上の親爺の言ったことを、ばっちゃは曖昧にだが覚えていたのだろう。だから昨日の夜、ばっちゃは竹上の倅のことを庇い立てたのだと、陽向と月琉は思った。
息子の病状を淡々と語る竹上の親爺。妻を早くに亡くし、問題のある息子を抱えた苦労人という印象が拭えない。とてもじゃないが悪い人間には思えなかった。
「迷惑をかけることはないと思うけど、万が一ウチの倅が迷惑をかけたらごめんね。息子は祭りには行かないと思うから安心して楽しんでよ」
「そうですか。お話聞かせていただきありがとうございました。すみません、色々と失礼なことも聞いちゃって」
「いや構わないよ。はっきりと聞いてくれた方が楽だよ。黙っていて裏であることないこと色々言われる方が嫌だからね」
竹上の親爺は苦笑すると、残っていたお茶を一気に飲む。それから仕事に戻っていった。軽トラに乗り込み、積んだ荷物を運んでいく。その背には哀愁が漂っていた。
竹上の親爺が去った後、陽向と月琉は近くの椅子に座り話し込む。
「竹上の親爺さんの話を聞くに、倅さん、悪い人には思えないわね。隣家の話はデタラメで、ばっちゃの言うことが正しかったってこと?」
「まあ身内に対するバイアスは少なからずあるだろうから完全に信用できないけどね。でも、花火や猫の件に関しては隣家の完全なる思い違いだったようだね」
「ああ鉄砲撃ちたくて花火やっているって話ね。実は亡き母親との思い出に浸る鎮魂の花火だったのね」
「うん。そして精神的な病気に関してだが、暴力衝動が湧き起こる病気というよりは、幻覚から逃れるためだったみたいだ。薬で幻覚は抑えられているらしい、となると、竹上の倅が鶏、お堀の生物、猫殺しの犯人という説は薄くなったね。そんな猟奇性は持ってないみたいだ」
竹上の倅の病状などについて知れたことで、月琉は竹上の倅猟奇殺人犯説を否定する。
「ということは誰が鶏とかを殺したの?」
「それは普通に考えて野生動物の仕業だろうさ。大じっちゃも言ってただろ、獣のせいだって。猫の事件もそうさ。警察がDNA鑑定した結果、獣のDNAが検出されたって言うんだから間違いないだろ。隣家は竹上の倅がヤバい奴ってバイアスがかかってるから、獣の仕業だとは素直に思えなくなってるんだよ」
「お堀の事件はどうなのよ?」
「お堀の事件は未だ原因不明だね。でも水生動物殺す目的でやったのとは違うかもよ? 野生動物が除草剤の容器を倒したという可能性もあるし、人間の犯行だとしても参拝者か誰かが誤って倒した可能性もある。悪意があっての事件だと思うのは早計だよ」
「じゃあ杉葉ちゃん殺しは?」
「やっぱ警察の見立て通り、自殺だろう。お隣さんや杉葉ちゃんの母親はああ言ってるけど、竹上の倅さんがやったとは思えないよ。仮に殺人だとしても、少なくとも犯人は竹上の倅ではないと思う。当然警察は竹上の倅に関しては徹底的に調べたんだろうさ。俺たち以上の材料を集めて、それで白だって判断したんだろうから、やっぱ犯人じゃないよ。人間が死んだ事件は警察だっていつも以上に真剣に捜査するはずさ」
「うーん……」
月琉の話に、陽向はいまいち納得できない。いやほとんど納得はできるのだが、杉葉の事件だけは納得できなかった。
幽霊となって現れた杉葉は無念さを訴えていた。彼女の死には絶対に何か裏があると思えてならない。陽向の中に眠る第六感がそう告げていた。
「私はやっぱり杉葉ちゃんは自殺じゃないと思う。だってあの子、あんな苦しそうな顔してアタシに訴えてきたのよ? 『オネエチャン、クルシイ、タスケテ』って。今思い出してもぞっとする表情だったわよ」
「知らないよそんなの。俺は杉葉ちゃんの幽霊なんて見てないんだし」
「そうよね、アンタはグースカ寝てたもんね! 鈍感人間の馬鹿月琉は!」
「おいおい、キレるなよ」
「ふん!」
幽霊なんて知らないと言う月琉に、陽向は自分でも理不尽だと思いつつキレる。
杉葉の思いを感じられるのが自分だけしかいない。自分の分身とも言える双子の弟が共感してくれないというのは、とてももどかしかった。それでやり場のない感情をぶつけるかの如く、月琉に当たってしまうのだった。
「まあここでこれ以上議論しても仕方ないさ。もっと情報を集めないと。お盆祭りで色々と聞き込みをしよう。祭りではみんな酒を飲んで気が緩くなってるだろうし、聞き込みしやすいだろうしさ」
「ええそうねそうしましょう」
そろそろ夕暮れだ。ばっちゃの家で夕飯を食べて、それからお盆祭りに繰り出そう。そこで新たな情報を集めるのだ。
二人は言い争いをやめると、キリのいいところで引き上げることにした。
「やあどうも皆さん」
首に手ぬぐいをかけた、小柄な年配の男がやってくる。
公民館にいたお年寄りたちはその男としばし会話をすると、ちょうど良い区切りだとばかりに解散して家に帰っていった。世間話を終えた男は、自分の仕事に戻る。
「ねえ月琉、今……」
「ああ竹上と言ったな」
話を聞くに、たった今しがた公民館にやって来たあの男は、竹上の親爺らしかった。
つまりあの精神的に問題があり、一連の怪事件の裏にいるのではないかとも噂されている竹上の倅――その父親ということになる。
「特に問題ある風には思えないわね」
「まあ問題あるらしいのは息子の方だしな。息子の方も見た目は普通だったろ」
スーパーですれ違った竹上の倅は若かった。息子の年齢から考えれば、竹上の親爺の歳はそんなにいっていないはずであるが、ずいぶん老け込んでいるように思えた。色々と心労でも抱え込んでいるのかもしれない。
「よいしょっ、こらしょ」
竹上の親爺は軽トラの荷台に何かしらの荷物を積み込んでいた。どうやら公民館の倉庫に保管してある祭りで使う道具やらを載せて運んでいるようだった。
「ふぅ、後は運ぶだけだな。その前に一息つこうか」
仕事が一段落すると、竹上の親爺は休憩をとる。ほとんど誰もいなくなった公民館の自販機スペースの前でお茶を購入し、一息つき始めた。
「話を聞くチャンスだ。行ってみよう」
「ちょっと月琉!」
月琉は陽向の返事など聞かずに、迷わず竹上の親爺の所へと向かっていった。陽向は慌ててその後を追っていく。
「こんにちは」
「ん、君たちは?」
「竹上さんですよね? 俺たち、越村の孫です」
「ああ越村さんちのお孫さんかい」
竹上の親爺は見知らぬ若者二人に話しかけられて戸惑っている様子だったが、越村の孫だと知ると、朗らかに笑った。
「昨晩花火やってましたよね?」
「ああ倅が好きでね」
「倅さん、花火、そんなにお好きなんですか?」
「元々は死んだかかあが好きでね。昔、夏にはよく息子と三人でやってたもんさ」
竹上の親爺は、亡き妻と息子の花火に纏わるエピソードを話していく。どこか寂しげであるものの、大事な思い出のようだった。
「倅さん、めちゃくちゃ子ども好きって聞きましたけど本当ですか? すぐちょっかい出しちゃうとか」
「ちょっと月琉!」
ストレートに尋ねる月琉。大いに焦る陽向であったが、当の竹上の親爺は苦笑するのみであった。
「確かにウチの倅は子ども好きだよ。でも変な意味はないと思うよ。過疎地ってこともあって、息子は昔から同年代の子ともあんまり遊べなかったからか、人との距離感があんまり掴めなくてね。仲良くなるには何か物をあげないと、とか思っちゃうんだよ。昔はそれでもよかったのかもしれないけど、今のご時勢、小さい子にそれやっちゃ駄目だよね。それで集落のもんに怒られたりしてるんだ。ただでさえウチの子は問題あると思われてるしね」
竹上の親爺は、息子が小児性愛者ではないと暗に否定する。生い立ちなどの影響で、普通のコミュニケーションがとりづらいだけだと言う。
身内の言葉だから完全に信用はできないものの、竹上の親爺は正直に話していると、二人には思えた。
「倅さんが刃物振り回して小動物殺したらしいって本当ですか? 集落の誰かが言ってましたよ」
「ちょっと月琉!」
月琉はとんでもないことまでストレートに聞き始める。またまた焦る陽向であったが、当の竹上の親爺は困ったように苦笑するだけだった。
月琉は竹上の親爺の性格を見極め、直裁的に聞いても怒らなさそうだと判断して、それでここぞとばかりにどんどん聞いているらしかった。隣家から聞いた情報であることなどは巧妙に隠し、どこかから風の便りで聞いた曖昧な情報だ、などとすっ呆けながら尋ねるのは巧妙である。
自分の興味に一直線。目的のためなら多少強引な手段でも貫き通す。やはりウチの弟はサイコパスの気があるのかもしれないと、陽向は内心で戦いた。
「確かに、ウチの倅、昔は病気のせいで刃物持って暴れたこともあったよ。でも動物を傷つけたりはしなかったよ。脳の病気で幻覚が見えてね。それを追い払うため、刃物を持って暴れたんだ。誤って俺が切られたことはあったよ。これがその時の傷ね」
竹上の親爺は作業着の袖をまくると、腕についた大きな傷跡を見せてくる。
「流石にこのままだと俺が危ないと思ったから警察呼んで、事情話して、精神病院に入る手配とかもしてもらったんだよ。今は新薬のおかげかかなり良くなって、三年前に退院したんだ。そこらへんの事情は越村のおばあちゃんにも説明したよ。忘れてるかもしれないけどね」
竹上の親爺の言ったことを、ばっちゃは曖昧にだが覚えていたのだろう。だから昨日の夜、ばっちゃは竹上の倅のことを庇い立てたのだと、陽向と月琉は思った。
息子の病状を淡々と語る竹上の親爺。妻を早くに亡くし、問題のある息子を抱えた苦労人という印象が拭えない。とてもじゃないが悪い人間には思えなかった。
「迷惑をかけることはないと思うけど、万が一ウチの倅が迷惑をかけたらごめんね。息子は祭りには行かないと思うから安心して楽しんでよ」
「そうですか。お話聞かせていただきありがとうございました。すみません、色々と失礼なことも聞いちゃって」
「いや構わないよ。はっきりと聞いてくれた方が楽だよ。黙っていて裏であることないこと色々言われる方が嫌だからね」
竹上の親爺は苦笑すると、残っていたお茶を一気に飲む。それから仕事に戻っていった。軽トラに乗り込み、積んだ荷物を運んでいく。その背には哀愁が漂っていた。
竹上の親爺が去った後、陽向と月琉は近くの椅子に座り話し込む。
「竹上の親爺さんの話を聞くに、倅さん、悪い人には思えないわね。隣家の話はデタラメで、ばっちゃの言うことが正しかったってこと?」
「まあ身内に対するバイアスは少なからずあるだろうから完全に信用できないけどね。でも、花火や猫の件に関しては隣家の完全なる思い違いだったようだね」
「ああ鉄砲撃ちたくて花火やっているって話ね。実は亡き母親との思い出に浸る鎮魂の花火だったのね」
「うん。そして精神的な病気に関してだが、暴力衝動が湧き起こる病気というよりは、幻覚から逃れるためだったみたいだ。薬で幻覚は抑えられているらしい、となると、竹上の倅が鶏、お堀の生物、猫殺しの犯人という説は薄くなったね。そんな猟奇性は持ってないみたいだ」
竹上の倅の病状などについて知れたことで、月琉は竹上の倅猟奇殺人犯説を否定する。
「ということは誰が鶏とかを殺したの?」
「それは普通に考えて野生動物の仕業だろうさ。大じっちゃも言ってただろ、獣のせいだって。猫の事件もそうさ。警察がDNA鑑定した結果、獣のDNAが検出されたって言うんだから間違いないだろ。隣家は竹上の倅がヤバい奴ってバイアスがかかってるから、獣の仕業だとは素直に思えなくなってるんだよ」
「お堀の事件はどうなのよ?」
「お堀の事件は未だ原因不明だね。でも水生動物殺す目的でやったのとは違うかもよ? 野生動物が除草剤の容器を倒したという可能性もあるし、人間の犯行だとしても参拝者か誰かが誤って倒した可能性もある。悪意があっての事件だと思うのは早計だよ」
「じゃあ杉葉ちゃん殺しは?」
「やっぱ警察の見立て通り、自殺だろう。お隣さんや杉葉ちゃんの母親はああ言ってるけど、竹上の倅さんがやったとは思えないよ。仮に殺人だとしても、少なくとも犯人は竹上の倅ではないと思う。当然警察は竹上の倅に関しては徹底的に調べたんだろうさ。俺たち以上の材料を集めて、それで白だって判断したんだろうから、やっぱ犯人じゃないよ。人間が死んだ事件は警察だっていつも以上に真剣に捜査するはずさ」
「うーん……」
月琉の話に、陽向はいまいち納得できない。いやほとんど納得はできるのだが、杉葉の事件だけは納得できなかった。
幽霊となって現れた杉葉は無念さを訴えていた。彼女の死には絶対に何か裏があると思えてならない。陽向の中に眠る第六感がそう告げていた。
「私はやっぱり杉葉ちゃんは自殺じゃないと思う。だってあの子、あんな苦しそうな顔してアタシに訴えてきたのよ? 『オネエチャン、クルシイ、タスケテ』って。今思い出してもぞっとする表情だったわよ」
「知らないよそんなの。俺は杉葉ちゃんの幽霊なんて見てないんだし」
「そうよね、アンタはグースカ寝てたもんね! 鈍感人間の馬鹿月琉は!」
「おいおい、キレるなよ」
「ふん!」
幽霊なんて知らないと言う月琉に、陽向は自分でも理不尽だと思いつつキレる。
杉葉の思いを感じられるのが自分だけしかいない。自分の分身とも言える双子の弟が共感してくれないというのは、とてももどかしかった。それでやり場のない感情をぶつけるかの如く、月琉に当たってしまうのだった。
「まあここでこれ以上議論しても仕方ないさ。もっと情報を集めないと。お盆祭りで色々と聞き込みをしよう。祭りではみんな酒を飲んで気が緩くなってるだろうし、聞き込みしやすいだろうしさ」
「ええそうねそうしましょう」
そろそろ夕暮れだ。ばっちゃの家で夕飯を食べて、それからお盆祭りに繰り出そう。そこで新たな情報を集めるのだ。
二人は言い争いをやめると、キリのいいところで引き上げることにした。
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