吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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七章

マッシュ村調査依頼3/10(買春)

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「さて行くか」
「ええ楽しみですわ。ごはん、ごはん♪」

 蝙蝠状態のエリザを胸元に隠して村長宅を抜け出し、指定された場所に向かう。そこは村外れにある一軒の家だった。

「ここだよな?」
「ええ間違いないと思いますわ」

 村外れにあるにしては寂れておらず外装もちゃんと整えられている。おそらく村を訪れた有力者や旅人にエロいサービスを提供するために、村長が整えているのだろう。

 人目につきにくい場所にあるのは旅人への配慮というよりは、夜伽をする村女への配慮かな。夜伽に向かう姿を他の村人に見られたくないだろうからな。見られたらどんな噂話をされるかわかったものではない。このような僻地の村では噂話が唯一の娯楽のようなものだからな。

「部屋が温かいな。村長が暖を入れておいてくれたのか。配慮、痛み入るぜ」
「あのジジイ、できる爺さんですわね」

 部屋に入ると暖かかった。村長が事前に準備していてくれたらしかった。用意がいいぜ。

「おお、庭つきか。風流だな」
「ご主人様、少し出てみましょう」
「ああそうだな」

 庭に出て少し歩くと、美しい峡谷が一望できた。眼下に広がるは色づいた木々、切り立った崖のような岩肌、そして透き通るような清流だ。

 うん、最高の景色だな。

「スキルを切るとよく見えんな」
「今宵は月も出ておりませんし、流石にこの暗さでは吸血鬼の眼でも無理かと」

 俺もエリザも何故暗いのに外の景色がわかるかというと、【夜目】というスキルを持っているからだ。【夜目】を発動すると、夜でも昼間のような視界に切り替えることができる。

 他にも、【獣の視覚】というスキルのおかげで視力が強化されているし、吸血鬼のボディなので暗がりでの視界は普通の人間よりは良好だ。

 俺たちは夜でも昼間のような景色を楽しめるってわけだ。普通の人なら味わえない景色を味わえて風流できる。チートって最高だ。

「ヨミト様、そちらに行かれますと危ないですよー。奥は崖となっておりますのでー」
「はーい、わかってます村長さん」

 村長が到着したらしく家の中から声がかかった。真っ暗闇の庭で佇む俺を訝しげに見ていたので、夜目が利くので景色を見ていたと言い訳しておく。

「ヨミト様、こちらが今宵夜伽をしてくださる者たちです」

 村長の脇には三人の女が控えていた。いずれもスタイルの良い美人だ。

 娼婦用の衣装じゃなくて普段着のままである。こういう村ならではって感じがするな。

「それではごゆるりと」

 女たちを紹介し終えると、村長はにやっと笑い、立ち去っていった。今夜はお楽しみですね、って感じの笑みだ。

 さあ今夜もお楽しみだ。まずは自己紹介といこう。

「ナン。よろしくー」

 最初の子は活発な村娘って感じの子だった。エッチなことが好きで自他共に認めるヤリマンらしい。

「この村の若い男衆は私に頭あがんないのよね~。だって私がいなきゃ童貞ばっかだもん」

 ナンは、この村の同年代の男子はほとんど自分が筆下ろしさせた、と豪語しているから驚きだ。

 昼間会った村長の孫のハンターの童貞を奪ったのも彼女らしい。とんでもない女の子だね。

 彼女は小遣いが欲しくてここに来たのだとか。親の金に頼らずアルバイトして稼いでるなんて偉い娘さんだね。とんでもない子だけど偉い子だ。

「ニマルです。よろしくお願いします」

 二番目は妙齢の品の良い感じのマダムだった。メグミンほどではないがおっぱいがデカい。尻もデカくてとんでもない身体をしている。

 彼女は先月旦那が魔物に襲われて死んでしまったらしい。ド田舎なので他に稼げる仕事がないのだろう。それでここに来たようだ。

 なんとも哀れなことだ。不幸に染まった血の味はどんなものかね。楽しみだな。

「えと君のお名前は?」
「……」

 最後の子はかなり若かった。若いわりには早熟なのかとんでもねえ身体つきをしている。

「もしもーし、聞いてる?」
「……」

 話しかけても何も答えない。正確には答えようとしているのだが答えられないといったところか。彼女は頷いたり、口を開けて必死に何かを訴えようとしていた。

「その子は喋れないんです。生まれつきのバッドスキル持ちだとかで。名前はツーイです」
「へえそうなんだ」

 喋れないツーイの代わりに、ニマルが説明してくれた。

 ツーイの家は村の外れにあったのだが二年ほど前の土砂災害でやられたらしい。一家は彼女を残して全滅したそうだ。なんという悲劇だ。

 それで彼女は村長の家に居候させてもらってたらしいが、身を立てるために自ら今宵の夜伽を志願したのだとか。

 めっちゃ偉い子だね。苦難にめげずに前を向いて生きる素晴らしい女の子だ。

 ちなみに今日が初めての客とりらしいから、たぶん処女だろう。やったぜ。

 処女の血は最高だ。俺の胸元にいるエリザも感極まってプルプルと震えているようだ。

「さあ三者三様の境遇を持つ美しくも哀れな女たちよ。今宵は吸血鬼と共に優しい夢を見るがいいさ」

――スキル【魅了】発動。

 スキルを発動して、三人を虜にする。三人は瞬く間に虚ろな表情となり、吸血鬼に供されるだけの贄となった。

 さて無防備な三人の血をたっぷりと味わわせてもらおうか。

「エリザ、レディーファーストで処女を譲ってあげよう」
「よろしいのですか?」
「ああ。俺はまず、この一番とんでもない女の子の血から頂くことにするよ。たぶん一番不味そうだし、不味そうなのから徐々にステップアップして美味い血を飲むことにする。そうすれば、最後まで楽しめるだろ?」
「美味しいものは最後にとっておくというパターンですか。それもアリですわね」

 俺たちは吸血鬼らしく邪悪に笑いあう。

「処女の血が美味しいからって吸いすぎて弱らせるなよエリザ? ちゃんと俺の分も残しておけよな」
「ええ勿論ですわ。そんな人のことを食いしん坊みたいに言わないでくださいまし」
「悪い悪い(実際食いしん坊だろうが)」

 エリザに処女を譲り、俺は紹介された順(ナン、ニマル、ツーイの順)で吸血することにした。

「さてどんなもんやら」

 まずはハンターの童貞を奪ったと豪語するとんでも女(ナン)の血を頂いていく。

 淫乱で血が腐っているかと思いきや……。

(あぁ、これは悪くないぞ。いやむしろ良い!)

 ナンは流されるように淫楽に興じているわけではなく、カーネラたちと同じように自らの意思で淫楽に興じ、性愛に命を賭けているといった感じの子か。普通の人とは違った感性だが、誇り高く生きているようだ。誇り高い人間の血は美味いな。

「とんでも女の血だからどんなもんかと思ったが、とんでもないくらい美味しいぞ。こりゃ得したな」

 今の状況を例えるなら、夕飯に出てきたコロッケがスーパーとかで売っているお芋オンリーで出来た激安冷凍コロッケで大して美味しくないだろうなと思いつつ何気なく口に運んでみたら実はお肉がたっぷり入った専門店の美味しいコロッケだった――そんな感じだ。

 めっちゃ得した気分になれるな。最高である。

「さてお次はこのマダムか」

 続いてニマルという名のマダムの血を頂いていく。

(んん! いい感じに煮詰まってるな!)

 雛にも稀な美人マダム――ニマル。先月まで夫婦共々この田舎村で慎ましくも幸せな毎日を送っていたのだろう。それが魔物の害に遭い、一気に地獄に落ちてしまった。

 たった一ヶ月しか経ってないが、環境の変化が血の性質に大きく影響しているようだ。地獄を見たことで魂が腐り始めている。だがまだ完全には腐っていない。そんな味がする。

 魂が腐る寸前の血は一番美味いんだ。救われたら澄んだ味になってしまうし、救われなかったらそのまま完全に腐敗していってヘドロのような味に変わってしまう。

 この味は今だけしか味わえない、貴重な血だ。処女の血より、ある意味貴重かもしれない。玄人好みの血だね。

 不幸というスパイスの効いた味、ご馳走さんです。

「さて、最後はメインディッシュの娘だね」

 最後は声の出せない乙女だ。バッドスキルを持っているという話だが、さてどんな味やら。

(んぁ、たまらん! やはり処女の血は格別に美味い!)

 まっさらで澄んだ味。苦境にあるが何も知らないがゆえに澄んだままだ。

 おまけに若々しく生命力に溢れている。レベルが低いのが残念だがそれを加味しても美味いと断言できる。

 美味いばかりか、滋養にも満ちている。雄のししゃもより、子持ちししゃもの方が美味くて栄養があるのと一緒だ。女の方が子供を育てる機能がある分、栄養豊富だ。

 童貞の血も美味いが、やはり処女は格別だな。処女のままレベリングさせてもっと美味しい血に育てたい。そして永遠に味わっていたいくらいだな。

 美味すぎるので吸い過ぎないように注意しよう。うっかり吸い過ぎて殺しちゃうと可哀想だからね。

「ぷはぁ、最高!」
「ふふ、乙女の血はやはり格別ですわねご主人様。この娘たちも例の如くスカウトするのですか?」
「ああ。この村に拠点が築ければスカウトしてもいいかもな。機会があればスカウトしよう」
「楽しみですわ」

 エリザとあれこれ話し合いながら、三人の血を味わった。

 レベリング的に大した成果はなかったが、美味しかった。マッシュ村の娼婦の血も素晴らしかったな。
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