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六章
港町イティーバ11/19(マミヤの本性)
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「けっ、何がマミヤ様だべ! この町のギルドの依頼も満足に処理できねえ、クソザコのくせに調子こいてんじゃねえべよッ!」
どこかで聞いた声だ。そう思って声のする方を向くと、そこには昼間出会ったカイリという青年がいた。
(何やってんのあの子……)
俺は飲みかけの酒を噴きそうになった。どうやらあの子、小心者だけど泥酔すると気が大きくなるタイプらしい。
「邪魔すんな田舎者! とっとと出て行け田舎者!」
「おらは田舎者じゃねえ! 生まれも育ちもこのイティーバの浜っこだべ!」
「その顔と喋りが田舎臭いって言ってんだ馬鹿野郎! それにマミヤ様を誹謗中傷するな!」
「おらは事実を言っただけだっぺ! マミヤはこの町の問題も解決できねえ無能だべ! 英雄なんかじゃねえ! 無能冒険者だっぺよ!」
マミヤの取り巻きがカイリの暴言に反発し、店内はざわざわと騒がしくなる。すぐに怖いお兄さんたちが飛んで来て、騒ぎを起こしたカイリを外へと連れ出していった。
「無粋な輩のせいで興が削がれました。今宵はここらへんで失礼します」
そんなことを言って、マミヤは壇を下りていく。
アンコールを期待していた聴衆からは溜息が一斉に漏れ、そして騒ぎを起こしたカイリに対する怨嗟の声で溢れる。
「ベートはここで待機。俺は少しマミヤを追いかけてみる」
「はい、お気をつけて」
俺はすぐさまトイレに駆け込むとそこで鼠に変化する。そしてマミヤのいる楽屋へと忍び込んだ。
「――あの田舎者がぁッ! この僕を侮辱しやがって!」
楽屋ではマミヤが荒れていた。椅子とか蹴っ飛ばしていた。楽器を叩きつけて破壊したりもしている。相当頭にきているらしい。
「スイ、耳を貸せ」
マミヤがマネージャーの女の子を呼び寄せてヒソヒソと話し始めたので、俺は何事かと思ってスキル【獣の聴覚】を発動して盗み聞きすることにした。
そうしたら物騒な話が聞こえてきた。
「スイ、あの男を始末しろ。僕に舐めた態度をとったあの田舎者を決して許すな。生きていることを必ず後悔させろ」
「はいかしこまりました」
どうやらマミヤはカイリに馬鹿にされて、相当頭にきているらしかった。ぶっ殺したいほどらしい。
まあ田舎弁で煽られたら腹立つ気持ちはわからんでもないが、ちょいと過剰制裁すぎるだろう。いきなり殺すなんてね。酷いよ。
まあお客様のマナー違反(犯罪行為)にぶちギレてお客様殺しちゃう俺が言うのもなんだけどさ。
「すぐに部隊を差し向けますマミヤ様」
「ああ頼んだよ。僕は屋敷に戻って休む」
マネージャーの女の子の名は“スイ”というらしい。美人だけど表情のない子だね。お人形さんみたい。
スイはマミヤの指示を受けると、すぐに人を呼び寄せる。程なくして男二人が現れた。
「お前たちに指示を下します。マミヤ様を侮辱した先ほどの田舎者を闇討ちして始末してきなさい」
「「ははっ」」
スイが指令を下し、男たちは神妙な態度でそれを受け入れる。
「行くぞ!」
「おう、マスターを侮辱した田舎者に死を!」
スイの命令を受けた男二人が、勇んで店を出て行く。カイリの後を追って始末するつもりなのだろう。
(マスターを侮辱か……。マスターとはダンジョンマスターのことに違いない。となると、マミヤ自身がダンジョンマスターで確定かな?)
俺の存在に気づいてわざわざブラフを撒いているということではないな。マミヤたちは俺の存在に気づいてはいない。
(重要情報をゲットできたな。マミヤなる人物がダンジョンマスターとしてこの町に根を張っており、そしてそいつが今回のこの町の異変に関わっていると見て間違いないようだ)
今までに得た情報を合わせると、そう推測できる。
原因不明の不漁騒ぎと海賊騒ぎだったが、ダンジョンマスターが関わっていたとはね。
(おっと、それはそうと)
考えに耽っていたが、すぐに思い返す。
このままだと、あのカイリって子が殺されてしまうな。さてどうするか。
(別に助ける義理はないけど、あの男たちから確かめたいこともあるし、ついでに助けてあげようか)
そう思った俺はベートと共にすぐに店を出て、男たちの後を追った。すぐに男たちに追いつき、気づかれないように気配を消しながら尾行したのであった。
どこかで聞いた声だ。そう思って声のする方を向くと、そこには昼間出会ったカイリという青年がいた。
(何やってんのあの子……)
俺は飲みかけの酒を噴きそうになった。どうやらあの子、小心者だけど泥酔すると気が大きくなるタイプらしい。
「邪魔すんな田舎者! とっとと出て行け田舎者!」
「おらは田舎者じゃねえ! 生まれも育ちもこのイティーバの浜っこだべ!」
「その顔と喋りが田舎臭いって言ってんだ馬鹿野郎! それにマミヤ様を誹謗中傷するな!」
「おらは事実を言っただけだっぺ! マミヤはこの町の問題も解決できねえ無能だべ! 英雄なんかじゃねえ! 無能冒険者だっぺよ!」
マミヤの取り巻きがカイリの暴言に反発し、店内はざわざわと騒がしくなる。すぐに怖いお兄さんたちが飛んで来て、騒ぎを起こしたカイリを外へと連れ出していった。
「無粋な輩のせいで興が削がれました。今宵はここらへんで失礼します」
そんなことを言って、マミヤは壇を下りていく。
アンコールを期待していた聴衆からは溜息が一斉に漏れ、そして騒ぎを起こしたカイリに対する怨嗟の声で溢れる。
「ベートはここで待機。俺は少しマミヤを追いかけてみる」
「はい、お気をつけて」
俺はすぐさまトイレに駆け込むとそこで鼠に変化する。そしてマミヤのいる楽屋へと忍び込んだ。
「――あの田舎者がぁッ! この僕を侮辱しやがって!」
楽屋ではマミヤが荒れていた。椅子とか蹴っ飛ばしていた。楽器を叩きつけて破壊したりもしている。相当頭にきているらしい。
「スイ、耳を貸せ」
マミヤがマネージャーの女の子を呼び寄せてヒソヒソと話し始めたので、俺は何事かと思ってスキル【獣の聴覚】を発動して盗み聞きすることにした。
そうしたら物騒な話が聞こえてきた。
「スイ、あの男を始末しろ。僕に舐めた態度をとったあの田舎者を決して許すな。生きていることを必ず後悔させろ」
「はいかしこまりました」
どうやらマミヤはカイリに馬鹿にされて、相当頭にきているらしかった。ぶっ殺したいほどらしい。
まあ田舎弁で煽られたら腹立つ気持ちはわからんでもないが、ちょいと過剰制裁すぎるだろう。いきなり殺すなんてね。酷いよ。
まあお客様のマナー違反(犯罪行為)にぶちギレてお客様殺しちゃう俺が言うのもなんだけどさ。
「すぐに部隊を差し向けますマミヤ様」
「ああ頼んだよ。僕は屋敷に戻って休む」
マネージャーの女の子の名は“スイ”というらしい。美人だけど表情のない子だね。お人形さんみたい。
スイはマミヤの指示を受けると、すぐに人を呼び寄せる。程なくして男二人が現れた。
「お前たちに指示を下します。マミヤ様を侮辱した先ほどの田舎者を闇討ちして始末してきなさい」
「「ははっ」」
スイが指令を下し、男たちは神妙な態度でそれを受け入れる。
「行くぞ!」
「おう、マスターを侮辱した田舎者に死を!」
スイの命令を受けた男二人が、勇んで店を出て行く。カイリの後を追って始末するつもりなのだろう。
(マスターを侮辱か……。マスターとはダンジョンマスターのことに違いない。となると、マミヤ自身がダンジョンマスターで確定かな?)
俺の存在に気づいてわざわざブラフを撒いているということではないな。マミヤたちは俺の存在に気づいてはいない。
(重要情報をゲットできたな。マミヤなる人物がダンジョンマスターとしてこの町に根を張っており、そしてそいつが今回のこの町の異変に関わっていると見て間違いないようだ)
今までに得た情報を合わせると、そう推測できる。
原因不明の不漁騒ぎと海賊騒ぎだったが、ダンジョンマスターが関わっていたとはね。
(おっと、それはそうと)
考えに耽っていたが、すぐに思い返す。
このままだと、あのカイリって子が殺されてしまうな。さてどうするか。
(別に助ける義理はないけど、あの男たちから確かめたいこともあるし、ついでに助けてあげようか)
そう思った俺はベートと共にすぐに店を出て、男たちの後を追った。すぐに男たちに追いつき、気づかれないように気配を消しながら尾行したのであった。
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