吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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五章

盗賊団の根城調査任務6/8(捜索開始)

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 今朝方、ガイアたち竜殺しの面々は宿を発った。

 その前の明け方近く、俺とエリザは眠りこけているガイアたちから血を頂いておいた。

 その結果、ガイアからスキル【火吸】を得た。【火吸】は火炎系の攻撃を吸収できるようになるスキルだ。火炎系の攻撃のダメージを食らわなくなるなんて、かなり嬉しいスキルが手に入った。

 これでまたクリスマスツリーに縛りつけられて火刑に処されるようなことがあっても、ノーダメージで済むな。

 いやそんなことあって欲しくはないけどさ。肉体面ではノーダメージでも、精神面のダメージは半端ないからあれ。

 話が脱線したので元に戻そう。

 竜殺しの面々からは、他にも【挑発】、【隠密】、【奇襲】といったスキルを手に入れることができた。

 【挑発】は相手を煽れる確率が高まり、【隠密】は隠密行動時に気配が悟られにくくなり、【奇襲】は奇襲時の戦闘能力が向上する――といったスキルだった。

 いずれもあって困ることはないスキルばかりで嬉しい。これでまた強くなることができた。この調子でこれからも頑張るとしよう。

「それじゃ、ガイアの情報通り、ヒムの森方面を探索することにしようか」
「はい」

 早朝、飯を食った俺たちは、行動を開始する。宿屋を出て、村の北側から森へと入る。

「この川の向こう側がヒムの森のようだね。こっち側がトロの森か」
「ですね。少し川幅が広くて渡り辛いですね。もっと上流の方に向かいましょうか。アルゼリア山脈寄りに」
「そうだね」

 パープルの提案通り、川沿いに上ってく。やがて川幅が狭くなっているところを見つけたので、渡ることにする。そうやってヒムの森へと移動する。

「エリザ、足元、気をつけてね」
「お気遣いありがとうございますわ」

 川へと足を踏み入れる。それほど水深は深くない。冬の川だけにめっちゃ冷たいぞ。

「ヨミトさん。奇襲するなら川を渡る時は絶好の機会です。油断なさらないように」
「了解了解」

 心配性なパープルが進言してくる。

 奇襲はないと思うけどね。スキル【獣の聴覚】などを使って近くの気配を探った限り、盗賊たちの気配らしいものは感じられなかったからね。

 まあパープルは俺やエリザが多種多様なスキルを持っていることなど知らないので、心配して進言してくるのも無理ないことだけどさ。

 予想通り、特に何事もなく川を渡りきり、ヒムの森方面へと移動することができた。

「おお、ヒムの森っぽくなってきたね」
「ホントですね」

 川辺近くの森に違いなどなかったのだが、しばらく進むと植生がまるっきり変化してくる。

 ここからは完全にヒムの森って感じだ。以前見たことのあるジョーア村近辺の森と似通っている。

 土地の産生する魔素により、植生などは違ってくるらしい。ここからは夜になればヒムの虫も現れるのだろう。冬だから夏とかよりは活性は低いらしいが。

「では今日はこの巨木を目印に動いていこうか」
「はい」

 目印となる目標物を定め、そこを拠点にして周囲をくまなく探していくことにした。

「ゴブリン! 右から10! 左から7!」

 先行するレイラがそう叫んだ。

 モンスターのお出ましらしい。力の差がわからないとは馬鹿なゴブリンだな。

――ドカッ、ボコッ。

「はい。ノビル」
「了解」

 俺とエリザが倒しても意味はないので、いつもの如く弱らせるだけにして、ノビルたちに止めをささせることにした。ノビルたちを少しでもレベリングさせておこう。

「ヨミトさんとエリザさんって、なるべく殺生しない戒律でも守ってるんですか? やっぱりエビス教関係者なんじゃ?」
「だから坊主じゃないっていつも言ってるじゃないかパープル君」

 パープルがモンスターに止めを刺さない俺たちのことをいつもの如く胡乱な目で見てくるが、適当に言っておく。

 その後、ゴブリンの他にオーク、スモールベア、蝙蝠、ビッグラット――色んなモンスターたちが襲ってきたが、特に問題もなく退けることができた。まあ楽勝だね。

 昼食は討伐したオークの肉を使い、エリザがお肉サンドとスープを作ってくれた。スキル【料理】持ちということもあって最高に美味しかった。

 エリザの手料理を食べて元気一杯になった俺たちは午後からも探索を続けた。

「――ここは?」

 探索を続け、日も陰りそうになる頃。そろそろ撤収かと考えていると、怪しげな洞窟を発見した。周囲には人が手を加えたような形跡がある。

「盗賊のアジトの可能性がありますね。探ってみましょうか」
「うん、そうしよう。じゃあパープル君とノビル、お願いね」

 小柄な二人を先行させ、洞窟内を探る。

 まあスキル【獣の聴覚】等を使った感じじゃ、人がいる気配はまったくないがな。

「誰もいないようだな」
「ええ。ですが盗賊たちが塒に使っていたのは間違いないようですね」

 洞窟には案の定誰もいなかった。

 だが生活跡があったので、盗賊たちが拠点にしている場所の一つと見て間違いはなかった。本拠地ではなく、仮拠点か何かだろう。

「あの変な置物って転移装置ですかね? 何でこんな所に?」

 レイラはそう言うと、変なトーテムポールみたいな置物を指差した。

 見覚えのあるアイテムだ。先の鋼等級昇級試験の第三次試験の際にも見かけたし、ホウの村でのスライム捕獲ミッション(二章参照)の際にも見たことがある。

 あの時見たものと似たようなトーテムポールが、盗賊の仮拠点の奥に置いてあった。

「盗賊たちは転移魔道具を使用しているということか」
「まさか、転移系魔道具には商業ギルドが秘匿している極秘技術が使われているんですよ?」
「別に盗賊たちが技術に精通して製造しているわけじゃないでしょ。どっかからパクってきたのを流用して利用してるんじゃないの?」
「まあ確かにその可能性はなくないですね。転移系魔道具は高価ですが、わりと広く使われていますし、流出してもおかしくありません。この前の鋼等級試験でもギルド側が用意してくれてましたからね」

 盗賊たちが転移系魔道具を使用している可能性を指摘すると、パープルは渋い顔で頷く。

「この転移装置は回収してギルドに納品及び報告しておくか。それ以外は破壊して焼き払っておこう」
「わかりました」

 盗賊たちに利用されて村に被害が出ては困るので、ここの拠点は潰しておくことにする。

 転移装置を地面から引き剥がして回収した後、拠点に枯れ木や草を敷き詰めて油を撒く。

「そんじゃメリッサよろしく」
「あいよ」

 メリッサが洞窟の外から中に向かって火炎魔法を放つ。洞窟内は瞬く間に燃え上がっていった。

「破壊完了っと」

 洞窟内の人工物は何もかも消えてなくなり、自然そのままのものと変わらなくなった。時間をかけて再整備しない限り、この洞窟を拠点として利用することは不可能だろう。

「それじゃ、今日のところは撤収しようか」
「そうですね。日も暮れますし」

 こうして一日目の冒険が終わった。成果は、盗賊団の仮拠点の一つを潰し、転移装置を回収しただけであった。

 でも初日の成果としてはまずまずかな。土地勘のまったくない中で拠点の一つを見つけられたのは幸いだ。

 ガイアの事前情報があったおかげだな。幸先いいぞ。



♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.12) 種族:吸血鬼(ナイト)
HP:1541/1541 MP:1384/1384
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】【毒牙】【硬化】
【舞踏】【鎚術】【怪力】【豚語】【咆哮】【免疫】【激励】【大食】【飢餓】【消化】
【暴食】【指揮】【弓術】【盾術】【騎乗】【魔笛】【血盟】【飼育】【夜目】【勇者】
【光矢】【集中】【雷撃】【短剣術】【堕落】【指嗾】【装備】【毒息】【火吸】【挑発】
【隠密】【奇襲】
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