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三章
新居祝い
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「それじゃ、これからの王都生活の門出を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
日がな一日、新居の整備に勤しんでいると日が暮れてきた。
夕飯は屋上で焼肉パーティーをすることにした。
「美味そう! いただきます!」
「いただきますわ」
市場で買ってきたお肉を鉄板に乗せてジュウジュウに焼いていく。食欲をそそる煙が立ち上っていく。
「んー、最高だね!」
焼きあがったので一口食べてみると、前世で言うところの豚肉や牛肉とさほど変わらない味がした。
買ってきた肉は、家畜化した魔物の肉だ。いずれも人工魔物の一種という扱いらしい。
ミッドロウの串焼き屋で食ったオーク肉やレストランで食ったブル肉も、正しくはオークやブルを家畜化させた人工魔物の肉だったらしい。
家畜化させただけあって、天然物の魔物肉より美味いようだ。肉屋の親父が言っていたので間違いないだろう。
豚肉や牛肉のような味わいの肉が市場に出回っているのは、転生者である俺からしたら有難い話だ。わざわざショップ機能を使わずとも、金さえあれば美味い肉を現地調達で手に入れることができるんだからな。
問題は前世の市場で売られているように安価ではないところだろうか。よほどの金持ちでない限り、毎日のように食っている人間はいないらしい。
俺も今回、大枚叩いて肉を買ったことで手持ち資金が尽きてしまったくらいだ。毎日食える人間なんて限られるのだろう。
家畜をダンジョンで飼育して増やすことができれば、美味しいお肉がいつでも食べられるな。まあ今のダンジョンは農業生産だけで手一杯で、畜産に力を入れている余裕はないがな。
現状後回しだが、余裕ができたらダンジョンで家畜を飼ってみたいところだ。食料確保という面でも、肉の販売で金を稼ぐという面でも、取り組む価値は十分にあるだろう。
「美味しいです。ブル肉なんて初めて食べました」
「俺も初めてだ」
「私はカーネラさんに何度か奢って頂きましたね」
「アタシもだ」
パープル、ノビル、レイラ、メリッサが肉を食いながら感想を漏らす。
そういえば、レイラたちにはまだショップ産の牛肉を食わせてなかったっけ。最近では、ショップ産のお肉といえば、豚肉か鶏肉ばかり買ってたからな。
ゴブリンを350匹以上も従えていると日々の食料確保も大変で、特に冬場は狩り採集などでダンジョン外からの食料調達ができなかったから、節約モードで過ごしていたからな。
「美味いか?」
「ワン!」
俺たちはもとより、昼間ペットショップで飼ったシヴァたちも、美味そうに肉を齧っている。俺が問いかけると、一声鳴いて尻尾をフリフリと振ってくれる。
ちなみにシヴァたちは焼いた肉も生肉もどっちもいけるらしい。生の内臓だっていける。流石魔物だ。
「あぁ……ペットにそんな高価な食べ物を……」
「まあまあいいじゃない」
シヴァたちに高価な家畜肉を与えていると、パープルが絶句といった表情でブツブツと呟いていた。
シヴァたちも今日から仲間の一員なんだから、ちゃんと差別せず美味いもん食わせてあげないとね。早く懐かせて眷属化させたいし、これは必要な経費というものだ。
「それにしても、こんな豪勢な食事を奢ってもらって大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。パープル君は気にしすぎだって」
家やペットや高価な食材を買ったりしたことで、昨日の夜まであった俺とエリザの手持ち資金30ゴルゴンは一日にして消えた。
真面目なパープルは、俺が一気にそんなに金を使ったことを気にしているようだ。
まあ何の問題もない。ダンジョンに戻れば100ゴルゴン近く残ってるしね。エレーナの宿とカーネラの宿からの定期収入もあるから、とりあえず当面の金には困っていない。
「でも……まだ王都で依頼の一つも受けていないのに……」
「王都ならミッドロウよりも仕事はいっぱいあるから大丈夫だよ!」
「だといいのですが……」
ダンジョンに大量の蓄財がある――そんなことは知らないパープルは、かなり心配しているようだ。とりあえず何の心配もないと胸を張っておこう。
「ご馳走様でした~」
「洗い物は僕がやりますので、皆さん休んで下さい」
楽しい夕食の時間はあっという間に過ぎ去る。
パープルが洗い物を引き受けてくれたので、俺たちは暇になった。
(洗い物なんてやる必要ないんだけどね……真面目すぎるというのも考えものだね)
本当はパープルに任せるよりもスライムに任せた方が効率的だ。パープルがやらなければ後でこっそりスライムに掃除させたのだがね。
奢ってもらったことを気に病んでか、彼は洗い物を率先して引き受けてしまったのだ。
申し出を断るのも変な話なので、俺はそのまま頷いてしまった。無駄なことをしているパープルには悪いが仕方ないね。
「せいっ!」
「やっ!」
ノビルとレイラは食後の腹ごなしということで、屋上で訓練を始める。
二人が訓練に励む様子を、俺とエリザは椅子にもたれかかりながら見ることにする。
メリッサは焼肉臭くなってもう一度風呂に入りたいとのことなので、ダンジョンへ一時帰還するこになった。
「ふぅふぅ……」
「そろそろ終わる?」
「あぁ」
ノビルとレイラは一生懸命に訓練に励み、三十分も経つ頃には、息を乱して汗ばんでいた。いくら気温が低いとはいえ、ノンストップで動き回っていたらそうもなるだろう。
「お疲れ二人共。綺麗にしてあげるよ」
――スキル【洗浄】発動。
天を見上げるようにだらしなく椅子にもたれかかって星を見ながら、俺は片手間にスキルを発動する。そうやって汗まみれの二人を綺麗にしてあげる。
「ありがとうございますヨミトさん」
「悪いなヨミト」
「二人共、洗浄魔法だけじゃ楽じゃないだろうから、ダンジョンの銭湯にも入っておいでよ」
「はいそうさせてもらいますね。普通、洗浄魔法だけでも贅沢すぎるんですけどね。おまけに毎日お風呂とか。花宿にいた時より贅沢。あはは、最近常識がおかしくなってる気がします」
「俺もだ。今日一日で二回も風呂に入ることになる。おまけに洗浄魔法もかけられたし。贅沢すぎるな」
「全然贅沢じゃないよ。福利厚生だよ。社員にそれを与えるのは経営者なら当然だよ」
「フクリコウセイが何なのかわかりませんが、ありがたく享受させてもらいますね」
「ああそうさせてもらう」
レイラとノビルは最近生活が贅沢すぎると苦笑しながら屋上を後にした。風呂くらいで大袈裟なもんだ。
「人の多い王都だけど、気温が低いからかまあまあよく星が見えるな」
「ええ、ですが一号店やエデン村の方が良く見えますわ」
「そりゃまあね。田舎だからなあそこは」
王都滞在二日目の夜だが、昨晩はゆっくり夜空なんか見てなかったから、夜空を眺めるのは今日が始めてである。
王都から臨む夜空はまあまあ綺麗だった。まあ田舎村のエデンとかの方が星がよく見えて綺麗だけどね。
夜空自体を見るのなら田舎のエデン村とかの方がいいが、ここ王都には王都にしかない魅力がある。視線を下げれば華やかな王都の夜景(主に商業地区の方)が見えるし、こういった光景はここでしか拝めない。
「エリザ。パープル君は下で皿洗いに夢中なようだし、星を見ながら吸血でもどうだい?」
「あら素敵なお誘いですわ是非に」
俺とエリザは夜空の下、抱き合う。そして互いの首筋に噛み付きあい、その血を啜った。
「ああエリザ。美味しいお肉を食べたからか、いつも以上にエネルギーに満ちているね」
「うふふご主人様の血液も美味しゅうございますわ。」
やはりエリザの血は格別だ。どんな美酒にも勝る極上の味がする。
これからこの極上の処女の血は、この王都という地でさらなる成長を果たして熟成されていくのだろう。
その血を味わうのが、今から凄く楽しみだな。
「「「乾杯!」」」
日がな一日、新居の整備に勤しんでいると日が暮れてきた。
夕飯は屋上で焼肉パーティーをすることにした。
「美味そう! いただきます!」
「いただきますわ」
市場で買ってきたお肉を鉄板に乗せてジュウジュウに焼いていく。食欲をそそる煙が立ち上っていく。
「んー、最高だね!」
焼きあがったので一口食べてみると、前世で言うところの豚肉や牛肉とさほど変わらない味がした。
買ってきた肉は、家畜化した魔物の肉だ。いずれも人工魔物の一種という扱いらしい。
ミッドロウの串焼き屋で食ったオーク肉やレストランで食ったブル肉も、正しくはオークやブルを家畜化させた人工魔物の肉だったらしい。
家畜化させただけあって、天然物の魔物肉より美味いようだ。肉屋の親父が言っていたので間違いないだろう。
豚肉や牛肉のような味わいの肉が市場に出回っているのは、転生者である俺からしたら有難い話だ。わざわざショップ機能を使わずとも、金さえあれば美味い肉を現地調達で手に入れることができるんだからな。
問題は前世の市場で売られているように安価ではないところだろうか。よほどの金持ちでない限り、毎日のように食っている人間はいないらしい。
俺も今回、大枚叩いて肉を買ったことで手持ち資金が尽きてしまったくらいだ。毎日食える人間なんて限られるのだろう。
家畜をダンジョンで飼育して増やすことができれば、美味しいお肉がいつでも食べられるな。まあ今のダンジョンは農業生産だけで手一杯で、畜産に力を入れている余裕はないがな。
現状後回しだが、余裕ができたらダンジョンで家畜を飼ってみたいところだ。食料確保という面でも、肉の販売で金を稼ぐという面でも、取り組む価値は十分にあるだろう。
「美味しいです。ブル肉なんて初めて食べました」
「俺も初めてだ」
「私はカーネラさんに何度か奢って頂きましたね」
「アタシもだ」
パープル、ノビル、レイラ、メリッサが肉を食いながら感想を漏らす。
そういえば、レイラたちにはまだショップ産の牛肉を食わせてなかったっけ。最近では、ショップ産のお肉といえば、豚肉か鶏肉ばかり買ってたからな。
ゴブリンを350匹以上も従えていると日々の食料確保も大変で、特に冬場は狩り採集などでダンジョン外からの食料調達ができなかったから、節約モードで過ごしていたからな。
「美味いか?」
「ワン!」
俺たちはもとより、昼間ペットショップで飼ったシヴァたちも、美味そうに肉を齧っている。俺が問いかけると、一声鳴いて尻尾をフリフリと振ってくれる。
ちなみにシヴァたちは焼いた肉も生肉もどっちもいけるらしい。生の内臓だっていける。流石魔物だ。
「あぁ……ペットにそんな高価な食べ物を……」
「まあまあいいじゃない」
シヴァたちに高価な家畜肉を与えていると、パープルが絶句といった表情でブツブツと呟いていた。
シヴァたちも今日から仲間の一員なんだから、ちゃんと差別せず美味いもん食わせてあげないとね。早く懐かせて眷属化させたいし、これは必要な経費というものだ。
「それにしても、こんな豪勢な食事を奢ってもらって大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。パープル君は気にしすぎだって」
家やペットや高価な食材を買ったりしたことで、昨日の夜まであった俺とエリザの手持ち資金30ゴルゴンは一日にして消えた。
真面目なパープルは、俺が一気にそんなに金を使ったことを気にしているようだ。
まあ何の問題もない。ダンジョンに戻れば100ゴルゴン近く残ってるしね。エレーナの宿とカーネラの宿からの定期収入もあるから、とりあえず当面の金には困っていない。
「でも……まだ王都で依頼の一つも受けていないのに……」
「王都ならミッドロウよりも仕事はいっぱいあるから大丈夫だよ!」
「だといいのですが……」
ダンジョンに大量の蓄財がある――そんなことは知らないパープルは、かなり心配しているようだ。とりあえず何の心配もないと胸を張っておこう。
「ご馳走様でした~」
「洗い物は僕がやりますので、皆さん休んで下さい」
楽しい夕食の時間はあっという間に過ぎ去る。
パープルが洗い物を引き受けてくれたので、俺たちは暇になった。
(洗い物なんてやる必要ないんだけどね……真面目すぎるというのも考えものだね)
本当はパープルに任せるよりもスライムに任せた方が効率的だ。パープルがやらなければ後でこっそりスライムに掃除させたのだがね。
奢ってもらったことを気に病んでか、彼は洗い物を率先して引き受けてしまったのだ。
申し出を断るのも変な話なので、俺はそのまま頷いてしまった。無駄なことをしているパープルには悪いが仕方ないね。
「せいっ!」
「やっ!」
ノビルとレイラは食後の腹ごなしということで、屋上で訓練を始める。
二人が訓練に励む様子を、俺とエリザは椅子にもたれかかりながら見ることにする。
メリッサは焼肉臭くなってもう一度風呂に入りたいとのことなので、ダンジョンへ一時帰還するこになった。
「ふぅふぅ……」
「そろそろ終わる?」
「あぁ」
ノビルとレイラは一生懸命に訓練に励み、三十分も経つ頃には、息を乱して汗ばんでいた。いくら気温が低いとはいえ、ノンストップで動き回っていたらそうもなるだろう。
「お疲れ二人共。綺麗にしてあげるよ」
――スキル【洗浄】発動。
天を見上げるようにだらしなく椅子にもたれかかって星を見ながら、俺は片手間にスキルを発動する。そうやって汗まみれの二人を綺麗にしてあげる。
「ありがとうございますヨミトさん」
「悪いなヨミト」
「二人共、洗浄魔法だけじゃ楽じゃないだろうから、ダンジョンの銭湯にも入っておいでよ」
「はいそうさせてもらいますね。普通、洗浄魔法だけでも贅沢すぎるんですけどね。おまけに毎日お風呂とか。花宿にいた時より贅沢。あはは、最近常識がおかしくなってる気がします」
「俺もだ。今日一日で二回も風呂に入ることになる。おまけに洗浄魔法もかけられたし。贅沢すぎるな」
「全然贅沢じゃないよ。福利厚生だよ。社員にそれを与えるのは経営者なら当然だよ」
「フクリコウセイが何なのかわかりませんが、ありがたく享受させてもらいますね」
「ああそうさせてもらう」
レイラとノビルは最近生活が贅沢すぎると苦笑しながら屋上を後にした。風呂くらいで大袈裟なもんだ。
「人の多い王都だけど、気温が低いからかまあまあよく星が見えるな」
「ええ、ですが一号店やエデン村の方が良く見えますわ」
「そりゃまあね。田舎だからなあそこは」
王都滞在二日目の夜だが、昨晩はゆっくり夜空なんか見てなかったから、夜空を眺めるのは今日が始めてである。
王都から臨む夜空はまあまあ綺麗だった。まあ田舎村のエデンとかの方が星がよく見えて綺麗だけどね。
夜空自体を見るのなら田舎のエデン村とかの方がいいが、ここ王都には王都にしかない魅力がある。視線を下げれば華やかな王都の夜景(主に商業地区の方)が見えるし、こういった光景はここでしか拝めない。
「エリザ。パープル君は下で皿洗いに夢中なようだし、星を見ながら吸血でもどうだい?」
「あら素敵なお誘いですわ是非に」
俺とエリザは夜空の下、抱き合う。そして互いの首筋に噛み付きあい、その血を啜った。
「ああエリザ。美味しいお肉を食べたからか、いつも以上にエネルギーに満ちているね」
「うふふご主人様の血液も美味しゅうございますわ。」
やはりエリザの血は格別だ。どんな美酒にも勝る極上の味がする。
これからこの極上の処女の血は、この王都という地でさらなる成長を果たして熟成されていくのだろう。
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