吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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三章

ペット購入

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 農業地区は長閑だが、昼間の商業地区は昨晩以上に喧しい場所だった。

「ご主人様。アイス食べたいですわ」
「アイスなんて売ってるんだな。流石王都だ」

 驚いたことに、市場ではアイスクリームが売り出されていた。
 もっとも、アイスという名前ではなく、“雪妖精の恵み”という名前で売られていたが。

 アイス屋の店員は、雪達磨みたいな姿形をしていたので見た時はギョッとした。

 モンスターかと思いきや、そうではないらしい。雪妖精といい、妖精族の一種のようだ。
 雪妖精はこの世界ではヒトに分類されていて、人間と同等の扱いがなされているらしい。魔物とは違うようだ。

 流石王都だ。色んな種族が住んでいるね。

 ちなみに男性型の雪妖精の風貌は雪達磨だが、女性型のそれは人間にかなり近かった。透き通るような白い肌を持ち、若干顔色の悪い、雪女って風貌の女の子だった。

 ゴブリンの雌を見た時も思ったが、この世界の幻想生物って、男性型は完全にファンタジーの化け物だが、女性型は人間に近いことが多いらしい。男性型は格好良くて女性型は可愛い系が多いかな。見ていて飽きないね。

「美味しいですわ」
「初めて食ったけど美味いな。高くて気軽には食えねえけどよ」
「うん、この世界のアイスも中々だね」

 アイスを購入し、三人で仲良くベンチに座って食べる。

 なかなか美味しい。エリザとメリッサもご満悦のようだ。女性はやはり甘いものが好きみたいだね。

 春にアイスは季節的に早い気がするが、歩き回って温かくなった身体にはちょうどいいおやつだった。美味しく食べてご馳走様だね。

 アイスを食べ終わった後、ペットショップへ向かう。

「おお。ここが異世界のペットショップか」
「可愛いですわね」
「こういうところ初めて入るな」

 ペットショップの檻の中には、見たこともない幻想生物たちがいっぱいいた。鳥っぽい生き物、猫っぽい生き物、犬っぽい生き物――様々だ。

「この犬は魔物なんですか?」
「半分正解で半分不正解といったところでしょうか。人工魔物というものです」

 ペットショップの店員のお姉さんに尋ねると答えてくれた。

「こちらの狼系統の人工魔物は、元は“ウルフ”という魔物だと聞いております。俗に犬と呼ばれていますが」

 この世界の長い歴史の中で、魔物を家禽化する実験が幾度となく繰り返されてきたらしい。
 その過程で生み出されたのが、“人工魔物”という生き物らしい。このペットショップにいるのは全てその人工魔物らしい。

 人工魔物は普通の魔物とは区別されるようだ。動物の犬猫ともまた違う存在らしい。

「じゃあその狼系統の人工魔物を三匹買おう。エリザ、メリッサそれぞれ一匹選んでくれ。見た目はどうでもいいが、なるべく賢そうで強そうなやつで頼むよ」
「わかりましたわ」
「おう」

 三十分くらいよく吟味する。
 俺は柴犬っぽいやつ、エリザはダックスフントみたいなやつ、メリッサは土佐犬みたいなゴツいやつを選んだ。

 名前はそれぞれシヴァ、ダックス、サカモトと名づけることにした。

 購入するのに合計5ゴルゴンもかかった。結構かかったがまあいいだろう。必要経費だ。

 眷属化すれば不老になって老化で死ぬこともないし、一生の付き合いになるな。よろしく三匹たちよ。

「餌は何を食わせればいいんです?」
「何でも食べられますよ。特に肉が好物ですね」

 犬みたいな見た目だが魔物なので何でも食べられるそうだ。前世の犬みたいに食わせちゃいけないものとかないみたいなので楽でいいな。

「ご購入ありがとうございました~」

 新たに家族となったワンコ三匹を連れてペットショップを後にする。

「あとは花屋だな」
「そうですわね。殺風景な庭を変えましょう」

 購入したばかりのワンコを散歩させつつ、花屋に向かう。そこで庭に植える用の花を適当に調達することにする。

「ペットを店内にいれるわけにもいかんし、エリザたちのセンスで適当に選んで買ってきてくれよ。俺はワンコを見ているから」
「わかりましたわ」

 待っている間、買ったばかりのワンコたちと戯れる。犬と戯れるのなんて何気に前世ぶりだな。楽しいぞ。

 花を調達した後、留守番するノビルや買出しに行ったレイラたちへのお土産を買ってから、俺たちは自宅に戻っていったのであった。
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