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第一部

23,水の大精霊との契約〔2〕

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 アルコールの研究をしている人間が何人かいた。
 もちろん、残らずまとめて雇い入れた。この国以外の出身者も多く、様々な地域のアルコールを集めて研究しているらしかった。

 この世界にやってきて驚いたことの一つに、あまりアルコールというものが重視されていないことがある。
 料理人のオーランに頼んでいくつか用意されたものを呑んだが、アルコールの度数が極端に低い、つまりジュースのようなものだったり、臭いが独特過ぎて問題があったり、中にはこれは明らかに呑んだら健康を著しく害するようなものだったりした。
 最後のものにいたってはメチルアルコールだろうとしか思えなかった。地球でもどこかの国で毎年多くの死者を出している、あのメチルアルコールなのだろう。この世界の人間にはあまり効かないのかどうかはわからない。

 学園が舞台のゲームだからあまりお酒の描写がないということなのか、描写のないものについては相変わらずガバガバ設定である。
 ただし、そこに活路がある。この世界にはそこにつけこむ逆転のチャンスがある。

 さらに言えば、実はこのアルコール類については、ヒロインは全く着目していない。
 川上さんと娘の話でもヒロインが食関係で手をつけたものはカレー粉などのスパイス、醤油や味噌などの調味料や発酵食品、プリンやケーキなどのスイーツなどだった。
 日本の高校生だから、そうなのかもしれない。
 しかし、私は日本の中年だった人間だ。若い時から付き合いがある。なじみのバーだってある。それなりにいろいろなものを紹介してもらって呑んできた実績がある。

 最初はアルコールの研究者はいないのではないかとも思っていたが、数は少ないが何人かいた。この発見はナイスだ。思わずロータスとハイタッチをしてしまった。
 それでも資金難で新しいものに挑戦できなかった人間が多かったが、そこはもうこちらに任せてもらって、とにかく「美味しい酒」と命令した。
 しかも、常温でも美味しい、冷えても美味しい、温めても美味しいものを作るように、目標を立てさせた。
 本来なら食事に合う酒、もしくは酒に合うつまみなんかも作るべきだが、今は単体で呑める酒を用意させるのが先決だ。

 まだ着手して3ヶ月であり、なかなか大量に作り出すこともできなかったが、それでも現時点で満足のいくものもできた。
 その一つにビールがある。
 のどごし爽やかのラガーもできたが、芳醇な香りのあるエールもできた。
 個人的には常温でもなかなか美味いエールの方が好きなので、水の大精霊にはこのエールを用意したのだった。このエールもラガーの材料もわが領地で大量に確保できるのがよい。軌道に乗ったら領地内で大量生産をするつもりだ。

 とにかく、まだ試行段階だが水の大精霊が喜んだというのなら、これは大成功だといえる。
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