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カルミア
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特別なメッセージ。
仕方なく、開いて見ることにする。
何が書いてあるのかまったく予想ができない。
第一、そんなものが届いた経験が一度もないのだ。
「リンカ~、どうしたの?朝ごはん出来てるよ?」
「うん、わかった。今行くよ、カルミア。」
カルミア、それは僕の母親代わりのような、姉代わりのような……そんな存在だ。
カルミアは番号で呼ばれるのが嫌いなようで、初めて会ったときから、
「私の事をカルミアって呼んでね。」
と言っていた。
その名前に意味があるのかどうか。
彼女に聞いても教えてはくれない。
本当の名前だって。
僕は、何故か名乗るように言われ、反射的に名乗ってしまったけど、名乗らず彼女のように洒落た名前を考えるべきだったのかもしれない。
僕はメッセージを見るのも忘れて下に降りた。
「なんでカルミアって名乗っているの?」
朝食の時に、何度も聞いてきた問を、今日も聞く。
余談だが、僕は彼女が好きだった。
恋愛的な意味で。
もしかしたら、親愛を愛情と履き違えているかもしれないが、それでも構わないほどに。
彼女は言った。
「私のカルミアって名前の意味と、本当の名前がわかったら、その時、私はリンカの物になってあげるよ。」
基本、約束を破らない彼女はそう言った。
僕の思いになぜ気づいていたのかは今でも謎だが。
だから、毎朝無駄だと思っていても聞いてしまう。
いつものように誤魔化されると思っていたのに、意外にも彼女は答えてくれた。
「カルミアは私にぴったりだからだよ。」
悲しげに笑う。
「花は綺麗で良いよね。何時だって輝いてる。けど、枯れた途端誰も見てくれないの。だから花は綺麗な内にたくさん愛されようとするんだよ。」
僕には意味が分からなかったけど、カルミアは言った後、何処かに行ってしまった。
いつも通り『仕事』に出掛けたのだろう。
今のご時世、仕事をするのは物好きのみ。
物好きだなぁ、なんて思いながら、僕は外に出た。
どうせだから、彼女の仕事場に行って見よう。
ところが、数歩歩いただけで、僕の意識は暗闇へと落ちていった。
後頭部に鈍い痛みを抱えながら…………
仕方なく、開いて見ることにする。
何が書いてあるのかまったく予想ができない。
第一、そんなものが届いた経験が一度もないのだ。
「リンカ~、どうしたの?朝ごはん出来てるよ?」
「うん、わかった。今行くよ、カルミア。」
カルミア、それは僕の母親代わりのような、姉代わりのような……そんな存在だ。
カルミアは番号で呼ばれるのが嫌いなようで、初めて会ったときから、
「私の事をカルミアって呼んでね。」
と言っていた。
その名前に意味があるのかどうか。
彼女に聞いても教えてはくれない。
本当の名前だって。
僕は、何故か名乗るように言われ、反射的に名乗ってしまったけど、名乗らず彼女のように洒落た名前を考えるべきだったのかもしれない。
僕はメッセージを見るのも忘れて下に降りた。
「なんでカルミアって名乗っているの?」
朝食の時に、何度も聞いてきた問を、今日も聞く。
余談だが、僕は彼女が好きだった。
恋愛的な意味で。
もしかしたら、親愛を愛情と履き違えているかもしれないが、それでも構わないほどに。
彼女は言った。
「私のカルミアって名前の意味と、本当の名前がわかったら、その時、私はリンカの物になってあげるよ。」
基本、約束を破らない彼女はそう言った。
僕の思いになぜ気づいていたのかは今でも謎だが。
だから、毎朝無駄だと思っていても聞いてしまう。
いつものように誤魔化されると思っていたのに、意外にも彼女は答えてくれた。
「カルミアは私にぴったりだからだよ。」
悲しげに笑う。
「花は綺麗で良いよね。何時だって輝いてる。けど、枯れた途端誰も見てくれないの。だから花は綺麗な内にたくさん愛されようとするんだよ。」
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いつも通り『仕事』に出掛けたのだろう。
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物好きだなぁ、なんて思いながら、僕は外に出た。
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