囚われの亡者

月夜

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Bloody hood A

確信と説明

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奥まで進んでいけば、そこに彼はいた。
鎖を弄びながら、何かを眺めている。
時々笑ったり、瞳から光を消して何かをつぶやいたりしながら。
やがて、僕に気がついたのか、僕の方を向いて、
「はじめまして、アテネです。多分存在は認知されていたと思うのですが、こうして会うのは初めてですね」
微笑んでいるが、多分本心から笑っている訳ではない。
僕にはこいつが何を考えているかがわからない。
理解する気もないけど。
まず、なぜこんな所に連れて来たのだろうか。
目的が全くわからない。
それも怖い。
それに、威圧感というのだろうか。
目が合うと、震えが止まらなくなる。
本能が、地に平伏しておけ、こちらの方は僕よりもはるかに身分が高い、なんて警鐘を鳴らしてくるが、僕は平伏すつもりなんて毛頭ない。
そんなこと絶対にしない。
体の震えを抑えるのに必死になっていれば、
「そうそう、どうしてあなたはここにいるのかわかりますか?」
なんて聞いて来た。
思わず体の震えも止まる。
あまりのことで思考が止まり、何も理解できなくなる。
いや、冷静になってもやっぱり理解できない。
何言ってるのかわからない。
お前が連れて来たからじゃないかなんて叫んでやろうにも、多分それは答えじゃないと思う。
だとしたら何が正解なのだろうが。頭を捻って考えている僕を見て、アテネは笑いながら、
「ごめんなさい、言葉不足でした。ここにいるというのはあなたの世界のことです。この空間も突き詰めて仕舞えばあなたの世界に存在しているわけですし」
アテネは僕がいる世界について聞いていたらしい。
けれど、どっちみち僕にはわからない。
だって、そんなの僕が知りたいくらいなのだから。
逆に神であるアテネの方が知っているのではないかと思う。
だって、そうだろう?
どんな作品も作り手の意図が存在する。
こんなものにしたいという根本的な意図が存在する。
けれどそれってやっぱり作り手本人しか知り得ないものなのではないだろうか。
どんなに予想したって、音から、文章から、絵から読み取ろうとしたって本人の本当の思いなんてわかるはずもない。
そもそも目の前にいる人間の本心すらわからない世界なのだ。
昨日まで笑い合っていた人物が次の日敵に変わっていたり、可愛がっているように見えても、それは自分に対する言い訳のようだったり。
なのになんで作品のみでその人物の意図が読み取れるというのだろうか。
いや、読み取れないだろう。
それと同じで創作物である僕らだって分からないのだ。
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