22 / 83
Bloody hood A
第2のスポット
しおりを挟む
僕を、選んで。
本当、僕って未練がましくて醜いなぁ、なんて思いました。
自分が本当に大嫌いだ。惨めで醜いままだから。
ご飯を美味しそうに頬張るマリィを見ながら、今日はどこに案内しようか、なんて考えます。
村長の家は最後でも別に構わないでしょう。
どこか面白い所は...
と考えていたら、あるものを思い出しました。
ある意味有名な井戸のことです。
早速そこに彼女を案内することにしました。
あそこは僕にとっては無価値で、意味のないものなのですが、もしかしたら、彼女にとってはなんらかの価値があるかもしれません。
「マリィ、行きましょう?」
マリィの手を引いて歩きます。
こうして歩いていると、今はもう戻ることが出来ない子供時代を思い出しますねぇ...
今も子供だと言われたらそうとしか答えられませんが。
純真で、ただ一人だけを信じて生きればよかったあの頃を。
そりゃあ先輩しか信じていないのは未だに変わっていませんが。
ほんのりと冷たい手を握りながら色々な場所を二人で歩き回って。
時々道に迷った時は、二人で何とか解決したりして。
時々危なかっしい動きをするあの人をフォローしながら探検して。
最初の頃は、僕が一方的にあの人に連れて行ってもらうだけでした。
外の世界に連れ出されて、一緒に甘い果実を頬張って。
その度に僕は、目を離したらすぐ溶けて消えてしまいそうな儚い先輩の手を必死に離さないようにして、逃がさないように一生懸命握り返して。
でも、今は?
愛しいあの人はもういない。
僕はあの人の手じゃなくて、別の、他人の手を握っている。
あの人の華奢な手じゃなくて、少し丸みの帯びた暖かい手を。
なんだかそれがすごくおかしくて、怖くて、なんだか泣きそうになりました。
これは違う。
僕が望んだのはこんな手じゃない。
これとは全く違う手を僕は望んだのに。
僕が欲しいのは先輩の手。
それ以外は要らないのに。
ほら、こんな些細なところでも僕の中の先輩の存在が犯されていく。
段々消えていく。
最近、なんだか先輩の事がぼやけてきているんです。
体温も、声も、話し方も、顔も、何もかも思い出せるのに。
なのにその全てが作り物のような、僕の想像のような気がしてならないのです。
本当は先輩なんていなくて、ずっと僕は一人だったんじゃないかって。
あいつと二人で狩りをしている間も、本当は僕が一人で怪物を狩っていたり、先輩と過ごした日々も全部妄想だったんじゃないかって、思ってしまう自分がいるのです。
本当、僕って未練がましくて醜いなぁ、なんて思いました。
自分が本当に大嫌いだ。惨めで醜いままだから。
ご飯を美味しそうに頬張るマリィを見ながら、今日はどこに案内しようか、なんて考えます。
村長の家は最後でも別に構わないでしょう。
どこか面白い所は...
と考えていたら、あるものを思い出しました。
ある意味有名な井戸のことです。
早速そこに彼女を案内することにしました。
あそこは僕にとっては無価値で、意味のないものなのですが、もしかしたら、彼女にとってはなんらかの価値があるかもしれません。
「マリィ、行きましょう?」
マリィの手を引いて歩きます。
こうして歩いていると、今はもう戻ることが出来ない子供時代を思い出しますねぇ...
今も子供だと言われたらそうとしか答えられませんが。
純真で、ただ一人だけを信じて生きればよかったあの頃を。
そりゃあ先輩しか信じていないのは未だに変わっていませんが。
ほんのりと冷たい手を握りながら色々な場所を二人で歩き回って。
時々道に迷った時は、二人で何とか解決したりして。
時々危なかっしい動きをするあの人をフォローしながら探検して。
最初の頃は、僕が一方的にあの人に連れて行ってもらうだけでした。
外の世界に連れ出されて、一緒に甘い果実を頬張って。
その度に僕は、目を離したらすぐ溶けて消えてしまいそうな儚い先輩の手を必死に離さないようにして、逃がさないように一生懸命握り返して。
でも、今は?
愛しいあの人はもういない。
僕はあの人の手じゃなくて、別の、他人の手を握っている。
あの人の華奢な手じゃなくて、少し丸みの帯びた暖かい手を。
なんだかそれがすごくおかしくて、怖くて、なんだか泣きそうになりました。
これは違う。
僕が望んだのはこんな手じゃない。
これとは全く違う手を僕は望んだのに。
僕が欲しいのは先輩の手。
それ以外は要らないのに。
ほら、こんな些細なところでも僕の中の先輩の存在が犯されていく。
段々消えていく。
最近、なんだか先輩の事がぼやけてきているんです。
体温も、声も、話し方も、顔も、何もかも思い出せるのに。
なのにその全てが作り物のような、僕の想像のような気がしてならないのです。
本当は先輩なんていなくて、ずっと僕は一人だったんじゃないかって。
あいつと二人で狩りをしている間も、本当は僕が一人で怪物を狩っていたり、先輩と過ごした日々も全部妄想だったんじゃないかって、思ってしまう自分がいるのです。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
【完結】わたしの娘を返してっ!
月白ヤトヒコ
ホラー
妻と離縁した。
学生時代に一目惚れをして、自ら望んだ妻だった。
病弱だった、妹のように可愛がっていたイトコが亡くなったりと不幸なことはあったが、彼女と結婚できた。
しかし、妻は子供が生まれると、段々おかしくなって行った。
妻も娘を可愛がっていた筈なのに――――
病弱な娘を育てるうち、育児ノイローゼになったのか、段々と娘に当たり散らすようになった。そんな妻に耐え切れず、俺は妻と別れることにした。
それから何年も経ち、妻の残した日記を読むと――――
俺が悪かったっ!?
だから、頼むからっ……
俺の娘を返してくれっ!?
ツギハギドール
広茂実理
ホラー
※グロ系統描写あります。苦手な方はご注意を
憧れてやまない同級生の死――
目の前で大事な友人を失った少女、斉藤初は、希望のない日々を過ごしていた。
彼女の心の拠り所はたった一つ……可愛らしい姿のプリンセスドールで。そのドールは、失われた同級生にそっくりだった。
そんなある日、友人の死に関わった人物が、無残な姿で命を落とす。一見事故かと思われた遺体のそばには、謎のドールが発見され、世間では亡くなった少女の呪いとして騒がれる始末。
命を落として尚も引き合いに出され、侮辱されるのか――我慢がならなかった斉藤初は、独自に事件を調査することを決意するが――
事故か自殺か他殺か。ドールの目撃情報とはいったい。本当に呪いが存在するのか。
ミステリーxサイコxサスペンスxホラーストーリー。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ぐちょべちょラ/惨酷の定義
握夢(グーム)
ホラー
意識が戻った時に記憶が無かった。動けない。目も見えない。
ただいえることは、おれは、……喰われていた!?
なぜこんなことになったのか。―――そしておれは一体何者なんだ!?
15分で読める、ミステリーテイストの強い、怖さ&残酷描写が軽めのライトホラーです。
阿修羅の道の十字路で
板倉恭司
ホラー
都内でも屈指の低偏差値高校に通う翔には、イジメられっ子の過去があった。未来に何の希望も持てず憂鬱な人生を送る彼が、些細な理由から何の興味もない修学旅行に参加する。あまりにも異様な同級生・明との接触から始まる恐怖の一夜。やがて、最凶の男が目覚める──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる