リンカネーション

月夜

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仮面を試しに顔に装着してみる。
急に、体が熱くなる。
(何これ....?何かに作り替えらているような.....)
「ありがとうございます、輪廻さん。全員蹴散らしますね。」
そういうと、俺の体は勝手に動いた。
まるで俺の意思など関係ないとでもいうように。
指先をパチンと鳴らせば即座に電流が流れる。
(まるで手品みたいだが....多分魔法だ。しかも、無詠唱で!?)
普通、何かしら唱えなければ魔法は発動しない。
無詠唱を実行するには、その魔法を完全に理解しなければいけないのだ。
なのに......
(まるで息を吸うように実行している......)
何なんだこの仮面は。
大体の敵は無双できた、はずなのに。
「ウガァァッァァッァッァア!!!!!!」
何かの叫び声が聞こえた。
くるりとふりむけば、何かが歩いてきている。
ぐちゃ、ぐちゃ、と生肉を落とすようなおとがする。
それは、人の形をしていた気がした。
顔の肉はそげおち、骨が見えかけていた。
目は窪んでいて、歯が抜け落ちかけている。
喉だと思われる部位からは、カヒュー、カヒュー、と音がしていた。
あぁ、化け物だ。
嫌悪感と、吐き気に襲われる。
おそらくそれは死体だ。
服装からして勇者たちの。
死体が動いている。
そんなこと起こらないはずなのに、起こってしまっている。
あぁ、どうしたらいいんだろう。
本に出てくるゾンビたちは、頭を打てば絶命する。
本当に効くのだろうか?
仮面はクルリと回るとこう呟いた。
「中身亡き者達よ、雷鳴にて消えよ」
辺りに雷が一斉に落ちる。
凄まじい爆音と強烈な光に、目を瞑りながら耳を抑えようとする。
なのに、体はまったく動かなくて、しかも、そんな衝撃にも何も感じないのだ。
目が眩んだり、鼓膜が破けても良さそうなのに。
その場には、黒こげになったゾンビ…いや、死体があった。
その死体を見つめながら、俺は思った。
何が起こっているんだ?
ここはただのダンジョンじゃなかったのか?
俺は今、目の前に転がるゾンビと同じになりかけていたのか?
カラン、と音を立てて、仮面が顔から落ちた。
仮面を手にもつ。
「えーっと、ぜ、全員蹴散らしましたよ...?」
遠慮がちな声と共に、仮面が光る。
「うわぁぁぁあ!」
俺は叫びながら仮面を落としてしまった。
「え!?あ、あの、急に落とすのだめです!僕壊れちゃいます!!」
慌てたような声と共に、目の前に男の子が現れた。
...そこは巨乳の美人とかじゃないのか...
まぁ、主語僕じゃ、それはないよな...
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