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四章 雪闇ブラッド

俺じゃない俺

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人では無いけど。
ロマンチストとかいうものではないから。
運命なんて自分の手で切り開かなきゃ意味がないと思っているからか。
そりゃあ逃れられないことなんてこの世には無限とあるけれど。
「それって理久からもらったの?」
「うん。この方が覚えやすいって。なんか闇奈に越されるか、とか言ってた」
すっと、指を離す。
少し気だるげな表情でそんな事を言う。
光が少し薄くなり、紫に染まる。
魔法陣の魔力が満たされると、魔法陣はその人の魔力の色に染まる。
綺麗な紫。
俺の好みの色。
とても綺麗な紫で。
紫ってどこか人を魅了して離さないような。
そんな魅力を持っているような気がする。
だから好き。
まるで俺みたいな気がするから。
黒い箱を取り出した人間は、その中にさっきの紙を入れる。
そして別の紙を取り出す。
箱の中には紙がぎっしり詰められている。
全部理久が準備したのだろう。
まるで恋文みたいだ。
全部全部この人間に当てた恋文。
過保護すぎるのではと少し思うけど。
理久が初めて愛した人。
それがこいつだから。
だから過保護になるのも仕方のない事なのかもしれない。
初めての感情で戸惑ってる部分もあるだろうし。
「...、理久にすごく愛されてるみたいで良かったじゃん」
一人の人に愛されるって相当凄い事だよ。
それも心の奥底からだなんて。
相当執着されているという事でもあるけれど。
うん、それは事実だろうけど。
そう考えながら俺自身の事を考える。
俺は女装も似合う程綺麗で。
美しくて。
触れたら壊れてしまいそうだなんてよく言われるが。
遠巻きにみんな俺を見て好き勝手な感想を述べるが。
「雪様って素敵よね。とても美しくて。あんな方と添い遂げられたら幸せでしょうね」
「庶民の私たちには出来ないわそんなこと。会話を交わすことすら無理なのに」
「仮に話したりなんかしたら死んでしまいそう」
きゃぁ、なんて声を上げながら嬉しそうにそんな事を話す人々。
俺とは一切会話なんてしない。
けど、俺に憧れているかのような事を話す彼女達。
それでも他人にそこまで執着された事なんてない。
皆、遠巻きに俺を眺めて。
高嶺の花だとか言って。
勝手にイメージ上の俺を作って心酔しているだけ。
それだけ。
そこに俺がいようがいまいが関係ない。
勝手に作り出した俺という幻想が好きなだけ。
血影 雪という人物ではなく。
血影 雪という名前から産まれた空想上の俺を愛しているだけだ。
勝手に一人歩きしている俺がいる。
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