悪魔の少年と半端な少女

僕が好きなのは

一瞬、何も理解出来なかった。
気がついたら僕は踏まれていた。
「...？？？」
頭の中がパニック状態になった僕に、彼は言う。
「ねぇ、雫はさ、僕と雫が同類だって言ってたよね」
片手で何かを弄びながらそんなことを言った。
「僕らが一緒だなんて笑わせないで」
確かに力だったらきっと彼の方が上だろう。
それでも、それでも。
望まれなかった、疎まれていたという根本的な部分は一緒じゃないか。
自分自身の存在を脅かされていた点じゃ一緒じゃないか。
僕らは似た者同士なんだよ。
それでも僕を否定するというの？
「僕ならさ、下になろうと思えないんだ。どんなに好きでもさ、使い魔なんて立場で甘んじることができない。...僕を支配させたままになんてさせない」
そりゃそうだろうね。
だって君は王なんだから。
颯太や蓮なんかよりも遥かに王様で、女王様で。
だからみんな集まったんだもんね。
それで憧れちゃったんだよ。
君になら全部全部支配されていいと思った。
僕の上位互換のような君になら。
「...それで僕を拒絶したの？ならなんで...蓮は受け入れたの」
「蓮は僕と対等であろうとしたから。それは雫が1番知ってるでしょ？」
僕と蓮は違うじゃないか。
蓮の方が僕なんかよりも遥かに力を持っていて、強くて。
「ずるいよ、ずるいよみんな...なんで僕だけほしいものが手に入らないの？いつも遠くにあるの？」
そういうと君はそんなの嘆いても仕方ないじゃんなんて言って足をどかした。僕は泣いていた。なんで泣いてるのか分からない。力の差をみせつけられたから？それとももうこの恋は叶わないんだって思ったから？
「雫はさ、いっつも決めつけるよね。なんでも」
全部全部決めつけて、初めからダメだって言って諦めて。
手に届く距離にあるのにさ。
そう言われたって、これが僕の生き方なんだから仕方ないじゃないか。
蛇なりに地べたを這って這って這いつくばってやっと見つけた攻略法なんだ。
期待なんてしなければ、悲しむ必要ないんだから。
「...君は知らないよね。期待とか、希望とか、そういうのってさ、毒なんだよ」
そんなものを思い浮かべて夢想するから、それが叶わなかった時に絶望して夢は全身にまとわりつく毒になるんだ。
いくら飲み込んだって吐き出せない。
どこに向かわせればいいか分からない毒へと変化しちゃうんだ。
だから残酷でしょって。
そんな毒は飲みたくないって思うじゃない？
既に致死量ギリギリの毒を飲んでるって言うのにさ。