悪魔の少年と半端な少女

月夜

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蓮の取引

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颯太と同じなら、きっと今は月といるはず。

そして絵美は雫が好きっぽいし。

なら、やることはひとつ。

自分の気持ちはまだはっきりしないし、もしかしたら嘘になるのかもしれない。

けど、

「ねぇ、絵美。取引しようよ。たがいに利益のある取引を……さ。」

「………、内容にもよるわ。」

絵美は取引の内容を聞きながら目の前の蓮と言う名の少年を恐ろしく思った。

内容的には、雫から月を蓮が取り返し、絵美が傷心の雫を励ますかなにかをして、雫の彼女になる。と言ったものである。

蓮が協力するかわりに自分を外に出してくれと言った。

確かにたがいに得する話。

別に絵美は蓮なんかどうでもいい。

絵美の一番はいつだって雫ただひとりのなのだから。

それ以外、なにもいない。

ある意味、絵美のなかは空っぽなのだ。

それを埋めてくれるのは雫だけなんだ。

そんな風に絵美は思っていたのだから。

外に出る方法として、蓮が雫の姿になるから、それで外に出よう。といったもの。

絵美と雫はたびたび外に出ていた。

それを蓮は閉じ込められていて、眠っている間聞こえてたのか、そんな知識があった。

それに話の流れからして、雫はいてもいなくてもいい存在のようだ。

なぜかと言えば、なにも騒音も聞こえないし、探そうとする動きが見えない。

いなくなるのがいつもの事なら、それもうなずけるが、それでもおかしい。

そこまで考えて、蓮は雫の姿になることを選んだ。
心配されないなら好都合。

むしろそれを利用させていただこう。

蓮の頭の回転の早さはどこか魔王を思い出す。

伝説に描かれた魔王。


10年に一度、双子の魔王が生まれる。

同時に勇者も双子。

さらに一年違いで。

魔王の片割れは理性を司る。

頭がとてもよく、神ですら対抗出きるか分からないほどに頭脳を持つ。

魔力も高い。

しかし、運動能力が極端に低い。

そのため魔術に長けていることが多い。

もう一人の片割れは暴虐を司る。

力がとてつもなく強い。

剣舞は目を見張るものの素晴らしさで、見とれていたら死んでいた、という伝承があるほどだ。

見るものを惹き付ける剣舞。

かわりに知能が少々低い。

そのため剣舞に長けていることが多い。

勇者も同様。

半端者は厄介だ。

だって、魔王にも勇者にもどちらにもなれるのだから。

しかも、チートといってもいいほどのつよさ。

ひたすら恐ろしい存在。

味方になればとにかく心強い。

けれど、敵になれば人類はなすすべもない。

しかも、大抵魔王になると言う。

なら、

なにか大切な記録が消えているような……。

そんな気がしてならなかった。

同時に、自分の目の前に立つ男が怖くなった。
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