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25 【レオside1】
しおりを挟む初めて会った2番目の弟、ルーナ。
もう会えないと思っていた。いや、ルーナに対して思うことがあまりにもなかったんだ。見たこともない、声を聞いたこともない、父上や母上の話でしか聞かなかった弟の存在。知ろうともしなかった。
ルーナが誘拐されてから、『御使い様』であると知った。家族なのに。
父上からは領地に戻ってきたらすぐに教えるつもりだったと言われた。俺は学園で最後の年だった。自分のことばかりで領地で生まれた歳の離れた弟に関心を持てなかったのだ。
兄として、いや家族として最低だと思った。貴族は家族の絆が薄いくらいが当たり前だからといって、父上や母上は仲がいいことで有名だし、自分自身も二つ下の弟と仲良くやっていたくせに。なぜルーナを蔑ろにしてしまったんだと後悔した。
一刻も早く見つかって欲しい。『御使い様』として、容姿は目立つほうだろう。きっとすぐに見つかる。そしたら、ルーナに謝ろう。兄として接することを許してもらいたい。
ルーナ、無事でいてくれ。
早くお前に会いたい。
しかし、ルーナはいつまで経っても発見されなかった。
時が経つにつれ、自分のルーナに対する気持ちが薄れていくのがよくわかった。誘拐された直後はあんなことを思っていたのに、自分がどれだけ薄情な人間か思い知らされた。
弟のロスは、もうほとんど興味が失せたようだった。俺がたまにルーナの話をしても、あまり反応しなくなった。そんなロスの様子を見て、俺もルーナの話をしなくなった。
父上達が必死になって探しているのは分かっていた。公爵としての膨大な仕事を片付けていく傍ら、専属となった冒険者に手紙を書いているのを見ると、たった5年しか一緒に過ごしていなくともルーナが本当に愛されているのだとよく分かった。夜遅くに母上に泣いているのも何度も見た。
俺はそれらを見て、何故かほっとした気分になった。自分の冷めた感情をどうにかしたくて、父上達の思いと、自分は一緒だと思おうとしたのかもしれない。
自分の気持ちがごちゃごちゃになってよく分からなくなってしまっていた時だった。冒険者達からルーナ発見の知らせがきたのは。
-----------------
一目見てこの子が欲しいと思った。自分の目を疑う程の美しさだった。公爵家嫡男として、今まであらゆる美しさを持つもの見てきた。それら全てがくすんでしまうようだった。この子を自分のものにしたい…この子を…
はっとした。俺は今何を思っていた?
自分のものにしたい…?ルーナはものじゃないんだ。欲しいだなんて…それでは誘拐犯と一緒では無いか。これまでルーナのことを大して想ってこなかったのに、ルーナの美しさを目のあたりにしてこんなことを思うなんて、自分は本当にダメな人間だと思う。
ルーナはきっと今まで辛い思いをしてきたのだ。これからは幸せになるだけなんだ。俺はそれを守らなければならない立場だろう。兄として、騎士として。
このどろどろとした暗い気持ちは無くさなければ。ルーナに接する上で邪魔にしかならない。
…いや、俺はきっとこの気持ちを消すことが出来ないんだろう。断言出来る。俺はこれからもこのいらない感情を、消さなくてはならないこの感情を持ち続ける。そして、ずっとずっと苦しむのだろう。
ルーナ、俺はお前の幸せを守りたい。お前の笑顔が見たい。
そのためにルーナに向かう全ての悪を排除しよう。もう辛い思いをしないように。苦しむことなんてないように。
俺はお前の隣にふさわしくない。
だけど、どうか許して欲しい。兄として、傍にいることを。どうか許して欲しい。この想いを持ち続けることを。
____________________________________________
更新空いてすいませんでした。
読む専になってました。
新しい作品を出そうと思っているので公開されたら、ぜひ読んでください。
いや、新しい作品書く前にこの作品更新しろよって言うのはなしです。なしですからね。
よろしくお願いします。
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