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13 【過去編2】

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ー5年後ー


「ねぇ、ネポス。あれなぁに?」

「あれですか?あれは巨大樹の花ですよ。とても綺麗ですよね。」


 ルーナが生まれてから5年の月日が経ち、なにごともなくすくすくと元気に育っていた。そしてまだ幼くも、誰もが認める美しさだった。
 
 この5年は容姿のため、外に出ることもできずに家の中ばかりで過ごしていたルーナだったが、両親が可哀想だと思い、公爵家の領地にある巨大樹の森でだけと外出を許された。
 
 巨大樹の森というのは、生態系がまだあまり分かっていない未開の地のことである。世界各地にあるが詳しく分かっていないことが多く、謎に包まれていた。しかし、魔物が近寄らないことでも有名であり、安全ということは確かだった。近くに住んでいる村人なども用がある限りは近づくことはない。そのため公爵は、そこでの散歩なら安全で人に見られることも無いだろうとのことであった。
 散歩に行く際は、乳母のネポスと使用人、そして護衛を連れて行った。と言っても、ルーナの事情を知っている人は数少ないため人数自体はとても少なかった。

 その日もいつも通り森に散歩しに来ていた。ルーナは好奇心旺盛の子供で、見るもの全てに目を輝かせ、色々なことをネポスに尋ねていた。ネポスや護衛はそれを微笑ましく見守っていた。ただ、その日がいつもと唯一違うところがあった。普段なら森の入口部分から入り、森の端の部分をそって歩いている。
 
 しかし、今日はルーナがもう少し森の中を歩いてみたいとの要望があった。護衛たちは公爵に言ってからじゃないと危ないと言ったがその日のルーナは頑固だった。それまではあまりわがままを言ってこなかったため一同は驚いたが、今回だけ特別にということで少し森の中を歩くことになった。

それがいけなかった。

 森の中と言ってもいつもよりは少し奥に行くというだけ。これまで1ヶ月ほどこの森に散歩に来ている。しかし、危険なことなど1度もなかった。そのため、乳母のネポスも使用人達、護衛達も気が緩んでいたのかもしれない。

 森に入ってから15分ほど歩いた。少し休憩しようということになり、使用人達がみんな準備を始めた。


ドサッ


 何が起こったか誰も理解できなかった。みんな固まってその場から動けなかった。その間にも護衛はどんどんと倒れていく。ようやく緊急事態が起きてると分かった護衛の1人が指示を出し始めた。


「全員1つに集まれ!ルーナ様を真ん中にして身を屈めてその場から動くな!」


 ネポスと使用人は速やかに動き出した。ルーナを真ん中に全員で壁になるかのように身を縮めた。護衛は倒れた者達を調べていく。すると、首辺りに小さな麻酔針のようなものが刺さっている。それは本来は獣に使われるようなものだ。とても強力で人に使われたらあっという間に眠ってしまう。


きゃぁぁああああ!!!!

ドサッ


 使用人の大きな叫びが森に響き渡った。護衛が直ぐに戻ると、そこにはネポスをはじめとした使用人全員が倒れていた。よく見るとその場にいるはずのルーナがいない。


「何があった!!おい!起きろ!!ルーナ様はどこだ!!」


 倒れている使用人達に声をかけて行く。全員に先程と同じ麻酔針が刺さっている。起きる気配がないのを確認して、倒れている者達をひとまとめに寝かせてから、周りの捜索を開始した。しかし人がいる気配も誰かがいた痕跡もない。
 公爵家に雇われている護衛たちは、決して弱い訳では無い。それどころか並大抵の奴らではかなわないだろう。そんな護衛達を不意打ちとはいえ一瞬で無力化したのだ。敵は相当強い。
 
 その場を指揮していた護衛の1人は、1回公爵家に戻り応援を呼んだ方がいいと判断し、何人かを置いて公爵家へと戻ったのだった。




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