37 / 39
16章
王太子の婚約者
しおりを挟む
婚儀の前日、朝からルシアは大忙しだった。先ずはアルマ公爵とルイーズと共に、神殿から王宮へと当日の最終確認を行った。明日はとにかく間違ってはいけないと、ルシアは必死に頭にいれていく。
「ルシア、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。最初は公爵がリードされるし、その後はアレクシーのリードで進むから」
確かにルイーズの言う通りだ。花嫁であるルシアが、主体的に動く場面はない。花嫁は実家の当主から、花婿に渡されるわけだから、その二人のリードに任せていればよかった。けど、挙動不審になるわけにはいかないし、ましてや、こけたらそれこそ恥ずかしい。
「ルシア、こけそうになったら私か、王太子殿下の腕に捕まるといい、支えてやるから」
ど、どうしてこけるかもって……お、お兄様はなんでもお見通しだなとルシアは驚く。
「おほほほっ花嫁がこけたら大変。それを支えるのはあなたと、アレクシーの役目ですことよ。おほほほっ」
もうーっ、お兄様も、お姉様も緊張とは無縁のお方だ。全くうらやましいよ。しかし、だからこそ頼りになる兄と姉だった。二人のおかげで、明日の婚儀を迎えられる、ルシアは心の中で感謝した。しかし今日は、公爵邸に戻って後、改めて言葉で二人に感謝を伝えねばと心に誓った。
公爵邸に戻ったのち、明日の衣装の最終確認を三人で行った。これで明日への準備は全て終わった。
ほっと、安堵するルシアを、公爵は応接室に導く。公爵邸で一番格式の高い部屋だ。公爵からも何か話があるのか? ちょうどいい、自分の気持ちもお伝えしよう……ルシアは幾分緊張気味に部屋へ入る。
公爵はルイーズと並び、徐に切り出した。
「ルシア、明日はいよいよ婚儀だ。婚儀が終わればそなたは王太子妃、私も妃殿下と呼ぶ。だが私たちのことは、今まで通り、お兄様、お姉様と呼んで欲しい」
ルシアはしっかり頷く。ルシアもそう呼びたいと思っていた。本当は、自分のことも今まで通りルシアと呼ばれたいが、それは叶わないと知っていた。
「しかし、妃殿下になってからでも、ここがそなたの家なのは変わらない。アルマ公爵家は、ルシア王太子妃殿下の実家だ。いつでも頼りにしてほしい。私、そしてルイーズもそなたを弟にできて、本当に幸せだ。そなたの兄であり、姉であることは生涯変わらない」
公爵のいつもの毅然とした言葉に、小さい震えが入る。ルシアは、そのような公爵の声を初めて聴く。公爵の隣でルイーズは涙ぐんでいた。ルシアは、溢れそうになる涙を必死に堪える。泣いてはいけない、泣いてはいけない……でも無理だった。
堰を切ったように、ルシアの涙が溢れだす。それを、ルイーズが自分のハンカチで拭ってくれる。そうすると、もう駄目だった。
ルシアはルイーズに抱きつき、子供のように泣きじゃくった。泣きじゃくるルシアの背を、ルイーズは優しくあやすように撫でる。公爵はルシアの頭を、やはりあやすように撫でた。
「ご、ごめんなさい……ひっく……ちゃん、ひっく、ちゃんとご挨拶しないと……」
二人は、いいのだと言うようにルシアを撫で続ける。しばらくすると、ルシアもようやく落ち着いてきた。今こそ、言わなければと思う。
ルイーズの胸から離れて、ルシアは二人に向き合った。
「お兄様、お姉様お二人に私からもお伝えしたいことがあります。お二人が、私を弟にしてくださったこと、そしてこの公爵家に向かえ入れてくださったこと本当に感謝しております。お二人のおかげで明日を迎えることができました。感謝の気持ちでいっぱいでございます。私からもどうか、生涯お二人の弟でいさせていただきたいです」
ルシアは、涙声で所々途切れさせながらも、伝えたいことは言うことができた。
ルシアの言葉に、今度はルイーズが泣き出した。そんなルイーズを抱き寄せる公爵の眼にも涙が光っている。
思えば不思議な縁だった。ルシアがアレクシーの番になるまで、お互いにその存在すら認識していなかった。それが兄弟の縁を結び、半ば同志のようにここまできた。一蓮托生で乗り越えてきたともいえた。
ルシアの嫁ぐ前夜は、このように愛に溢れた幸せの中で更けていった。
「ルシア、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。最初は公爵がリードされるし、その後はアレクシーのリードで進むから」
確かにルイーズの言う通りだ。花嫁であるルシアが、主体的に動く場面はない。花嫁は実家の当主から、花婿に渡されるわけだから、その二人のリードに任せていればよかった。けど、挙動不審になるわけにはいかないし、ましてや、こけたらそれこそ恥ずかしい。
「ルシア、こけそうになったら私か、王太子殿下の腕に捕まるといい、支えてやるから」
ど、どうしてこけるかもって……お、お兄様はなんでもお見通しだなとルシアは驚く。
「おほほほっ花嫁がこけたら大変。それを支えるのはあなたと、アレクシーの役目ですことよ。おほほほっ」
もうーっ、お兄様も、お姉様も緊張とは無縁のお方だ。全くうらやましいよ。しかし、だからこそ頼りになる兄と姉だった。二人のおかげで、明日の婚儀を迎えられる、ルシアは心の中で感謝した。しかし今日は、公爵邸に戻って後、改めて言葉で二人に感謝を伝えねばと心に誓った。
公爵邸に戻ったのち、明日の衣装の最終確認を三人で行った。これで明日への準備は全て終わった。
ほっと、安堵するルシアを、公爵は応接室に導く。公爵邸で一番格式の高い部屋だ。公爵からも何か話があるのか? ちょうどいい、自分の気持ちもお伝えしよう……ルシアは幾分緊張気味に部屋へ入る。
公爵はルイーズと並び、徐に切り出した。
「ルシア、明日はいよいよ婚儀だ。婚儀が終わればそなたは王太子妃、私も妃殿下と呼ぶ。だが私たちのことは、今まで通り、お兄様、お姉様と呼んで欲しい」
ルシアはしっかり頷く。ルシアもそう呼びたいと思っていた。本当は、自分のことも今まで通りルシアと呼ばれたいが、それは叶わないと知っていた。
「しかし、妃殿下になってからでも、ここがそなたの家なのは変わらない。アルマ公爵家は、ルシア王太子妃殿下の実家だ。いつでも頼りにしてほしい。私、そしてルイーズもそなたを弟にできて、本当に幸せだ。そなたの兄であり、姉であることは生涯変わらない」
公爵のいつもの毅然とした言葉に、小さい震えが入る。ルシアは、そのような公爵の声を初めて聴く。公爵の隣でルイーズは涙ぐんでいた。ルシアは、溢れそうになる涙を必死に堪える。泣いてはいけない、泣いてはいけない……でも無理だった。
堰を切ったように、ルシアの涙が溢れだす。それを、ルイーズが自分のハンカチで拭ってくれる。そうすると、もう駄目だった。
ルシアはルイーズに抱きつき、子供のように泣きじゃくった。泣きじゃくるルシアの背を、ルイーズは優しくあやすように撫でる。公爵はルシアの頭を、やはりあやすように撫でた。
「ご、ごめんなさい……ひっく……ちゃん、ひっく、ちゃんとご挨拶しないと……」
二人は、いいのだと言うようにルシアを撫で続ける。しばらくすると、ルシアもようやく落ち着いてきた。今こそ、言わなければと思う。
ルイーズの胸から離れて、ルシアは二人に向き合った。
「お兄様、お姉様お二人に私からもお伝えしたいことがあります。お二人が、私を弟にしてくださったこと、そしてこの公爵家に向かえ入れてくださったこと本当に感謝しております。お二人のおかげで明日を迎えることができました。感謝の気持ちでいっぱいでございます。私からもどうか、生涯お二人の弟でいさせていただきたいです」
ルシアは、涙声で所々途切れさせながらも、伝えたいことは言うことができた。
ルシアの言葉に、今度はルイーズが泣き出した。そんなルイーズを抱き寄せる公爵の眼にも涙が光っている。
思えば不思議な縁だった。ルシアがアレクシーの番になるまで、お互いにその存在すら認識していなかった。それが兄弟の縁を結び、半ば同志のようにここまできた。一蓮托生で乗り越えてきたともいえた。
ルシアの嫁ぐ前夜は、このように愛に溢れた幸せの中で更けていった。
73
あなたにおすすめの小説
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
白銀の城の俺と僕
片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる