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9章 絶望の先の光

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 彰吾は、星夜の蕾にそっと触れる。慎ましやかに、きゅっと閉じている。丹念に解してやらねばならない。決して痛い思いはさせてはならない。
 ジェルを掌に取り、人肌で温めてから蕾に塗りこめていく。指一本がやっと入る硬さだ。香だったころは毎日開かせられたが、ここへ来てからは使っていない。
 彰吾は丁寧に解していく。こりっとした感触に刺激してやると、星夜が「ああんっ」と反応する。重ねて刺激してやる。
「ああんっ……ああーっ……もう、ほっ、欲しい」
「ああ、もう少し待て、もう少し広げないとな」
 星夜を宥めながら、指を二本に増やす。星夜はもどかしい思いになる。早く欲しい。早く彰吾を受け入れて、一体となりたい。こんなふうに思うのは初めて。これが本当のセックスなら、自分は今まで知らなかった。
 彰吾の指が三本になる。星夜の喘ぎも甘さを増す。そろそろ頃合いか……。彰吾のものも、昂り限界を感じる。
 彰吾は自身の昂りを星夜の蕾にあてる。閉じていたそこは、柔らかに色味を増していて、星夜のものを受け入れていく。
 星夜は目を閉じて、体がきゅっと反応する。ゆっくり入ってくる彰吾のもの。その圧迫感に慄くが、苦しくはない。むしろ、彰吾の熱を感じ、嬉しくなる。星夜は、涙を流した。
「痛いのか?」
 慌てたように聞く彰吾に、星夜は首を横に振る。痛いのではない。これは、喜びの涙。
「痛くない……嬉しい……彰吾さんを感じる」
「ああ、俺もだ。お前の中は熱くて、最高に気持ちいい。愛しているよ」
 二人は、そのまま抱き合い、お互いの温もりを感じ合う。愛し合う者同士が心と体で深く繋がった愛の温もり。
 生まれてきて良かった。死ななくて良かった。星夜は心からそう思った。
「わたしも、あ……愛している……死ななくて良かった。ありがとう、あの時手を掴んでくれて」
「ああ、お前は必ずそう思う日が来ると思っていた。あの日お前を見かけて、その手を掴んだのは、必然だった。おれも良かったと心から思うよ」
 星夜は深く頷いた。もし神様がいるなら、感謝したい。
「そろそろ動いていいか」
 星夜もそれを欲している。彰吾をもっと感じたい。奥に、おくまで……。
 彰吾が動く。その抽挿は段々と激しくなる。しかし、それは一方的な凌辱ではない。星夜も奥に彰吾の愛を感じる。
「ああーっ、あっ……ああんっあっ……ああんっもっ、もっとっ」
 星夜の喘ぎが、甘く、そして次第に激しく彰吾を求める。
 二人は、お互いに相手への愛と、相手の愛を感じながら、極まりに上っていく。
「ああんっ、あーっもっ、もういくっ……いくーっ」
 星夜は、愛する人の精を自分の中に感じ、同時に己の精も放ち、自失した。

 眼を開くと、彰吾の優しい顔。口づけを欲したら、与えてくれる。言わずとも分かってくれるのが、彰吾の愛を感じて嬉しい。
「良かったよ、最高に良かった。体は大丈夫か」
 彰吾は優しい言葉を与えてくれて、そして体を気遣ってくれる。それも嬉しい。過去は思い出したくないけど、こんな扱いを受けたことは一度とてないかった。事後は、いつも呆然としたまま古城に体を洗われて終わりだった。彰吾の愛を、心から感じる。
「わたしも、良かった……彰吾さんも良かったのが、嬉しい」
 自分の気持ちを伝える星夜を、彰吾は抱き寄せ、口付ける。愛おしい、そしてようやくここまできたかとの思い。
 ここへ連れて来た時は、美しいが、能面のようだった。美しいが故にかえって、人形のようで、人の生気を感じられなかった。
 この青年に血を通わせたいと、そう思った。それが、こうして表情も豊かに、言葉も素直にだすようになった。
 これからも幸せにしてやりたい。そして、守ってやりたい。
 彰吾が星夜を抱き寄せると、星夜は彰吾の胸に顔を寄せる。そのまま、二人は抱き合ったまま眠りに落ちる。
 あの日出会って、星夜がここへ来てから初めて、体を寄せ合い眠った。程よい疲労感と、充足した心は、深く心地良い眠りをもたらした。
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