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7章 囚われの小鳥

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 六年の時が過ぎ、香は大学に進学した。
 五歳年上の東月は既に大学を卒業していた。二人の舞の実力の差は年々広まるばかりであった。東月自身それを自覚し、実務で流派を支える思いもあり、大学では経済を学んだ。
 香は東月に対して、良い感情は全く無かったが、彼の言うこれからの時代は経済を知らないと流派の存続は難しいとの考えには共感した。秋好流こそそれが必要とも思ったのだ。故に、自分も経済学部に進学したかったが、宗家の許しが得られなかった。
 香には大学の学部の選択の自由も許されなかった。仕方なく、宗家の命じる国文科へと進学した。
 不本意な大学生活のスタートではあったが、神林での生活は大学卒業までとの取り決めがあり、それが香りの支えであった。稚児勤めは、文字通り大人になるまでとの不文律もあるからだ。あと四年耐えれば、秋好に戻れる……香はそう思っていた。

「香さんお連れしました」
 今宵も、香は宗家と若宗家に仕えるため座敷へ入ると、若宗家の横に東月がいる。何故ここにいる……。
「東月も大学を卒業し社会人になった。わしの直系、神林の若だ。仕えてやりなさい」
 宗家の言葉に、東月が香を見る。香の全身に拒否感情が生じた。
 宗家と若宗家は香にとって師匠で、言わば仰ぎ見る方、故に、閨での勤めも果たしてきた。しかし、東月はいくら宗家の直系と言えど、香にとって師とは言えない。実力は香の方が上なのは明らかで、東月から学ぶことはない。
 香の拒絶反応を知ってか、知らずか紐を手に東月は香に近づき、乱暴にその着物に手を掛け一気に上半身をむき出しにする。香は抗う間もなく、その手を縛り上げられ、自由を奪われてしまった。
「あまり手荒にするではない。可愛がってやるのだ。お前もわしの直系の孫なら、いい声で啼かせてやりなさい」
 宗家の言葉が効いたのか、荒々しさは潜めたが、その愛撫は強引なものだった。
 香にとっては、余りに理不尽な事。これでは、単に自分は神林の玩具にすぎない。手の自由を奪われ、抗うことは出来ないが、感じたくはないと、気持ちで精一杯抗う。
 しかし、長年男を受け入れるように仕込まれてきた体は、その思いを裏切る。
「あっ、あっ……だめっ……ああんっ……」
 必死に堪えるものの、喘ぎ声を上げる。しかし、堪えるからこそ、かえってその喘ぎは甘く響き、そこにいる男たちの情欲を誘うのだった。
 東月は香の立ち上がった中心のものをつかむ。
「もうこんなにして、先はとろんと濡れてるな。だけどここは我慢だ。中だけでいくんだ、女のようにな」
 香のものを紐で縛める。香は頭を振って抗う。
「いやっ、やめて……」
 必死に抗う香を俯せにして、東月は香の中へジェルのチューブを入れ、中身を徐々に入れていく。
「あんっ、いやっ……許して……」
 秋月との行為の時もジェルは使われる。これを入れられると、どうしようもなく感じてしまい、乱れてしまう。だから、秋月は好んで使うが香は嫌だった。凌辱された虚しさと、屈辱感が残るからだ。
 まして東月に……。
 東月が香の中へ入ってくる。
「ああっ、ああん……いやっああーっ」
「ふふっ、声が甘くなってきたな。感じるんだろ、いっていいぞ、ただし中でな。ふふっ、何回もいかせてやる」
 言葉の通り、香は放出が許されず、行き場を失った情欲が体の中で蠢く。いきたい、いかせて……。
 しかし、東月の思惑は外れ、香が中でいくことはできずに、中途半端な状態で喘いだ。結局東月だけ、香の中で果てた。それを香は感じたが、それだけだった。
 女のようにいく、つまりドライオーガズムはデリケートなのだ。ただ放出を許さず責め立てればよいというものではない。東月にはそれが分かっていなかった。
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