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1章 美しい青年の秘密

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 彰吾は急いで帰宅した。午前中に管理人から連絡があり、青年のことが気にかかる。その後は何の連絡もないので大丈夫とは思うが、やはり心配だった。
 玄関を開けて声を掛けるが、反応がない。不安になり急いで中に入りリビングへ行くと、青年が横になっている。側へよると本を持ったまま眠っている。おそらく本を読んでいて眠ってしまったのだろう。
 すやすやと眠る青年に笑みがこぼれる。罪のない顔をしている。この青年に何があって、死のうとまで追い詰められたのか……。まあ、あの組紐で大体は察せられるが……。
「うんっ……」
 青年が、目覚めたのか眩しそうに目を開けて、その眠そうな目と合う。
「ふっ、起きたか? 本を読んでいて眠ったみたいだな」
 まだ完全に目が覚めていないのか、とろんとした目で彰吾を見る。それが無性に可愛くて、思わず抱きしめたくなるが、必死に堪えた。それはまだ早い。
「いい子にしていたか? 飯は食ったか?」
 その言葉で、青年はびくっとした。食べていないのだ。あえて食べなかったわけではない。昼ごはんがあるのを忘れていた。いつも、食事は出されたら食べる。だから、何も聞かれず、出されなかったから、食べなかっただけだ。
「なんだ、食べなかったのか? 腹は空かなかったのか?」
「そう、そう言うわけじゃ……ごめんなさい」
 彰吾にも大体が察せられた。その場で出されないと食べないのだろう。母親がよっぽど過保護に何もかも世話したのか? いずれにしてもスマホを用意して良かったと思う。これで、支持を出してやらないといけないと思う。
「これから、お前にはこのスマホを持たせる。俺との連絡用だ。昼には俺が連絡するから、ちゃんと飯を食え。あと、お前も何かあれば、このスマホで俺に連絡しろ。いいか、俺の発信は必ず取れ。取らなかったら、すぐに帰ってくるから、必ず出るんだぞ」
 青年は素直に頷いた。昼ご飯のことは、悪かったと思っているようだ。彰吾は青年の頭を撫でてやる。これくらいの触れ合いは、最初からしているし大丈夫だろう。これから徐々に、もっと先に進みたいとは思っているが。
「分かったなら良し! 昼食べてないから腹減っただろう。急いで飯の支度をする」
「あっ、あの……」
「うん、なんだ?」
「わたしは、お昼に用意してあったものを食べます」
「そうか、そうだな。お前はそれを食うとして、夕食だから、もっと何か……そうだ、ミネストローネを付けたそう。野菜たっぷりで美味いし、体にもいい」
 青年は頷いた。今までは、彰吾の体にいいという言葉に、死ぬ人間には関係ないと思ったが、今は思わなかった。食べる前から、彰吾の作るミネストローネは美味しいだろうと思うのだった。

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