46 / 78
7章 初めての恋心
④
しおりを挟む
尚久には、尚希の混乱が手に取るようにして分かる。そうだ、デートなんかこれっぽっちも思ってなかっただろうと思う。それが、尚希だ。
これはいい機会だ。自分のことを認識させよう。
「一回きりならまだしも、こうして時々二人で会ってるんだから、デートだし付き合ってると、私は思ってる。つまり、私はお前の、尚希の彼氏だろ。違うのか」
先生が、僕の彼氏!? 益々尚希は混乱する。
「告白してないから、混乱してるのか? 分かってると思ってたから、口には出してないけど、はっきり言わないといけなかったな」
尚久は、尚希に体を向けて、その両の手で、尚希の顔を包む。
「好きだよ」
静かだが、はっきりとした告白。
尚希を見つめる尚久の顔は、微笑みを浮かべてとても優しい。
尚希は、体が蕩けそうになり、胸も熱くなる。ドキドキして言葉が出ない。
「尚希はどうなんだ? 私のことを好きか?」
尚希は頷いた。頷くのが精一杯なのだ。僕も先生が好き。心の中で呟く。
「じゃあ、両想いってことでいいな。私たちは恋人だよ」
「こっ、恋人!?」
「両想いなんだからそうだろう」
尚久は尚希の顔を、くいっと上げると、その唇に口付ける。恋人なんだからと言うように。
びっくりした尚希は、硬直して声も出ない。口をふさがれているので当然でもあるが――。
初めての口付けだが、尚久は舌を侵入させる。ビクッと反応する尚希に構わず、その口腔内を侵していく。
硬直していた尚希の体が解れていくのが分かるが、尚希が苦しそうにしたので、唇を離す。
「ぷっはーっ――」
「ふっ、お前は――鼻で息をしろ」
そうなの? という表情で尚久を見上げる尚希。
「口を閉じて鼻で息をしてみろ」
素直に、すーっはーっと従う尚希。
「そうだ、そうしたら苦しくない」
「ぼ、僕初めてだから……どっ、どうしたらいいのか分かんないから」
「ああ、心配しなくて大丈夫だ。私が教えてやるから」
キスの時、鼻で息をすることも知らない尚希。だからいいのだろうと、尚久は思うのだ。初心で誰の手垢も付いていない。純白の花のようだ。それが、どんな風に色付くのか、想像するとワクワクする。
再び口付けようとした尚久に、尚希は慌てて聞く。
「あっ、あの……目はどうするの?」
「目は閉じてた方がいいな。私と目が合うとお前が気まずいだろ」
うん……えっ! それって先生は目を開けてるの? で、でも僕は閉じておこう。た、確かに目が合うと、気まずいって言うか、恥ずかしい。
「あっ、あの……」
なんだ、まだあるのか? と、尚久は視線で問う。
「手、手はどうするの?」
「手は、そうだな。私の背にやって、抱きつく感じがいいな」
そ、それって、ハードル高いと、もじつく尚希。尚久は微苦笑を浮かべて、再び尚希の唇を奪う。
尚希は慌てた。慌てながらも、一生懸命に鼻で息することを意識する。そして、自然と手は尚久の背にやり、抱きつく形になる。
尚久は慌てる尚希に構わず、その舌で尚希の口腔内を愛撫し、尚希の舌を絡め取る。尚希はされるがままだ。こんな大人のキスは勿論、口付けも初めてなのだから当然だ。
尚希は、経験したことのない気持ち良さに、足の力が抜ける。車のシートに座っているからいいものの、立っていたら、へたり込むところだ。
尚希を味わい尽くした尚久は、溢れる唾液を啜ってやる。尚希はとろんとした目で尚久を見つめる。その瞳は赤みを帯び、濡れた唇は扇情的だ。
尚久は己の中心に熱が集まるのを感じる。これ以上はいけない、自分の中で警報が鳴る。ゆっくりと尚希の体を離した。
ハンドルを握り、車を発進させる。
尚希はぼーっとしていた。このたった何分かの出来事が、未だに現実とは思えない。そんな気持ちだった。
先生と恋人――そして大人のキス。
車が、尚希のマンションの前で止まる。
「今度の土曜日はうちに来るだろ?」
「うん」
「じゃあな、おやすみ」
尚久は、尚希の額に口付ける。尚希は、車を降り、おぼつかない足取りで、マンションへ入っていった。
母はまだ帰宅していなかったので、尚希は早々と風呂に入った後、自分の部屋に入る。今晩は、母と顔を合わせたくなかった。
最近は母とも、何かと会話が弾んでいた。特に母は、尚久や北畠家の話題を聞きたがった。
しかし、今晩は絶対にそれだけは避けたかった。尚久のことをどう話していいのか分からない。
恋人になったなんて、絶対に話せない。ましてや、キスしたなんて。
これはいい機会だ。自分のことを認識させよう。
「一回きりならまだしも、こうして時々二人で会ってるんだから、デートだし付き合ってると、私は思ってる。つまり、私はお前の、尚希の彼氏だろ。違うのか」
先生が、僕の彼氏!? 益々尚希は混乱する。
「告白してないから、混乱してるのか? 分かってると思ってたから、口には出してないけど、はっきり言わないといけなかったな」
尚久は、尚希に体を向けて、その両の手で、尚希の顔を包む。
「好きだよ」
静かだが、はっきりとした告白。
尚希を見つめる尚久の顔は、微笑みを浮かべてとても優しい。
尚希は、体が蕩けそうになり、胸も熱くなる。ドキドキして言葉が出ない。
「尚希はどうなんだ? 私のことを好きか?」
尚希は頷いた。頷くのが精一杯なのだ。僕も先生が好き。心の中で呟く。
「じゃあ、両想いってことでいいな。私たちは恋人だよ」
「こっ、恋人!?」
「両想いなんだからそうだろう」
尚久は尚希の顔を、くいっと上げると、その唇に口付ける。恋人なんだからと言うように。
びっくりした尚希は、硬直して声も出ない。口をふさがれているので当然でもあるが――。
初めての口付けだが、尚久は舌を侵入させる。ビクッと反応する尚希に構わず、その口腔内を侵していく。
硬直していた尚希の体が解れていくのが分かるが、尚希が苦しそうにしたので、唇を離す。
「ぷっはーっ――」
「ふっ、お前は――鼻で息をしろ」
そうなの? という表情で尚久を見上げる尚希。
「口を閉じて鼻で息をしてみろ」
素直に、すーっはーっと従う尚希。
「そうだ、そうしたら苦しくない」
「ぼ、僕初めてだから……どっ、どうしたらいいのか分かんないから」
「ああ、心配しなくて大丈夫だ。私が教えてやるから」
キスの時、鼻で息をすることも知らない尚希。だからいいのだろうと、尚久は思うのだ。初心で誰の手垢も付いていない。純白の花のようだ。それが、どんな風に色付くのか、想像するとワクワクする。
再び口付けようとした尚久に、尚希は慌てて聞く。
「あっ、あの……目はどうするの?」
「目は閉じてた方がいいな。私と目が合うとお前が気まずいだろ」
うん……えっ! それって先生は目を開けてるの? で、でも僕は閉じておこう。た、確かに目が合うと、気まずいって言うか、恥ずかしい。
「あっ、あの……」
なんだ、まだあるのか? と、尚久は視線で問う。
「手、手はどうするの?」
「手は、そうだな。私の背にやって、抱きつく感じがいいな」
そ、それって、ハードル高いと、もじつく尚希。尚久は微苦笑を浮かべて、再び尚希の唇を奪う。
尚希は慌てた。慌てながらも、一生懸命に鼻で息することを意識する。そして、自然と手は尚久の背にやり、抱きつく形になる。
尚久は慌てる尚希に構わず、その舌で尚希の口腔内を愛撫し、尚希の舌を絡め取る。尚希はされるがままだ。こんな大人のキスは勿論、口付けも初めてなのだから当然だ。
尚希は、経験したことのない気持ち良さに、足の力が抜ける。車のシートに座っているからいいものの、立っていたら、へたり込むところだ。
尚希を味わい尽くした尚久は、溢れる唾液を啜ってやる。尚希はとろんとした目で尚久を見つめる。その瞳は赤みを帯び、濡れた唇は扇情的だ。
尚久は己の中心に熱が集まるのを感じる。これ以上はいけない、自分の中で警報が鳴る。ゆっくりと尚希の体を離した。
ハンドルを握り、車を発進させる。
尚希はぼーっとしていた。このたった何分かの出来事が、未だに現実とは思えない。そんな気持ちだった。
先生と恋人――そして大人のキス。
車が、尚希のマンションの前で止まる。
「今度の土曜日はうちに来るだろ?」
「うん」
「じゃあな、おやすみ」
尚久は、尚希の額に口付ける。尚希は、車を降り、おぼつかない足取りで、マンションへ入っていった。
母はまだ帰宅していなかったので、尚希は早々と風呂に入った後、自分の部屋に入る。今晩は、母と顔を合わせたくなかった。
最近は母とも、何かと会話が弾んでいた。特に母は、尚久や北畠家の話題を聞きたがった。
しかし、今晩は絶対にそれだけは避けたかった。尚久のことをどう話していいのか分からない。
恋人になったなんて、絶対に話せない。ましてや、キスしたなんて。
3
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい
海野幻創
BL
「その溺愛は伝わりづらい」の続編です。
久世透(くぜとおる)は、国会議員の秘書官として働く御曹司。
ノンケの生田雅紀(いくたまさき)に出会って両想いになれたはずが、同棲して三ヶ月後に解消せざるを得なくなる。
時を同じくして、首相である祖父と、秘書官としてついている西園寺議員から、久世は政略結婚の話を持ちかけられた。
前作→【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる