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7章 初めての恋心
①
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「二十歳の誕生日おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「尚希もようやく大人になったな。これからは一緒に酒が飲めるな」
今日は二十歳の誕生祝いだと、食事に招待してくれた。普段はカジュアルな店が多いが、今日は落ち着いた雰囲気の店だ。いかにも、大人になった感じがするが、その分緊張もする。
「お酒、僕分かんない」
「ああ、飲めるかどうかも分からんのか――そうだな、最初にいきなり飲んで酔っぱらうのもあれだな。ためしに少し飲んでみろ」
オーダーは全て尚久がする。カジュアルな店なら、自分の希望を言うが、こういう店では、全てお任せ状態。
「食前酒のシャンパーニュだよ。飲みやすいけど、意外とアルコール度数は高いから、気を付けろ」
尚希は、恐々と口にする。炭酸が爽やかで、飲みやすいけど、確かにアルコールが、かあっと体に染み渡るのを感じる。
「どうだ?」
「美味しいけど、アルコール強そう」
「初めてだとそうだよな、少しずつ飲んだらいい」
確かに一度に飲むと、酔っぱらいそうだと思ったから、少しずつ飲む。
それでも、今まではミネラルウォーターを飲んでいたので、少し大人の階段を上った気持ちがした。
魚料理が終わり、ソルベがサーブされた。
「さっぱりして美味いな。次は肉料理だから、私は赤ワインを飲むが、尚希はどうする? 少し飲んでみるか?」
尚希は自分のグラスを見る。まだシャンパーニュが残っている。酔ってはいないが、少し顔が熱い。これ以上飲んだら怖いかな――。
「これ以上飲むと、多分酔いそう……」
「ふふっ、酔っぱらってもいいけどな」
「なっ! 何言ってるの。もうーっ」
尚久はさも楽し気に笑う。尚希は、そんな尚久を恨めし気に見る。全く、また子供扱いされていると思うのだ。
尚久は笑いながらも、それ以上は勧めなかった。そこは、大人として心得ている。成人したばかりの人間を、酔わせるわけにはいかない。
そこへ、メインの肉料理が提供された。
仔羊の香草焼き――とても美味しそうだ。尚希の目が輝いた。お酒のことは忘れて、一口食べる。柔らくて、凄く美味しい。
「ふふっ、美味いなあ」
尚久の言葉に、尚希は、満面の笑顔で頷きながら、また一口食べる。魚料理も美味しかったけど、やっぱり肉の方が美味しいと思うのだ。
美味しくて、ゆっくり味わってと思うが、気が付いたら完食していた。
「美味しかった! ご馳走様!」
「いい食べっぷりだったなあ。あとデザートがあるぞ、入るか?」
「デザートは別腹だよ」
「お前は相変わらずだな」
呆れたように言うものの、尚久も笑顔だ。
「うん、美味しい! やっぱり最後はデザートだよね」
尚希はニコニコ顔だ。甘いデザートに、コーヒーには砂糖も入れている。
甘党ではない尚久には、胸焼けしそうだ。
今日は少し酒の味を教えてやろうと思ったけど、当分酒より、甘味だなと、苦笑交じりに思う尚久だった。
「あ、ありがとうございます」
「尚希もようやく大人になったな。これからは一緒に酒が飲めるな」
今日は二十歳の誕生祝いだと、食事に招待してくれた。普段はカジュアルな店が多いが、今日は落ち着いた雰囲気の店だ。いかにも、大人になった感じがするが、その分緊張もする。
「お酒、僕分かんない」
「ああ、飲めるかどうかも分からんのか――そうだな、最初にいきなり飲んで酔っぱらうのもあれだな。ためしに少し飲んでみろ」
オーダーは全て尚久がする。カジュアルな店なら、自分の希望を言うが、こういう店では、全てお任せ状態。
「食前酒のシャンパーニュだよ。飲みやすいけど、意外とアルコール度数は高いから、気を付けろ」
尚希は、恐々と口にする。炭酸が爽やかで、飲みやすいけど、確かにアルコールが、かあっと体に染み渡るのを感じる。
「どうだ?」
「美味しいけど、アルコール強そう」
「初めてだとそうだよな、少しずつ飲んだらいい」
確かに一度に飲むと、酔っぱらいそうだと思ったから、少しずつ飲む。
それでも、今まではミネラルウォーターを飲んでいたので、少し大人の階段を上った気持ちがした。
魚料理が終わり、ソルベがサーブされた。
「さっぱりして美味いな。次は肉料理だから、私は赤ワインを飲むが、尚希はどうする? 少し飲んでみるか?」
尚希は自分のグラスを見る。まだシャンパーニュが残っている。酔ってはいないが、少し顔が熱い。これ以上飲んだら怖いかな――。
「これ以上飲むと、多分酔いそう……」
「ふふっ、酔っぱらってもいいけどな」
「なっ! 何言ってるの。もうーっ」
尚久はさも楽し気に笑う。尚希は、そんな尚久を恨めし気に見る。全く、また子供扱いされていると思うのだ。
尚久は笑いながらも、それ以上は勧めなかった。そこは、大人として心得ている。成人したばかりの人間を、酔わせるわけにはいかない。
そこへ、メインの肉料理が提供された。
仔羊の香草焼き――とても美味しそうだ。尚希の目が輝いた。お酒のことは忘れて、一口食べる。柔らくて、凄く美味しい。
「ふふっ、美味いなあ」
尚久の言葉に、尚希は、満面の笑顔で頷きながら、また一口食べる。魚料理も美味しかったけど、やっぱり肉の方が美味しいと思うのだ。
美味しくて、ゆっくり味わってと思うが、気が付いたら完食していた。
「美味しかった! ご馳走様!」
「いい食べっぷりだったなあ。あとデザートがあるぞ、入るか?」
「デザートは別腹だよ」
「お前は相変わらずだな」
呆れたように言うものの、尚久も笑顔だ。
「うん、美味しい! やっぱり最後はデザートだよね」
尚希はニコニコ顔だ。甘いデザートに、コーヒーには砂糖も入れている。
甘党ではない尚久には、胸焼けしそうだ。
今日は少し酒の味を教えてやろうと思ったけど、当分酒より、甘味だなと、苦笑交じりに思う尚久だった。
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