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7 友情の花束
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「俺は本気で子供の頃からロジーナが好きだ」
リックはちょっと頬を赤くして私を見上げて来る。
「外国に居てもずっと忘れられなかった。昨日再会してお前を慕う気持ちを再確認できた」
彼から向けられるものとしては初めて見る真摯な眼差しだった。
その目を見て私はここでやっと自分が思い違いをしていたのを悟った。
ユージーンが言っていたように、リックは私を真面目に恋愛対象として見ているって。
そうだったんだ、リック……。
「今は誰に恋愛感情がなくても、この先ロジーナは誰かに恋をするかもしれない。もし誰かに恋するならその相手は俺がいい。いや俺にしろよ。その時俺と結婚してればそれこそ何も問題はないだろ。誰より頼れる魅力的な旦那になってみせるから、だから俺と結婚してほしいロジーナ!」
ああ、熱烈で何てベタな求婚。
普通の乙女ならこんなピカピカした王子様に求婚されてドキッとろーんってなるのかもしれない。でも私の心は少しも動かなかった。
むしろ真っ直ぐな所は彼らしいわねって微笑ましくて内心でくすりと笑う私は、自分でも性格悪いわ~って思うわ。
だけどきちんと彼には話さないといけないんだって思い出して早々に気を取り直した。
「ええとねリック、ごめんなさいっ。私あなたの求婚を受け入れられないわ。私たち別に無理して結婚するわけじゃないの。好き合ってるの! 昨日言えなくて申し訳なかったけど!」
「そう、なのか……?」
リックは心底面食らったのか、花束を取り落としそうになった。
奇跡的な反射神経で私がキャッチしたけど、返そうとすると彼は花束をずいと私の方に押しやってきた。
「え、リック?」
「断るための嘘じゃなく、本当にロジーナはユージーンを愛しているのか?」
――――愛ッッ!!!!
わあ~いきなりゴリゴリ来たあ~。
愛してるってユージーンから言われるのはもう慣れっ子だけど、自分の口で「愛してる」って声に出すのはかなりハードル高いのよね。心構えが要る。だって「好き」って言うのと「愛してる」って言うのとじゃ照れ度が違うもの。少なくとも私的には。
まあ心で言う分には全然平気なんだけど。
あ~ッなんか直球過ぎてかえって恥ずかしいじゃないのよリックってば。せめて好きなのかって訊いてほしかった。いやまあ真剣な話なのはわかるけどもね。
ふう、だけどリックには私も直球を投げ返さないといけないわよね。
真剣には真剣で。
「ええ。ユージーンが好きよ。……あ、愛してるの! 彼の方も私と同じ気持ちだから本当に心配はいらないわ。ずっと長年二人で温めてきた気持ちだから、私たちは大丈夫」
言っているうちにユージーンへの気持ちが溢れて、花束を抱き締めたまま私は心から笑っていた。
「そ、そうか……」
リックはもっと赤面して一瞬言葉に詰まったようにして、だけど私の様子から真実の言葉だと腑に落ちたのか潔くも不器用な笑みを浮かべた。ゆっくりと立ち上がると気を紛らわすように前髪を掻き上げてその手で頭をガシガシと掻く。
「どうやら俺は見当違いな真似をしていたみたいだな。弟にも悪い事した。結婚する当人たちが愛し合ってて納得しているなら、それでいいんだ」
「ええ。あ、愛し合ってるわ。これ以上なく納得済みだしね」
「……本当に無理してないんだな?」
「ないわよ」
「ならいい」
探るような気配を消して肩の力を抜くリックに最後に花束を返そうとすれば、やっぱり彼は受け取ろうとしなかった。
「リック?」
「これは貰ってやってくれよ。花束に罪はないから。昨日弟と喧嘩したって聞いたぞ。大方俺のせいなんだろ? だからその詫びの品だ……なーんて駄目か?」
この花束は本来の使用目的とは異なるし、そもそも要らないわと突き返したって構わない物だわ。だけどこの見事な花たちはきっと無下に捨てられるのを喜ばない。可哀想だし勿体ない。私も望まない。
私は両腕を自分の方に引き寄せて花束を抱え直した。
「ううん、これで手を打とうかしらね。とても綺麗なんだもの……」
何となく、私自身がまだちょっと喧嘩で落ち込み気味だからかな、色取り取りの花たちは心の慰めになった。
鼻先を近付け新鮮な花の香りを吸い込むと、私は顔を上げて真っ直ぐ贈り手の姿を見つめ微笑んだ。
「リック、本当にありがとう。あなたの気持ち嬉しかった。で…」
「ああ、わかってる」
でも、と続けてごめんに繋がるはずだった言葉は、彼の指先が私の唇を塞いだから言わせてもらえなかった。
リックにしては気障な仕種にびっくりしてパチパチと瞬く私へと、彼は優しく苦笑を向けてくる。
え、もしかしてこの人こういうさりげなくもドキリとさせて従わせちゃうような女の子の扱いに慣れてたりして……?
遊学先でどんな生活を送っていたのかは知らないけど、何となくそんな気がする。
リックはそっと指を離すと今の柔らかな微笑を、お日様みたいに強烈ないつもの快活な笑みにシフトさせた。
「ロジーナの花嫁姿楽しみにしてる。お互いとびきり幸せになろうな!」
私たちの間の友情は継続だって言われてるんだとわかった。こっちも思わずの笑みが零れる。
「そうね、ふふっ、あなたって味方がいれば百人力よ」
これは偽りない本心。
その時、私が完全には閉めていなかった扉の方で蝶番の軋みなのかキイィと音がして、振り返れば直前まで誰かが居たみたいにほんの微かに揺れていた。
廊下に誰か居るの?
そこはリックもそう思ったみたいで、私たちが二人で訝しく思って近寄った所で、お茶の用意をワゴンに乗せた給仕の人間がその扉を開けて入って来た。
入って早々の場所に立つ私たちの怪訝そうな注目に、お決まりのお仕着せを身に付けた顔なじみの女性使用人はキョトンとした。
何だ、きっとワゴンを押しながらだから開けるのに手間取ったのね。
私はそう結論付けた。
その後リックとは、ユージーンが来るのを待って少しお茶をしたけど、ユージーンは結局応接室には現れなかった。
まあ私が勝手に彼も応接室に来るかもって思っただけで、必ず来るとは限らなかったのよね。まだ喧嘩の後で若干気まずくて顔を出せなかったのかもしれない。私が今日の朝食も昼食も一緒には食べなかったせいもあって。
まあ、リックとは存外あっさり話が着いたし、愛しの婚約者君には後で私から話をすればいいわよね。
信用ないのってショックな部分もあったけど、彼の気持ちもわからないでもなかったし、実を言えば昨日の件は赦していた。
弟に宜しくとリックが離宮を後にして、私は自室に戻ると花たちを花瓶に生けた。
「うん、よし、上出来上出来」
ただそのまま水を張った花瓶に入れるだけで出来不出来もないけど、私は腰に手を当てて一人頷いてみせた。私付きの侍女が微笑ましそうに頬を緩める。
「ロジーナ様、夕食はどうなさいますか?」
その彼女から問われ、ユージーンとの大事な話もあるしで今夜は一緒に摂る方向でと告げれば、彼女はホッとしたように頭を下げて彼の元へと伝えに行った。どうも周りの皆にも心配させてたみたいね。
「もう本番は明後日なんだし、しっかり仲直りしないとね」
これまでの私たちは二人だけで恋愛事の世界は閉じられていたようなものだった。横槍なんて入って来なかったから安心してぬくぬくと心を育めていた。
それがここにきてリックに少し掻き回されたたったのそれだけでユージーンと喧嘩なんてしてしまった。
こんなすれ違いは初めてで僅かな不安はあったけど、彼ならきっとまた今までみたいに笑いかけてくれるわよね。
……そうよね?
うう、まだ怒ってたらどうしよう。
「その時はちょっとだけ勇気を分けて頂戴ね!」
寝室に飾った花束にそんな事を念じ、私はしばらく傍に寄ってそっと指先で花弁をなぞりながら花々を眺める。今頃ユージーンは何を思っているんだろう。
彼も夕食の誘いをどうするかって考えてるかも、なんて想いを巡らせる。
「そう言えば丸一日は会ってないのよね。早くユージーンの顔みたいなあ」
そんな願いが天に通じたのか、侍女がノックと共にその彼の来室を告げてきた。
ふふふ、夕食前に会えちゃうなんて幸先良いじゃないの。早く顔を見て話し合えるのならそれが一番よね。
窓から見える空はほんのり夕焼けで、そろそろ蝋燭に火も必要になる。
足取りも軽く密かに口元に笑みを刻んで、だけどその人の前ではまだ真面目な顔を取り繕うよう努めて、私は廊下で待つその人――ユージーンを部屋に招き入れた。
リックはちょっと頬を赤くして私を見上げて来る。
「外国に居てもずっと忘れられなかった。昨日再会してお前を慕う気持ちを再確認できた」
彼から向けられるものとしては初めて見る真摯な眼差しだった。
その目を見て私はここでやっと自分が思い違いをしていたのを悟った。
ユージーンが言っていたように、リックは私を真面目に恋愛対象として見ているって。
そうだったんだ、リック……。
「今は誰に恋愛感情がなくても、この先ロジーナは誰かに恋をするかもしれない。もし誰かに恋するならその相手は俺がいい。いや俺にしろよ。その時俺と結婚してればそれこそ何も問題はないだろ。誰より頼れる魅力的な旦那になってみせるから、だから俺と結婚してほしいロジーナ!」
ああ、熱烈で何てベタな求婚。
普通の乙女ならこんなピカピカした王子様に求婚されてドキッとろーんってなるのかもしれない。でも私の心は少しも動かなかった。
むしろ真っ直ぐな所は彼らしいわねって微笑ましくて内心でくすりと笑う私は、自分でも性格悪いわ~って思うわ。
だけどきちんと彼には話さないといけないんだって思い出して早々に気を取り直した。
「ええとねリック、ごめんなさいっ。私あなたの求婚を受け入れられないわ。私たち別に無理して結婚するわけじゃないの。好き合ってるの! 昨日言えなくて申し訳なかったけど!」
「そう、なのか……?」
リックは心底面食らったのか、花束を取り落としそうになった。
奇跡的な反射神経で私がキャッチしたけど、返そうとすると彼は花束をずいと私の方に押しやってきた。
「え、リック?」
「断るための嘘じゃなく、本当にロジーナはユージーンを愛しているのか?」
――――愛ッッ!!!!
わあ~いきなりゴリゴリ来たあ~。
愛してるってユージーンから言われるのはもう慣れっ子だけど、自分の口で「愛してる」って声に出すのはかなりハードル高いのよね。心構えが要る。だって「好き」って言うのと「愛してる」って言うのとじゃ照れ度が違うもの。少なくとも私的には。
まあ心で言う分には全然平気なんだけど。
あ~ッなんか直球過ぎてかえって恥ずかしいじゃないのよリックってば。せめて好きなのかって訊いてほしかった。いやまあ真剣な話なのはわかるけどもね。
ふう、だけどリックには私も直球を投げ返さないといけないわよね。
真剣には真剣で。
「ええ。ユージーンが好きよ。……あ、愛してるの! 彼の方も私と同じ気持ちだから本当に心配はいらないわ。ずっと長年二人で温めてきた気持ちだから、私たちは大丈夫」
言っているうちにユージーンへの気持ちが溢れて、花束を抱き締めたまま私は心から笑っていた。
「そ、そうか……」
リックはもっと赤面して一瞬言葉に詰まったようにして、だけど私の様子から真実の言葉だと腑に落ちたのか潔くも不器用な笑みを浮かべた。ゆっくりと立ち上がると気を紛らわすように前髪を掻き上げてその手で頭をガシガシと掻く。
「どうやら俺は見当違いな真似をしていたみたいだな。弟にも悪い事した。結婚する当人たちが愛し合ってて納得しているなら、それでいいんだ」
「ええ。あ、愛し合ってるわ。これ以上なく納得済みだしね」
「……本当に無理してないんだな?」
「ないわよ」
「ならいい」
探るような気配を消して肩の力を抜くリックに最後に花束を返そうとすれば、やっぱり彼は受け取ろうとしなかった。
「リック?」
「これは貰ってやってくれよ。花束に罪はないから。昨日弟と喧嘩したって聞いたぞ。大方俺のせいなんだろ? だからその詫びの品だ……なーんて駄目か?」
この花束は本来の使用目的とは異なるし、そもそも要らないわと突き返したって構わない物だわ。だけどこの見事な花たちはきっと無下に捨てられるのを喜ばない。可哀想だし勿体ない。私も望まない。
私は両腕を自分の方に引き寄せて花束を抱え直した。
「ううん、これで手を打とうかしらね。とても綺麗なんだもの……」
何となく、私自身がまだちょっと喧嘩で落ち込み気味だからかな、色取り取りの花たちは心の慰めになった。
鼻先を近付け新鮮な花の香りを吸い込むと、私は顔を上げて真っ直ぐ贈り手の姿を見つめ微笑んだ。
「リック、本当にありがとう。あなたの気持ち嬉しかった。で…」
「ああ、わかってる」
でも、と続けてごめんに繋がるはずだった言葉は、彼の指先が私の唇を塞いだから言わせてもらえなかった。
リックにしては気障な仕種にびっくりしてパチパチと瞬く私へと、彼は優しく苦笑を向けてくる。
え、もしかしてこの人こういうさりげなくもドキリとさせて従わせちゃうような女の子の扱いに慣れてたりして……?
遊学先でどんな生活を送っていたのかは知らないけど、何となくそんな気がする。
リックはそっと指を離すと今の柔らかな微笑を、お日様みたいに強烈ないつもの快活な笑みにシフトさせた。
「ロジーナの花嫁姿楽しみにしてる。お互いとびきり幸せになろうな!」
私たちの間の友情は継続だって言われてるんだとわかった。こっちも思わずの笑みが零れる。
「そうね、ふふっ、あなたって味方がいれば百人力よ」
これは偽りない本心。
その時、私が完全には閉めていなかった扉の方で蝶番の軋みなのかキイィと音がして、振り返れば直前まで誰かが居たみたいにほんの微かに揺れていた。
廊下に誰か居るの?
そこはリックもそう思ったみたいで、私たちが二人で訝しく思って近寄った所で、お茶の用意をワゴンに乗せた給仕の人間がその扉を開けて入って来た。
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何だ、きっとワゴンを押しながらだから開けるのに手間取ったのね。
私はそう結論付けた。
その後リックとは、ユージーンが来るのを待って少しお茶をしたけど、ユージーンは結局応接室には現れなかった。
まあ私が勝手に彼も応接室に来るかもって思っただけで、必ず来るとは限らなかったのよね。まだ喧嘩の後で若干気まずくて顔を出せなかったのかもしれない。私が今日の朝食も昼食も一緒には食べなかったせいもあって。
まあ、リックとは存外あっさり話が着いたし、愛しの婚約者君には後で私から話をすればいいわよね。
信用ないのってショックな部分もあったけど、彼の気持ちもわからないでもなかったし、実を言えば昨日の件は赦していた。
弟に宜しくとリックが離宮を後にして、私は自室に戻ると花たちを花瓶に生けた。
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「ロジーナ様、夕食はどうなさいますか?」
その彼女から問われ、ユージーンとの大事な話もあるしで今夜は一緒に摂る方向でと告げれば、彼女はホッとしたように頭を下げて彼の元へと伝えに行った。どうも周りの皆にも心配させてたみたいね。
「もう本番は明後日なんだし、しっかり仲直りしないとね」
これまでの私たちは二人だけで恋愛事の世界は閉じられていたようなものだった。横槍なんて入って来なかったから安心してぬくぬくと心を育めていた。
それがここにきてリックに少し掻き回されたたったのそれだけでユージーンと喧嘩なんてしてしまった。
こんなすれ違いは初めてで僅かな不安はあったけど、彼ならきっとまた今までみたいに笑いかけてくれるわよね。
……そうよね?
うう、まだ怒ってたらどうしよう。
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寝室に飾った花束にそんな事を念じ、私はしばらく傍に寄ってそっと指先で花弁をなぞりながら花々を眺める。今頃ユージーンは何を思っているんだろう。
彼も夕食の誘いをどうするかって考えてるかも、なんて想いを巡らせる。
「そう言えば丸一日は会ってないのよね。早くユージーンの顔みたいなあ」
そんな願いが天に通じたのか、侍女がノックと共にその彼の来室を告げてきた。
ふふふ、夕食前に会えちゃうなんて幸先良いじゃないの。早く顔を見て話し合えるのならそれが一番よね。
窓から見える空はほんのり夕焼けで、そろそろ蝋燭に火も必要になる。
足取りも軽く密かに口元に笑みを刻んで、だけどその人の前ではまだ真面目な顔を取り繕うよう努めて、私は廊下で待つその人――ユージーンを部屋に招き入れた。
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