Fatal scent

みるく汰 にい

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☆22話

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『清水何かあった?』
「え?いや、何も…?」
『………そう?なら良いんだけど』

何か言いたげな東雲の声がスマホ越しに聞こえてくる。西村に相談した日からずっと泊まりでも誘わないように、強請らないように気を付けてきた。もちろんセックスだけが全てじゃない、同じ布団で東雲の香りを嗅ぎながら寝るのも幸せだった。しかし体に覚えさせられた快楽が東雲を求めようとする度に背を向けて寝るのは大変で、抱きしめてくれる東雲の手が素肌に触れるだけで負けてしまいそうだった。

清水が言わなければ触れられない唇も、誘わなければ繋がれない体も、釣った魚に餌はあげないタイプか?と考えるほどあっさり無くなってしまった事実に少し悲しくなった。それと同時にやはり自分が求めすぎていたんだなと痛感して、付き合わせてしまった罪悪感に押しつぶされそうになる。触れられる手も絡み合う視線も繋がれる幸せも、東雲の全てが清水を変えたというのに。


「そろそろ寝ようかな、明日早いし」
『ん、そうだね。じゃあ俺も寝ようかな』

__もう少し、声が聞きたいとかは言ってくれないのか、

「おやすみしののめ」
『うん、おやすみ…好きだよ清水』

耳元で聞こえるとびきり甘くて優しい声の好きという言葉に体が熱くなる。「ぼくもだよ、おやすみ」と告げて電話を切れば、単純な清水の体は笑ってしまうほど反応していた。さっきまで求められないと泣きそうだったのに少し愛おしいと囁かれただけでまるで麻薬のように脳内に響いて熱をもつ。

「きっと東雲はぼくのことを考えて自慰行為なんてしないんだろうな」

熱をおさめようと体を熱くする元凶に手を触れる。つい最近までは東雲のおかげでずっとスッキリしていたのに、触れられなくなってからはご無沙汰なそれは熱く膨張し触られたいと主張している。

…東雲は強く握らずに、先走りを先端に塗り込みながら大きな手で包んでくれる。ゆっくり先から根元まで擦って、いつも反応を見るように顔を覗いてくるから恥ずかしくなるんだ。

「ぅっ……っん」

薄い壁から声が漏れないように押し殺して東雲にしてほしいことを考える。

もう一度獣のような目で組み敷かれたい、口の中に入れられた指で舌を捕まえられたまま激しくキスされたい、がりっと鋭い犬歯で歯型をつけられてそのまま弱くなった乳首を噛まれたい、ぼくの全ては東雲のものだと主張するようにマーキングされて、麗しい唇で名前を呼ばれながら東雲が気持ちよくなるためのセックスでめちゃくちゃにしてほしい。

「やぁ……っぁあ!」

変態的なことを考えていると射精欲が強くなる。きゅっと体が硬くなって白濁とした液が清水の手を汚していく。この手は自分のしてほしいことばかりに塗れていて綺麗な東雲とは釣り合わないな、

「会いたいな……だん、ぎゅってしてって言わなくても抱きしめて、暖」


汚れた手を拭いて、いつかの時のように虚無感に苛まれながら眠りについた。
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