2 / 114
第1章・ホットケーキの甘い罠?
プロローグ
しおりを挟むそこにいるのは……ああ、お前達か、久しぶりだな。いや、お前達にとって俺は初対面か。
まあいい、ここで会ったのも何かの縁だ。
お前達に尋ねよう。
死、とは何なのだろうか。
ふむ……。
人生を終えること。生命活動を止めること。天国へ旅立つこと。まあ一般的な答えだな。人によって理解の仕方は違う、それは当然のことだ。
そもそも、経験した上での認識を共有できない「死」に正しい定義などあるまい。
死を恐れる。それは至って一般的なことだろう。人間は、経験したことがない事象を恐れるそうだ。確かに、死を経験してなお現世で生きている人間などいない。理性と感情を手にした人間ならば至って普通の反応だ。
これに関しては単なる愚痴だが、格好つけて「こんな死に方も悪くない」なんて言ってる奴はただのバカだと思う。死んだら元も子もないのだ。本当に大切なもののためだと言うのならば、自分の命も含めて守りきらねば意味など無い。自分が死んだら、それを1番大切にする人間はいなくなるのだから。
少し話が逸れたな。
何故こんな質問をするのかって?
それは、俺が死を運ぶ人間だからだ。
知ってのとおり、俺は殺し屋だ。依頼主の意のままに、あらゆる人間に終焉をもたらす死のサンタクロースだ。全く苦しませず、時には認識すらさせずに殺すこともあれば、死ぬほうがマシなほどの苦痛を与えて殺すこともある。全ては依頼内容のままに。
俺達暗殺者は属さない。
世界に紛れるためだ。
よく分からないって?
まあ、理解する必要は無い。
そして今日もまた、俺は死を運ぶ。紛れ、隠れ、入り込み、潜み、殺す。変わり映えのしない動作を組み合わせ、繰り返し、厳重な守りの僅かな隙につけ込み、入り込み、標的に迫るのだ。
とある昔話をしよう。
「た、頼む!! 金ならいくらでもあるから見逃してくれ!!」
ある仕事を任され、鉛玉を吐き出す汚い口を標的に向けた時、そいつが俺にこう言った。
俺はつい笑ってしまった。
金だって?
そんなもの、何の役に立つっていうんだ。
金が銃弾を止めてくれるのか?
金がナイフを止めてくれるのか?
仕事柄こんな台詞は飽きるほど聞く。その度にバカも休み休みにしろ、と言う。金なんてものは、俺にとっては依頼を受けるためのチケットに過ぎない。あくまでも暗殺者としての秩序を守るために従っているルールに過ぎないのだ。死にたくないんなら他より先に俺を雇えばいいだけのことだ。
なぜ暗殺者になったのかって?
さあな、気付いたらこうなっていただけだ。
ああ、今の世の中ならこんなことしなくても生きていける。
それでも。
俺がこうなったのは誰かがそれを望んでいるからだ。
俺はそう思っている。
そして俺は今日もまた、地獄の鎖に縛られた幽鬼の如く、引き金を引く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,411
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる