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第2章・初めてのおつかい
第13話・理由
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何してるんだお前らこんな所で。
俺か?
ちょいと現実逃避だ。
なんか疲れたんだよ。
さっきの事か?
ああ、もちろん覚えてる。
結局魔獣共は逃げて行っただろ?
なら、よかった。
向こうに戻るつもりはないのかって?
だから言っただろ?疲れたんだよ。久々の人付き合いだったから。
このよく分からない空間に来て、しばらく考えた。なんであの時あんなにイラついたのか。
理由はいくつかあるんだけどな。
まず、俺は元々ああいう奴が大嫌いなんだ。
そうそう、あの長老とかいう奴。
自分のポストを守りたいが為に周りの人を利用するような奴。ああいうのを見てると殺してやりたいほどムカつく。
で、もう1つ。
あいつさ、俺やテリシアがヒューマンだからどうのこうのって言ってきたじゃん?
あれが決定打だった。俺のことは置いておくとしても、テリシアがどれだけ苦労してきたか知らないくせにあんな事を平然と言われたからプッツン来たんだろうな。
何があったか、か?
ああ、聞いた。ここに来る前に、ミルさんに。
いや、全部じゃない。
テリシアがギルドに来てからの事だ。やっぱり、最初の頃はいろんな奴にヒューマンだからってある事ないこと言われたらしい。それを庇ってたのがミルさんとメルだったから、あんなに仲が良いんだろうな。
おっと、話が逸れたな。
そう、だから結論から言うと、俺ってけっこうテリシアの事気に入ってるんだろうな。
え?
ああ、まあ見た目が可愛いのはそうだけど、もっと中の部分の。なんて言えば良いんだろうな……。辛くても頑張れるところとか、真っ直ぐなところとか。
よく言うだろ?
人は自分が持ってないものを持ってる人に惹かれるんだ。
だから、これは恋愛感情ってよりは憧れとか尊敬に近いんじゃないか?
誰だって、尊敬してる人を悪く言われたら程度はどうであれ頭に来るだろ?
例えば親友とか家族とかさ。
そんな感じだ。俺があんなにイラついたのは。
でもまあ、結構新鮮な気持ちなんだ、今。
今まで自分の行動原理なんて考えた事なかったから。
これからどうするか?
まあ、気が向いたら戻るさ。魔獣はもうあの村には近づかないだろうし、そのうちメルやガルシュ達も来てくれるだろ。
ていうかさ、お前ら俺が戻ろうと思えば戻れる体で喋ってるけど、俺ほんとに戻れるのか?
俺の身体って今向こうでどうなってるんだ?
戻るんなら教えるって……。
お前らなんでそんな不機嫌そうなんだ?
ていうか教えるってことはお前らは分かるんだよな?
え?読者権限?メタいからやめて。
せめて俺の身体のことくらい教えてくれよ。
ああ、サンキュー。
テリシアがいる?ベッドの横に?
ああ、俺は病院かどっかで寝てるのか。
手を握ってる?
ああ、それは起きた方がいいかも。
……泣いてる?
テリシアが、か?
何でだ……?
何で、俺のために泣いてるんだ?
……教えてくれるのか?
俺は、テリシアにとってもう只の恩人じゃない?
おい、それってどういう……?
え、戻る!?
いや、確かに教えてもらったけどさ!?
え、ちょ、まっ……。
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