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第1章・ホットケーキの甘い罠?

第2話・仕事!仕事!仕事!

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「……。」

  伝説の殺し屋・ブラック・ディウィーラーこと俺、佐霧さぎり圭二けいじは、見た事の無い異世界チックな道の前で、穏やかな表情で立っていた。
  本当に困った時とかリアクション取りにくい時は、穏やかな顔でただただその場に佇んでいればいいと相場が決まっている。

  あのさ、ここどこ……?
  確か俺、店でホットケーキ食ってた筈なんだけど……。

  ケイジの目の前には西洋風の町並みが広がり、元居た場所と比べれば時代遅れの馬車が走っていたり、どういう仕組みなのかさっぱり分からない絨毯やホウキがスーッと空を飛んでいた。

「な、何じゃありゃ……」

  ケイジの目の前を歩いていく人々は、長い耳の人たちであったり、、緑色のおおよそ人間とは思えない人たちであったり、獣の耳のようなものが頭に付いている人たちであったり。
  所謂「ファンタジー」の中の種族のようだった。むしろこの中では人間の方が少ない、と言うより全く見受けられない。
  そのせいか、先程からケイジは少なからず街ゆく人々の視線を集めていた。

  え~っと、つまりあれか?
  俺は、よく言う異世界転移的な何かをしたのか?

  これは突っ込むべきか否か。
  うん、突っ込む。何でホットケーキ?
  いや何でホットケーキ食って異世界転移するんだよ!?
  普通もっとこう事故にあって死んだと思いきや~とか、突然現れたヒロインに連れられて~とかじゃないの!?

  当然だが、ケイジを連れてきたヒロインもいなければ死んだ訳でもない。ただただホットケーキを1口食べたらここに飛ばされたのである。飛ばされてきたのかどうかも定かではないが。

  もしかしたら本当は俺以外の主人公的な奴がいて、俺はそいつのオマケというかバグ的な奴でここに来ちまったのかも知れない。そうでもなきゃ説明のしようがない。
  それにしてもなんだろうな。別に俺、オタクって訳じゃ無かったんだけどさ?
  普通なら、異世界転移でもすれば多少なりワクワクしたりするだろ?
  なのに何だろう、この虚無感。いや、まだ分かんないけどさ。なんか分かんないけど、俺じゃない感が凄いんだよな……。

  え?

  だったら主人公ポジ取ればいいだろって?
  ソノテガアッタカ!
  ってならんわアホ!

  いやどうするんだよこれ!
  本当に主人公ポジだったらまだ良かったけどさ!?
  モブですら無さそうだよこれ!衣はあるけどこんな知らない土地で食も住も無いとかどんな鬼畜ゲーだよ!

「はあ……」

  ひとしきりの脳内ツッコミを終え、ケイジは現状にため息をついた。
  自分が主人公かどうかは一先ず置いておいて、パッと見で元の世界に戻る事が出来そうにない以上、何とかしてこの世界で生活を出来るようにしなければならないのだった。

  その為に必要な事は、大きく分けて2つ。

  ひとぉーつ!
  この世界についての様々な情報だ。種族、地形、通貨、その他もろもろ。生きて行くためには必ず必要な知識になる。

  ひとぉーつ!
  仕事!
  work!
  仕事がなきゃ稼げない!
  稼げなきゃ死ぬしかない!
  みんな死ぬしかな(以下略 

  流石にいきなり殺し屋という本当の姿は見せられないよな。俺もプロだし、ある程度の事なら人並みには出来る、ハズ。
  まあ、何はともあれ情報収集だ!

  そう思い、とりあえず街の中心らしき方向に向かって歩いていくケイジなのであった。
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