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二章 夢のはじまり

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 校舎に着くと一組のホシナとは途中で別れ、ユメナは三組の教室へと向かう。
「おはよーユメナ」
「おはよー」
 教室に入ると目の前の景色が一瞬ぐらりとゆがんだ。
「ん?」
 不思議に思いながら自分の席に向かうが、足元がやけにふわふわする。まるで空中を歩いているような感覚。次第に頭の中までぼんやりし始め、目がかすむ。立っていられないほどの急激な眠気が突然ユメナを支配した。
「なに、これ……」
「あっ、ユメナ~! おはよ!」
「あ……おは、よ」
 視界がぼやけ、クラスメイトの顔すらも判別できない。
「どうしたの? 顔色悪いよ?」
「ちょっと、朝礼始まるまで……寝るわ」
 ユメナはおぼつかない足取りでなんとか自分の机まで向かうと、カバンを枕にして勢いよく机に突っ伏した。登校早々寝るという突飛な行動にクラスメイトの心配する声が頭上で飛び交う。
(やばい……眠すぎて意識飛ぶ……)
 あらがえない眠気を、ユメナはただ受け入れることしかできなかった。





「ん……」
 目が覚めると、そこは保健室のベットだった。
 ユメナはむくりと起き上がると、ぼーっと周りを見渡す。教室でうたた寝をしていた自分が、今どうして保健室にいるのか理解できなかった。
「宮成さん、起きた?」
 カーテンがわずかに開き、隙間から養護教諭の林先生がひょこりと顔を出す。
「大丈夫? どっか痛いとこない?」
「大丈夫です。それより私なんで保健室に……?」
「倒れたんですって。最初は寝ぼけた拍子にイスから落ちたかと思ったら顔が真っ青だったらしくて、クラスの何人かがあわてて職員室に来たわよ」
 倒れた記憶もなければ運ばれた記憶もない。しかし周囲に迷惑を掛けたことはどうやら事実のようだ。
「すみません」
「眠ってたみたいだったから救急車は呼ばなかったけど……宮成さん寝不足?」
「あ……はい。まあ、そんなとこです」
「まだ少し顔色悪いし今日は早退したら?」
「そうします」
「じゃあ先生に言って荷物持ってくるわね」
「すみません、お願いします」
 林先生は返事の代わりに微笑むと、背中を向けて保健室から出て行った。
 
 眠ってはいたものの悪夢は見ていない。
 意識が突然消えていく感じはほぼ気絶に近かった。
 ユメナはため息をつき、まだぼんやりとする頭を抱える。頭の中はイヤな予感でいっぱいだった。
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