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一章 夢を喰う少年
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「……っ」
ガキンと鈍い音が響いたが体に痛みは無い。
おそるおそる目を開くと、そこにはヨミの背中があった。ヘビの尻尾を見るとウロコがはがれ落ちている。
まさか本当にあのめんぼうで応戦したというのだろうか。ヨミは先端にウロコが付いためんぼうを器用にくるくると回しながら「今日で十三日目だったね」とつぶやいた。
「あのヘビに丸呑みされた時点で君の本当の悪夢がはじまる。現実には決して戻れない、悪夢のループが」
ユメナは夢月町の言い伝えを思い出す。
「やっぱりあの言い伝え、本当だったんだ」
恐怖で指先がカタカタと小さく震える。思わず後退りをすると、ヘビの視線がすぐにユメナを捕らえた。
一体のヘビの舌が勢いよくゴムのように伸びる。
「ユメナ気をつけて!」
ヨミが叫んだ時にはもう遅く、気づいた時にはざらざらとした長い舌がユメナの足首に二重に巻きついていた。
「ひっ!!」
「ユメナ!!」
そのままユメナの体は地面に叩きつけられ、ずるずると引きずられる。ユメナは必死に地面に爪を立てて抵抗するが、抵抗も虚しく体はものすごいスピードでヘビの方に引き寄せられていく。ユメナは懸命にヨミに手を伸ばした。
「助けて!!!……ヨミ!!!」
ヨミは強い眼差しでヘビをにらんだ。
「ユメナに……触るなっ!!!」
めんぼうを地面に叩きつけると、地面にピシピシと割れ目が入っていく。ヘビは大きく目を見開くと、地割れする地面の中に吸い込まれていった。
「……っあ!」
しかしもう一体はユメナも道連れに、とでもいうかのように長い舌をさらに強く足首に巻きつける。ユメナの体がぐんと大きくかたむいた。見下ろした先は、真っ暗闇。
「きゃああああああ!!」
「捕まれ!!」
言われるがままユメナは差し出されたヨミの手を必死に掴む。
「くそ!!」
ヨミはもう片方の手でめんぼうをヘビに向かって投げた。眼球に直撃したヘビはユメナの足首から舌をするりと離すと、そのまま暗い穴の中に真っ逆さまに落ちていった。
ヨミの伸ばした手によって間一髪のところで助かったユメナは大きく息を吐く。もう少し遅ければ、自分もヘビと共に奈落の底に落ちていたかもしれない。
「ユメナ!! 大丈夫!?」
少し骨張った力強い手に異性の一面を感じるが、ときめく余裕など無く、ユメナはぽっかり空いた足元に恐怖を感じるだけだった。
「やー!! 無理ー!! しぬー!!」
這い上がろうとけん命に両足をバタバタ動かすが、側には足を掛けるところもなくユメナはただ泣き叫ぶことしかできない。するとヨミはまた強い力でユメナの手首を握り直し、暴れるユメナに叫んだ。
「落ち着いて!! 引っ張り上げるから!!」
ヨミの声にユメナはぴたりと動きを止める。
「大丈夫。ぼくの目を見て、ね」
アメジストのような瞳が優しく揺れる。
力を加え続けているヨミの手は震え、首には汗が一筋伝っていた。
「う、うん……」
「よし、いい子。じゃあ引っ張るよ」
ヨミの手に力が入る。息を荒く吐き出しながら、ヨミはユメナの体を一気に持ち上げた。そしてそのままの勢いで二人は後ろに倒れ込む。ユメナは期せずしてヨミの胸に飛び込む形になった。
ガキンと鈍い音が響いたが体に痛みは無い。
おそるおそる目を開くと、そこにはヨミの背中があった。ヘビの尻尾を見るとウロコがはがれ落ちている。
まさか本当にあのめんぼうで応戦したというのだろうか。ヨミは先端にウロコが付いためんぼうを器用にくるくると回しながら「今日で十三日目だったね」とつぶやいた。
「あのヘビに丸呑みされた時点で君の本当の悪夢がはじまる。現実には決して戻れない、悪夢のループが」
ユメナは夢月町の言い伝えを思い出す。
「やっぱりあの言い伝え、本当だったんだ」
恐怖で指先がカタカタと小さく震える。思わず後退りをすると、ヘビの視線がすぐにユメナを捕らえた。
一体のヘビの舌が勢いよくゴムのように伸びる。
「ユメナ気をつけて!」
ヨミが叫んだ時にはもう遅く、気づいた時にはざらざらとした長い舌がユメナの足首に二重に巻きついていた。
「ひっ!!」
「ユメナ!!」
そのままユメナの体は地面に叩きつけられ、ずるずると引きずられる。ユメナは必死に地面に爪を立てて抵抗するが、抵抗も虚しく体はものすごいスピードでヘビの方に引き寄せられていく。ユメナは懸命にヨミに手を伸ばした。
「助けて!!!……ヨミ!!!」
ヨミは強い眼差しでヘビをにらんだ。
「ユメナに……触るなっ!!!」
めんぼうを地面に叩きつけると、地面にピシピシと割れ目が入っていく。ヘビは大きく目を見開くと、地割れする地面の中に吸い込まれていった。
「……っあ!」
しかしもう一体はユメナも道連れに、とでもいうかのように長い舌をさらに強く足首に巻きつける。ユメナの体がぐんと大きくかたむいた。見下ろした先は、真っ暗闇。
「きゃああああああ!!」
「捕まれ!!」
言われるがままユメナは差し出されたヨミの手を必死に掴む。
「くそ!!」
ヨミはもう片方の手でめんぼうをヘビに向かって投げた。眼球に直撃したヘビはユメナの足首から舌をするりと離すと、そのまま暗い穴の中に真っ逆さまに落ちていった。
ヨミの伸ばした手によって間一髪のところで助かったユメナは大きく息を吐く。もう少し遅ければ、自分もヘビと共に奈落の底に落ちていたかもしれない。
「ユメナ!! 大丈夫!?」
少し骨張った力強い手に異性の一面を感じるが、ときめく余裕など無く、ユメナはぽっかり空いた足元に恐怖を感じるだけだった。
「やー!! 無理ー!! しぬー!!」
這い上がろうとけん命に両足をバタバタ動かすが、側には足を掛けるところもなくユメナはただ泣き叫ぶことしかできない。するとヨミはまた強い力でユメナの手首を握り直し、暴れるユメナに叫んだ。
「落ち着いて!! 引っ張り上げるから!!」
ヨミの声にユメナはぴたりと動きを止める。
「大丈夫。ぼくの目を見て、ね」
アメジストのような瞳が優しく揺れる。
力を加え続けているヨミの手は震え、首には汗が一筋伝っていた。
「う、うん……」
「よし、いい子。じゃあ引っ張るよ」
ヨミの手に力が入る。息を荒く吐き出しながら、ヨミはユメナの体を一気に持ち上げた。そしてそのままの勢いで二人は後ろに倒れ込む。ユメナは期せずしてヨミの胸に飛び込む形になった。
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