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第7話
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「私の剣で貴方を追い詰めてあげますよ」
とアネモネは言うと、持っていた本を後ろの台座に置き、剣を抜いた。
「イカルダ、彼に剣を貸してあげてください」
イカルダと呼ばれた先ほどの少年は、右奥に立てかけられた沢山の鞘に入った剣の中から、1本の剣を取った。
そして、俺はイカルダから剣を受け取る為に近づいた。
すると、イカルダは俺に言った。
「アネモネはすんげー強いから」
ただそれだけを言うと、イカルダはそのまま俺から離れ、離れた椅子に座った。
「剣を抜いてください、始めましょう」
そう言われてから、俺は剣を見ながら抜いた。
視界をアネモネに戻すと、アネモネは猛スピードで俺との距離を縮めていた。
距離は10メートル以上はあったはずだ、それなのにもう目の前にいる。
「気を緩めないでください」
アネモネはそう言いながら、右斜め上から剣を振り下ろしてきた。
俺はその一振りを自分の剣で受け止めた。
今の一振りには、少し殺気を感じた。
「おい!俺を殺すつもりかよ」
「だから言ったでしょう?追い詰めると」
「こ、ここまでやってほしいと言った覚えはない!」
俺は必死に抗議した。
するとアネモネは距離を取り、剣を納めた。
「そうですか、ではお引き取りください」
「貴方の記憶を取り戻したいという思いはその程度だったのですね....」
アネモネは少し残念そうに言った。
いや、違う。何言ってるんだ俺は....
アネモネの言う通りだ。
あいつらの為に早く記憶を取り戻すって決めたのに....何甘えているんだ俺は。
「ごめん、アネモネの言う通りだ」
「どうかこのまま続けてほしい」
俺はそう言ってお願いをした。
「わかりました。続けて手助けをします」
そう言って、再びアネモネは切りかかってきた。
俺は必死にアネモネの剣を見極め、速さに力を入れた攻撃に対しては剣で、少し溜めた攻撃に対しては避けるというパターンを作り、対処しようとした。
けど、やはり上手くいかない部分もあり、所々に切り傷を負った。
アネモネの攻撃を受けるだけで精一杯だった。
けど....いつまでも防戦一方だけじゃだめだと俺は思った。
そう思い、多少の切り傷を覚悟でアネモネに向かって1本踏み出し、斜め上からの上段切りをした。
アネモネは俺の攻撃を後方にかわし、避けた。
俺は今アネモネが一瞬、びっくりした様な顔をした気がした。
「攻撃したことについては評価しましょう。」
「しかし、貴方には欠けているものが一つだけあります。」
「それは殺意です。殺意が込められた剣と込められていない剣は、モノが違います。」
「これだけは絶対に忘れないでください、特に貴方にはそれが欠けているのですから」
剣に殺意か....
確かに俺は剣を振った時に、殺意を込めていなかった。
きっとそれがだめなんだろうなって俺は思った。
「今日はここまでにしましょう」
アネモネが言った。
「え?」
「殺意はそう簡単に込められるモノではありません、相当な覚悟があって込められるモノなんです。」
「なので、今日一晩でその覚悟を作って来てください」
アネモネはそう言うと左側の階段を使って上に行った。
「おめー、なかなかやるじゃんかよ」
イカルダは俺に近づきながら言った。
「え、あー、ありがとう」
「けど、俺なんてまだ大したことないよ」
と、俺は少し苦笑して正直に言った。
「それはちげーよ!辛口で有名なアネモネにあそこまで言わせたんだから、十分すげーよ!」
イカルダの目がどこか輝いている気がした。
そして目を曇らせ、どこか悲しそうな顔をして続けて言った。
「おいらはさ、全然強くないから、まだ一回もアネモネに褒められたことがないんだ....」
「でも、イカルダはまだ全然若いからこれからだと思うよ」
俺が正直にそう言うと、イカルダは嬉しそうにして言った。
「だよな!おいらはこれからだよな!」
「んじゃ、飯にしようぜ!」
「飯?」
「そうそう、おいら達は指南所の裏にあるボロっちー建物で食べたり寝たりするんだ」
「ここで教わっている人はイカルダだけ?」
「うん、元々指南所で教わる人は少ないからな」
「おいらみたいな教わる親がいない人か特別な事情がある人だけ」
「そっか....イカルダは一人で寂しくないの?」
「正直寂しいけど、アネモネは強くなりたいなら孤独をも抑えなさいって」
イカルダは笑いながら言った。
その後俺達は宿舎に行き、ご飯を食べお風呂に入り、寝た。
その際、イカルダからアネモネの話を聞いた。
アネモネが、剣士職の最高職にあたる剣豪と呼ばれる人達の中の一人で、その中でも戦姫と敬意を持って呼ばれていること。
また本で、ゴブリンやデビル、オーガーの絵を見して貰って、お互いに思ったことを言いあったりしてからイカルダは寝た。
イカルダが寝た後、俺は殺意について考えた。
とアネモネは言うと、持っていた本を後ろの台座に置き、剣を抜いた。
「イカルダ、彼に剣を貸してあげてください」
イカルダと呼ばれた先ほどの少年は、右奥に立てかけられた沢山の鞘に入った剣の中から、1本の剣を取った。
そして、俺はイカルダから剣を受け取る為に近づいた。
すると、イカルダは俺に言った。
「アネモネはすんげー強いから」
ただそれだけを言うと、イカルダはそのまま俺から離れ、離れた椅子に座った。
「剣を抜いてください、始めましょう」
そう言われてから、俺は剣を見ながら抜いた。
視界をアネモネに戻すと、アネモネは猛スピードで俺との距離を縮めていた。
距離は10メートル以上はあったはずだ、それなのにもう目の前にいる。
「気を緩めないでください」
アネモネはそう言いながら、右斜め上から剣を振り下ろしてきた。
俺はその一振りを自分の剣で受け止めた。
今の一振りには、少し殺気を感じた。
「おい!俺を殺すつもりかよ」
「だから言ったでしょう?追い詰めると」
「こ、ここまでやってほしいと言った覚えはない!」
俺は必死に抗議した。
するとアネモネは距離を取り、剣を納めた。
「そうですか、ではお引き取りください」
「貴方の記憶を取り戻したいという思いはその程度だったのですね....」
アネモネは少し残念そうに言った。
いや、違う。何言ってるんだ俺は....
アネモネの言う通りだ。
あいつらの為に早く記憶を取り戻すって決めたのに....何甘えているんだ俺は。
「ごめん、アネモネの言う通りだ」
「どうかこのまま続けてほしい」
俺はそう言ってお願いをした。
「わかりました。続けて手助けをします」
そう言って、再びアネモネは切りかかってきた。
俺は必死にアネモネの剣を見極め、速さに力を入れた攻撃に対しては剣で、少し溜めた攻撃に対しては避けるというパターンを作り、対処しようとした。
けど、やはり上手くいかない部分もあり、所々に切り傷を負った。
アネモネの攻撃を受けるだけで精一杯だった。
けど....いつまでも防戦一方だけじゃだめだと俺は思った。
そう思い、多少の切り傷を覚悟でアネモネに向かって1本踏み出し、斜め上からの上段切りをした。
アネモネは俺の攻撃を後方にかわし、避けた。
俺は今アネモネが一瞬、びっくりした様な顔をした気がした。
「攻撃したことについては評価しましょう。」
「しかし、貴方には欠けているものが一つだけあります。」
「それは殺意です。殺意が込められた剣と込められていない剣は、モノが違います。」
「これだけは絶対に忘れないでください、特に貴方にはそれが欠けているのですから」
剣に殺意か....
確かに俺は剣を振った時に、殺意を込めていなかった。
きっとそれがだめなんだろうなって俺は思った。
「今日はここまでにしましょう」
アネモネが言った。
「え?」
「殺意はそう簡単に込められるモノではありません、相当な覚悟があって込められるモノなんです。」
「なので、今日一晩でその覚悟を作って来てください」
アネモネはそう言うと左側の階段を使って上に行った。
「おめー、なかなかやるじゃんかよ」
イカルダは俺に近づきながら言った。
「え、あー、ありがとう」
「けど、俺なんてまだ大したことないよ」
と、俺は少し苦笑して正直に言った。
「それはちげーよ!辛口で有名なアネモネにあそこまで言わせたんだから、十分すげーよ!」
イカルダの目がどこか輝いている気がした。
そして目を曇らせ、どこか悲しそうな顔をして続けて言った。
「おいらはさ、全然強くないから、まだ一回もアネモネに褒められたことがないんだ....」
「でも、イカルダはまだ全然若いからこれからだと思うよ」
俺が正直にそう言うと、イカルダは嬉しそうにして言った。
「だよな!おいらはこれからだよな!」
「んじゃ、飯にしようぜ!」
「飯?」
「そうそう、おいら達は指南所の裏にあるボロっちー建物で食べたり寝たりするんだ」
「ここで教わっている人はイカルダだけ?」
「うん、元々指南所で教わる人は少ないからな」
「おいらみたいな教わる親がいない人か特別な事情がある人だけ」
「そっか....イカルダは一人で寂しくないの?」
「正直寂しいけど、アネモネは強くなりたいなら孤独をも抑えなさいって」
イカルダは笑いながら言った。
その後俺達は宿舎に行き、ご飯を食べお風呂に入り、寝た。
その際、イカルダからアネモネの話を聞いた。
アネモネが、剣士職の最高職にあたる剣豪と呼ばれる人達の中の一人で、その中でも戦姫と敬意を持って呼ばれていること。
また本で、ゴブリンやデビル、オーガーの絵を見して貰って、お互いに思ったことを言いあったりしてからイカルダは寝た。
イカルダが寝た後、俺は殺意について考えた。
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